第74話 代替処理
パキッ。
乾いた音だった。
だが。
その音を聞いた瞬間。
巨大ゴブリンの顔色が変わった。
怒りではない。
恐怖だった。
ジョンは思わず目を疑う。
巨大ゴブリンは強い。
圧倒的だ。
王国騎士団ですら正面から戦うのをためらう存在。
そんな怪物が。
怯えている。
空中に浮かぶ指輪を見て。
「なんだ……?」
ジョンが呟く。
指輪の亀裂は少しずつ広がっていた。
一本。
二本。
三本。
黒い表面に、赤い光の線が走る。
まるで内側から何かが押し出されているようだった。
『継承失敗』
頭の中の声が響く。
『代替処理を実行』
機械のような声。
感情はない。
だが。
内容は不気味だった。
「代替処理ってなんだよ……」
誰も答えない。
おっさんも分からないらしい。
騎士団も。
巨大ゴブリンも。
全員が空中の指輪を見上げている。
その時だった。
『王位継承を中止します』
ジョンは固まった。
王位?
王?
頭の中が混乱する。
だが。
声は続く。
『新規候補者選定を開始』
嫌な予感がした。
ものすごく。
嫌な予感が。
巨大ゴブリンが動く。
「やめろ!!」
叫んだ。
今度ははっきりと言葉だった。
路地にいた全員が固まる。
魔物が喋った。
しかも。
必死だった。
「やめろ!!」
巨大ゴブリンがもう一度叫ぶ。
その声には焦りがあった。
恐怖もあった。
そして。
絶望も。
「王よ!!」
叫び声が響く。
ジョンの背筋が凍る。
王。
やはりいる。
この指輪の持ち主が。
本当に。
「待て!!」
隊長が叫ぶ。
騎士団も異変を察知した。
だが。
遅かった。
指輪の亀裂が完全に広がる。
バキバキバキッ!!
赤い光が溢れ出す。
まるで太陽だった。
誰も目を開けていられない。
ジョンも思わず腕で顔を覆う。
熱い。
風が吹く。
いや。
風ではない。
魔力だった。
膨大な量の魔力が路地を埋め尽くしていた。
そして。
光の中から。
何かが落ちてきた。
コトン。
小さな音。
ジョンはゆっくり目を開く。
光は消えていた。
空中に浮いていた指輪もない。
代わりに。
地面に何かが転がっていた。
「……え?」
ジョンが近づく。
誰も止めなかった。
騎士団も。
巨大ゴブリンも。
赤黒いゴブリンたちも。
全員が見ていた。
地面の上。
そこにあったのは。
黒い卵だった。
人の頭ほどの大きさ。
表面には赤い筋が走っている。
心臓のように脈打っていた。
ドクン。
ドクン。
ドクン。
嫌な音だった。
巨大ゴブリンが膝をつく。
ズシン。
赤黒いゴブリンたちも跪く。
まるで。
王の前にいるように。
『代替処理完了』
頭の中の声が最後に響く。
『新規候補者の孵化を開始します』
ジョンの顔から血の気が引いた。
卵が。
ピシッ。
小さく割れた。
【あとがき:現在のステータス】
【スキル】
■武器系
刀剣スキル 20
盾スキル 3
戦闘技術スキル 13
■生産系
料理スキル 13
■その他
鑑定スキル 0.3
【所持金】
2,171g(銀行預け金:11,250g(銀貨11枚、銅貨2枚、半銅貨5枚))
【所持アイテム】
・???のスクロール 6枚
・奴隷のマクダフの野郎
・武器破損した剣
・???の指輪(バンステ金策で入手)
・ゴブリン(テイム)
【投資・契約】
・中立共栄大金庫投資案件(ポーシャ支店)
元本:金貨10枚
状態:運用中
想定利回り:2倍〜5倍(説明ベース)
詳細:非公開/高リスク
【装備品】
・骨護札の首かざり
・水トカゲの手袋(呪)




