第69話 確保対象
王国騎士団の怒声が広場に響く。
黒い鎧。
長槍。
町の兵士とは空気が違う。
動きに迷いがない。
避難民たちが慌てて道を空ける。
「騎士団だ……!」
「王都の連中か!?」
ざわめきが広がる。
ジョンは顔を青くした。
「お、おっさん……!」
「最悪のタイミングだな」
おっさんが舌打ちする。
かなり本気だった。
騎士団は、巨大ゴブリンではなく。
真っ先にジョンを見ていた。
「対象確認!」
「確保を優先!」
「呪物所持の可能性あり!」
嫌な単語しか聞こえない。
「ち、違います!」
ジョンは慌てて叫ぶ。
「僕は――」
「黙れ!」
騎士の一人が怒鳴った。
「抵抗するな!」
完全に犯罪者扱いだった。
その時。
巨大ゴブリンが動く。
ズシン。
一歩前へ。
騎士団の空気が変わる。
槍が向く。
魔力の光。
かなり練度が高い。
だが。
巨大ゴブリンは騎士たちを見ていなかった。
ジョンだけを見ている。
『返セ』
頭の中に声が響く。
ジョンは反射的に懐を押さえた。
アイテム袋。
その中に指輪が入っている。
熱い。
袋越しでも分かる。
まるで中で燃えているみたいだ。
「おい」
おっさんが小声で言う。
「その袋、絶対に落とすな」
「わ、分かってます!」
騎士団の一人が前へ出る。
年上だ。
顔に傷がある。
たぶん隊長格。
「子供」
低い声。
「懐の呪物を渡せ」
周囲がざわつく。
やっぱりバレてる。
「その魔物群との異常反応は確認済みだ」
騎士の目は鋭かった。
「国家危険指定級の可能性がある」
国家危険指定級。
意味はよく分からない。
でも。
ヤバいのだけは分かった。
「わ、渡したらどうなるんですか」
ジョンが聞く。
騎士は少しだけ黙った。
「王都へ移送だ」
その一言で十分だった。
嫌な予感しかしない。
「解体調査になる可能性もある」
ジョンの顔が引きつる。
解体。
今。
解体って言ったか?
「お、おっさん……」
「逃げるぞ」
即答だった。
「待て!!」
騎士団が動く。
だが。
その瞬間。
「ギィィィッ!!」
赤黒いゴブリンたちが飛び込んだ。
騎士団へ。
「迎撃!!」
槍が突き出される。
だが。
今までの兵士とは違った。
ザンッ!!
赤黒いゴブリンの腕が飛ぶ。
「……っ!」
ジョンが目を見開く。
強い。
町兵士とは比べ物にならない。
騎士団は連携していた。
前衛。
槍。
後衛。
魔法。
動きに無駄がない。
だが。
巨大ゴブリンが吠える。
ゴァアアアアアアア!!
空気が震える。
その瞬間。
赤黒いゴブリンたちの動きが変わった。
速い。
さっきより明らかに。
「強化された!?」
騎士の一人が叫ぶ。
「今だ!」
おっさんがジョンを引っ張る。
「裏路地へ走れ!」
ジョンは反射的に駆け出した。
広場を抜ける。
悲鳴。
怒号。
金属音。
全部が混ざる。
懐のアイテム袋が熱い。
その中の指輪が。
まるで暴れているみたいだった。
『返セ』
『返セ』
『返セ』
頭の中に響き続ける。
「なんなんだよこれぇ……!」
ジョンの叫びは。
混乱の音に飲まれて消えた。
【あとがき:現在のステータス】
【スキル】
■武器系
刀剣スキル 20
盾スキル 3
戦闘技術スキル 13
■生産系
料理スキル 13
■その他
鑑定スキル 0.3
【所持金】
2,171g(銀行預け金:11,250g(銀貨11枚、銅貨2枚、半銅貨5枚))
【所持アイテム】
・???のスクロール 6枚
・奴隷のマクダフの野郎
・武器破損した剣
・???の指輪(バンステ金策で入手)
・ゴブリン(テイム)
【投資・契約】
・中立共栄大金庫投資案件(ポーシャ支店)
元本:金貨10枚
状態:運用中
想定利回り:2倍〜5倍(説明ベース)
詳細:非公開/高リスク
【装備品】
・骨護札の首かざり
・水トカゲの手袋(呪)




