第70話 包囲
裏路地を走る。
石畳。
汚水。
ゴミ。
足場は最悪だった。
「はぁっ……!」
ジョンは息を切らす。
胸が痛い。
足も重い。
だが。
止まれない。
後ろからは、まだ戦闘音が響いていた。
騎士団。
赤黒いゴブリン。
そして。
巨大ゴブリン。
広場は完全に戦場になっている。
「こっちだ!」
おっさんが細い道へ曲がる。
ジョンも慌てて続いた。
懐のアイテム袋が熱い。
その中の指輪。
まるで心臓みたいに脈打っている。
『返セ』
『返セ』
頭の中に声が響く。
うるさい。
気持ち悪い。
「くそっ……!」
ジョンは頭を押さえた。
「うるさい……!」
「聞こえてんのか」
おっさんが振り返る。
顔が険しい。
「ずっとです!」
「内容は!」
「返せって!」
おっさんの顔がさらに嫌そうになる。
「完全に所有権主張じゃねぇか……」
そんな言葉、聞きたくなかった。
路地を抜ける。
少し広い通りに出た。
だが。
ジョンたちは止まる。
前にも兵士がいた。
黒い鎧。
王国騎士団。
「いたぞ!!」
見つかった。
最悪だ。
「挟まれたな」
おっさんが小さく呟く。
後ろ。
前。
両方に騎士団。
「投降しろ」
前方の騎士が槍を向ける。
「呪物を提出してもらう」
「その子供を保護する必要がある」
保護。
絶対嘘だ。
「おっさん……」
ジョンの声が震える。
逃げ場がない。
その時だった。
ドン。
何か重い音。
地面が揺れる。
騎士団の空気が変わった。
後ろを見る。
路地の奥。
暗闇。
そこに。
赤い目が並んでいた。
1つじゃない。
10。
20。
もっと。
「……おいおい」
騎士の誰かが呟く。
赤黒いゴブリンたちだ。
大量。
しかも。
全部がジョンを見ている。
「包囲されてる……」
ジョンの顔が青くなる。
すると。
赤黒いゴブリンたちが、ゆっくり騎士団へ近づいた。
武器を構える。
威嚇。
「防御陣形!」
騎士団が即座に動く。
槍が並ぶ。
魔法陣が浮かぶ。
その瞬間。
ジョンは気づいた。
赤黒いゴブリンたち。
騎士団は見ている。
だが。
誰一人。
ジョンへ飛びかからない。
むしろ。
逃げ道を作っている。
「……え?」
ジョンが呟く。
ゴブリンたちの間。
細い道が開く。
まるで。
「行け」と言っているみたいに。
「おい」
おっさんの声が低くなる。
「これ、完全に誘導されてるぞ」
ジョンも分かった。
分かってしまった。
群れは。
ジョンを殺したいんじゃない。
連れて行きたいんだ。
『返セ』
『王ノ証』
声がまた響く。
その時。
後方から。
巨大ゴブリンの咆哮。
ゴァアアアアアアアアア!!
赤黒いゴブリンたちが、一斉に跪いた。
騎士団でさえ、一瞬動きが止まる。
そして。
群れの奥。
暗闇の向こう。
巨大な影が近づいてくる。
ズシン。
ズシン。
近い。
来る。
騎士団の隊長格が歯を食いしばる。
「……クソが」
かなり本気の声だった。
「この町だけの案件じゃねぇぞ」
【あとがき:現在のステータス】
【スキル】
■武器系
刀剣スキル 20
盾スキル 3
戦闘技術スキル 13
■生産系
料理スキル 13
■その他
鑑定スキル 0.3
【所持金】
2,171g(銀行預け金:11,250g(銀貨11枚、銅貨2枚、半銅貨5枚))
【所持アイテム】
・???のスクロール 6枚
・奴隷のマクダフの野郎
・武器破損した剣
・???の指輪(バンステ金策で入手)
・ゴブリン(テイム)
【投資・契約】
・中立共栄大金庫投資案件(ポーシャ支店)
元本:金貨10枚
状態:運用中
想定利回り:2倍〜5倍(説明ベース)
詳細:非公開/高リスク
【装備品】
・骨護札の首かざり
・水トカゲの手袋(呪)




