第66話 敵か味方か
兵士たちが、じりじりと後ろへ下がる。
槍は構えたまま。
だが。
ジョンへ向いていた。
「ち、違います!」
ジョンは思わず叫んだ。
「僕じゃない! 本当に知らなくて――」
その声を遮るように。
「ギィ……」
赤黒いゴブリンが、また鳴いた。
低い声。
だが。
敵意が薄い。
妙だった。
三体のゴブリンは、ゆっくり近づいてくる。
武器を振り回さない。
飛びかからない。
ただ。
ジョンを見ている。
避難民たちが怯えた声を漏らす。
「おい……」
「なんで襲わねぇんだ……」
「やっぱり操って……」
やめてほしかった。
違う。
本当に違うのに。
「落ち着け!」
兵士の一人が怒鳴る。
だが。
その兵士自身も混乱していた。
槍を持つ手が震えている。
「おっさん……」
ジョンは小さく呟く。
「どうしたら……」
「俺に聞くな」
即答だった。
だが。
おっさんもゴブリンから目を離さない。
「……妙だな」
低い声。
「普通なら、とっくに襲ってる」
ジョンもそう思った。
西門では、兵士を簡単に殺していた。
なのに。
今は違う。
赤黒いゴブリンの一体が、ゆっくり膝をつく。
まただ。
跪いている。
周囲がざわつく。
兵士たちがさらに後退る。
避難民の中には、もう逃げ出している奴もいた。
「やっぱりだ!」
誰かが叫ぶ。
「あのガキが操ってる!」
違う。
違うのに。
その瞬間だった。
ゴァアアアアアアアア!!
巨大ゴブリンの咆哮。
近い。
さっきより。
ずっと。
地面が揺れる。
建物の窓が割れる。
避難民たちが悲鳴を上げた。
赤黒いゴブリンたちの様子が変わる。
ビクリ、と体を震わせた。
怯えている。
「……命令か?」
おっさんが呟く。
その直後。
三体のゴブリンが、一斉にジョンへ手を伸ばした。
「うわっ!?」
ジョンが後ずさる。
襲われる。
そう思った。
だが。
違った。
ゴブリンたちは、ジョンを囲む。
外側を向く。
まるで。
守るみたいに。
「は……?」
兵士たちも固まる。
意味が分からない。
次の瞬間。
広場の入口が吹き飛んだ。
ドガァン!!
木片が飛ぶ。
悲鳴。
土煙。
そこから。
巨大な影が現れる。
巨大ゴブリンだ。
デカい。
広場に入っただけで圧迫感が違う。
赤黒い筋肉。
真っ赤な目。
息をするたびに、白い蒸気が漏れる。
避難民たちがパニックになる。
「うわああああ!!」
「逃げろぉ!!」
一斉に崩れる人の流れ。
将棋倒し。
泣き声。
怒鳴り声。
地獄だった。
だが。
巨大ゴブリンは、人間を見ていなかった。
ジョンだけを見ている。
ドクン。
指輪が脈打つ。
熱い。
痛い。
巨大ゴブリンが、一歩前へ出る。
それだけで地面が揺れる。
すると。
ジョンを囲んでいた赤黒いゴブリンたちが。
巨大ゴブリンへ向かって吠えた。
「ギィィッ!!」
威嚇。
明らかだった。
「……おい」
おっさんの顔が引きつる。
「群れの中で割れてやがる」
巨大ゴブリンが、ゆっくり口を開く。
鋭い牙。
真っ赤な喉。
そして。
初めて。
はっきりと。
言葉を発した。
「……オ……ウ……」
広場が静まり返る。
「……王?」
誰かが呟いた。
巨大ゴブリンの赤い目が、ジョンを見据える。
そして。
もう一度。
「……オ……ウ……」
【あとがき:現在のステータス】
【スキル】
■武器系
刀剣スキル 20
盾スキル 3
戦闘技術スキル 13
■生産系
料理スキル 13
■その他
鑑定スキル 0.3
【所持金】
2,171g(銀行預け金:11,250g(銀貨11枚、銅貨2枚、半銅貨5枚))
【所持アイテム】
・???のスクロール 6枚
・奴隷のマクダフの野郎
・武器破損した剣
・???の指輪(バンステ金策で入手)
・ゴブリン(テイム)
【投資・契約】
・中立共栄大金庫投資案件(ポーシャ支店)
元本:金貨10枚
状態:運用中
想定利回り:2倍〜5倍(説明ベース)
詳細:非公開/高リスク
【装備品】
・骨護札の首かざり
・水トカゲの手袋(呪)




