第68話 返せない
指輪が、光る。
赤い。
熱い。
まるで燃えているみたいだった。
「うあっ……!」
ジョンは思わず手を押さえた。
痛い。
皮膚の奥まで焼ける感じがする。
『返セ』
頭の中に声が響く。
何度も。
何度も。
巨大ゴブリンが、ゆっくり手を伸ばしてくる。
まるで。
“返してもらう”だけだと言わんばかりに。
「ジョン!」
おっさんが叫ぶ。
「その指輪、手放せ!?」
ジョンは慌てた。
あれだけ頑張ってバンステ金策で手に入れたレアアイテムだ。
そう簡単には手放せない。
「む、無理です!」
「クソッ!」
おっさんが舌打ちする。
『返セ』
また声。
頭が痛い。
気持ち悪い。
巨大ゴブリンがさらに近づく。
兵士たちが慌てた。
「撃てぇ!!」
弓兵が一斉に矢を放つ。
だが。
赤黒いゴブリンたちが前へ出た。
ジョンを守るように。
矢が刺さる。
血が飛ぶ。
それでも止まらない。
「ギィィ!!」
赤黒いゴブリンたちが兵士へ飛びかかった。
悲鳴。
混乱。
広場がまた地獄になる。
「なんで守るんだよ!?」
冒険者が叫ぶ。
誰にも分からない。
ジョンにも分からない。
巨大ゴブリンだけは、真っ直ぐジョンを見ていた。
真っ赤な目。
怒っている。
だが。
どこか焦っているようにも見えた。
『返セ』
『王ノ証』
「これ、そんなに大事な物なのか……?」
ジョンが呟く。
その瞬間。
ドクン。
指輪が強く脈打った。
視界が揺れる。
突然。
知らない光景が頭に流れ込んできた。
黒い森。
大量の赤い目。
そして。
巨大な玉座。
その上に。
誰かが座っていた。
人間じゃない。
巨大な影。
王冠みたいな角。
真っ赤な目。
『護レ』
低い声。
その瞬間。
視界が戻った。
「はぁっ……!」
ジョンは膝をつく。
息が荒い。
心臓が痛い。
「おい!」
おっさんが肩を掴む。
「何が見えた!?」
「わ、分からない……!」
本当に分からなかった。
でも。
ひとつだけ。
「この指輪……」
息を切らしながら呟く。
「誰かの物だった」
巨大ゴブリンの目が細くなる。
まるで。
その言葉を理解したみたいに。
『返セ』
『ソレハ』
巨大ゴブリンが、ゆっくり口を開く。
『王ノ物ダ』
広場が静まり返る。
兵士も。
冒険者も。
避難民も。
誰も動けない。
王の物。
つまり。
ジョンは。
“魔物の王の持ち物を盗んだ奴”
になっていた。
「……終わった」
おっさんが頭を抱えた。
かなり本気だった。
その瞬間。
広場の奥から怒鳴り声が響く。
「いたぞ!!」
重装備の兵士たち。
今までとは装備が違う。
黒い鎧。
長槍。
そして。
胸には、王国騎士団の紋章。
「対象を確保しろ!!」
槍の穂先が、一斉にジョンへ向いた。
【あとがき:現在のステータス】
【スキル】
■武器系
刀剣スキル 20
盾スキル 3
戦闘技術スキル 13
■生産系
料理スキル 13
■その他
鑑定スキル 0.3
【所持金】
2,171g(銀行預け金:11,250g(銀貨11枚、銅貨2枚、半銅貨5枚))
【所持アイテム】
・???のスクロール 6枚
・奴隷のマクダフの野郎
・武器破損した剣
・???の指輪(バンステ金策で入手)
・ゴブリン(テイム)
【投資・契約】
・中立共栄大金庫投資案件(ポーシャ支店)
元本:金貨10枚
状態:運用中
想定利回り:2倍〜5倍(説明ベース)
詳細:非公開/高リスク
【装備品】
・骨護札の首かざり
・水トカゲの手袋(呪)




