第8話 奴隷マクダフとの出会い
「お……おっさん、僕を売るつもりなの……? こ、この奴隷商館で……」
僕は怖かった。
今までおっさんが親切にしてくれた理由が、すべてこのためだったのではないかと疑ってしまった。
よく考えれば、見ず知らずの初心者冒険者にここまで良くしてくれるのは不自然だったのだ。
「いやジョン……お前を売りに来たわけじゃない。売るんじゃなくて――買うんだよ、奴隷をな」
おっさんは笑っていた。
僕は売られないと分かってほっとしたが、なぜ奴隷を買うのかは分からなかった。
料理金策パートツーとは、一体何なのか。
「いらっしゃいませ、トリポリオ様とお連れのお子様。私はこの奴隷商館アーデン支部を預かっております、シャイロックと申します」
現れたのは、気品のある老人だった。
そしてトリポリオという名前が、おっさんのことだとここで初めて知った。
「やあシャイロック。頼んでいた奴隷が見つかったそうだな。見せてくれ」
「はい。こちらの二名になります」
連れてこられたのは二人。
一人は僕より年上でお姉さんのような感じの人だ。もう一人は、おっさんよりも大きな大男だった。
大男は威圧感があり、まともに顔を見ることもできない。
「流石だ。じゃあ男の方を――」
「ま、待って! なんでそっちなの? もう少し考えたほうが……」
思わず口を挟んでしまった。
どう見ても女性の方がいいと思ったからだ。
おっさんとシャイロックさんとの会話に入る形で僕は話に割って入った。
見た目的に言えばこのお姉さんのほうが僕は絶対に好きだ。
おっさんと僕は常に一緒に行動をしているがそこにこの大男が加わるとさらに暑苦
しくなると僕は思ったからだ。
それならこのお姉さんが奴隷としてだが入ってくれたほうが僕はうれしい。
「いやジョン、この二人なら男一択だ。お前、そうか鑑定スキルが低かったな。鑑定すればステータスも分かる」
僕は初めて知った。
鑑定スキルで人の能力まで見えることを。
シャイロックさんが僕にも分かるように説明をしてくれた。
「この女の奴隷はとある元貴族の使用人で、主人を毒殺しようとして奴隷落ち。男は王国軍の補給係でしたが、賭け事で身を崩し奴隷落ちしました。」
でもこの説明を聞いても僕はお姉さんのほうが良いのではないかと思えた。
毒殺しようとしただけで殺したわけではないわけだ。
この大男のほうは賭け事で奴隷落ちしてしまった男だ。
この大男が奴隷になったとしても僕はこの大男には力ではかなわないだろう。
そのため僕の金を取られるのではないかと心配になったからだ。
それでも僕は迷った。
だが、おっさんは迷わなかった。
「では男を」
「ありがとうございます。前回、前々回にお教えいただきました情報が正しかったと先ほどご確認できましたので、約束通り情報料分を差し引き、銀貨40枚でお売りします。」
銀貨1枚で1,000gだ。
この世界のお金は、次のような換算になっている。
1g = 半鉄貨1枚
10g = 鉄貨1枚
100g = 銅貨1枚
1,000g(1k)= 銀貨1枚
10,000g(10k)= 銀貨10枚
100,000g(100k)= 金貨1枚
1,000,000g(1M)= 白金貨1枚
つまり、銅貨→銀貨→金貨→白金貨と上がるほど価値が大きくなる。
鉄貨や銅貨なら僕でも持っているが、おっさんと知り合ってからは銀貨を見る機会
が増えた。
けれど金貨や白金貨なんてものは、まだ一度も見たことがない。もし目の前に出さ
れても、それが本物かどうかすら僕には分からないだろう。
銀貨40枚――40,000g。
とんでもない金額だった。
「ジョン、お前いくら持ってる?」
「17,165g…… 蛇肉ならまだたくさんあるよ……」
そう答えた瞬間、僕の所持金はほとんど持っていかれた。
おっさんの分と合わせて、40枚の銀貨が支払われた。
「この奴隷の契約はお前がやるんだジョン。喜べ初めての奴隷が俺たちの仲間になったぞ……」
この大男との奴隷契約は僕がやるようだ。
おっさんが主人となる奴隷契約をするのかと思っていたが違った。
初心者冒険者なのに僕は奴隷を買ってしまった。
冒険者はパーティを組む時同じ冒険者同士で組むことが多いが自分が所有している
奴隷とパーティを組んで戦闘を行うこともあると聞いたことがある。
でも僕は奴隷なんて買ったこともないし一緒にパーティを組んだこともなかった。
どうなってしまうのかとても僕は不安だ。
僕が主人になる――そういうことだった。
戸惑う間もなく、契約は進められた。
大男の名前はマクダフ。
こうして僕は、奴隷を持つことになった。
契約内容の説明が続く。
奴隷は絶対服従ではないこと。
生活の保障が必要なこと。
そして――負債があれば主人が肩代わりすること。
最後の一言で、僕の背筋が冷えた。
---
奴隷商館を出た。
僕とおっさんとマクダフ。
三人で並ぶと、どう見ても僕だけ場違いだった。
所持金は115g。
しかも奴隷の生活費に、借金まで背負う可能性がある。
――このままじゃ、僕が奴隷になる。
「マクダフだ。旦那ぁ、よろしく頼むぜ。とりあえず飯でも食いましょうや」
満面の笑みで話しかけてくる。
だが、僕にはお金がない。
「マクダフさん、今日は僕が料理を作ります……それでいいですか?」
サンドイッチしかない。
またあれを食べるしかないと思った。
「俺のことはマクダフでいいですよ。御主人様なんですからさん付けなんてむずがゆい。」
マクダフさんは僕のことを旦那ぁと呼ぶ。
この呼ばれ方のほうがむずがゆい気がするが。
とりあえず僕はマクダフと呼ぶことにした。
自分より大きな大男を呼び捨てにして命令をしているすがたは周りから見てもおか
しなものだと思う。
呼び方の距離感にも戸惑う。
何をさせればいいのかも分からない。
奴隷という存在が、まだ理解できていなかった。
「よし、飯に行くぞ。今日は俺が奢る。お前の分もな」
おっさんの一言で、すべてが救われた。
――今日はヘスサを食べなくていい。
それが一番嬉しかった。
いくらおいしくても毎日同じ料理だときびしくなってくるものだ。
冒険者は贅沢なのだ。
こうして僕たちは、おっさんの行きつけの料理屋へ向かった。
僕たちはおっさんの行きつけの料理屋で明日からのことについて話した。
行きつけといっても、初めて僕がおっさんに会った時に僕がおっさんに夕飯を奢った料理屋だった。
【あとがき:現在のステータス】
【スキル】
■武器系
刀剣スキル 4
盾スキル 3
戦闘技術スキル 2
■生産系
料理スキル 13
■その他
鑑定スキル 0.3
【所持金】
115g
【所持アイテム】
・蛇肉(大量)
・???のスクロール 6枚
・食料品ドロップスクロール 5枚
・奴隷のマクダフさん




