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第60話 言葉にならない声

「……ア……」


赤黒いゴブリンが、また声を出す。


低い。


潰れたみたいな声。


聞いているだけで気味が悪い。


周囲も完全に止まっていた。


兵士。


冒険者。


野次馬。


誰も動けない。


「おい……嘘だろ」


「魔物が喋ったぞ……」


「ありえねぇ……」


ざわざわと空気が揺れる。


恐怖。


混乱。


それが一気に広がっていく。


赤黒いゴブリンは、まだジョンを見ていた。


ひょっとしたら僕はこの赤黒いゴブリンとどこかで出会っているのかもしれない。


昔僕がまだ今よりも幼かったころに出会ったのかもしれないと思ったが僕にはそんな昔の記憶はあまりなかった。


まっすぐ。


ずっと。


ドクン。


胸元の指輪が脈打つ。


熱い。


さっきより熱い。


「ぐっ……!」


ジョンは思わず膝をついた。


「あ、おい!」


おっさんが腕を掴む。


「大丈夫か!」


「ゆ、指輪が……!」


熱い。


まるで火を押し当てられているみたいだ。


アイテム袋に入れていたアイテムが熱を帯びたりするなど聞いたこともなかった。


でも実際に今この僕のアイテム袋に入れてある指輪は熱くなっているのだ。


すると。


赤黒いゴブリンが、一歩前に出た。


兵士たちが慌てる。


「撃て!!」


弓兵が一斉に矢を放った。


だが。


赤黒いゴブリンは避けない。


矢が刺さる。


肩。


腕。


胸。


何本も。


なのに。


止まらない。


「なんだあいつ……!」


「効いてねぇぞ!」


兵士たちの顔が青くなる。


赤黒いゴブリンは、ゆっくり矢を掴んだ。


そして。


ボキ。


片手で折る。


空気が凍った。


「冗談だろ……」


近くの冒険者が後ずさる。


「上級種か……?」


「いや、あんなゴブリン見たことねぇ!」


当然だ。


ジョンも見たことがない。


赤黒いゴブリンが、また口を開く。


「……ア……ケ……」


今度は少し違った。


音が増えている。


まるで。


無理やり、人の言葉を真似しているみたいだった。


おっさんの顔色が変わる。


「おい」


低い声。


「まさか、名前を呼ぼうとしてんのか……?」


ジョンの背筋が凍る。


「え?」


「お前、あの指輪をどこで拾った」


「バ、バンステ金策で……」


そこまで言った瞬間。


おっさんが舌打ちした。


「クソ」


かなり本気の声だった。


「繋がっちまってる」


「な、何とですか!?」


「知らん!」


怒鳴る。


「だが、ろくでもねぇ!」


その時だった。


赤黒いゴブリンの後ろ。


黒い森が、大きく揺れた。


ズシン。


重い音。


地面が震える。


「……まだいるのかよ」


おっさんの声が引きつる。


珍しい。


本当に珍しい。


森の奥。


黒い煙の向こう。


巨大な影が動いた。


赤黒いゴブリンが。


ニタァ、と笑う。


まるで。


“来るぞ”と教えるみたいに。

【あとがき:現在のステータス】


【スキル】

■武器系

刀剣スキル 20

盾スキル 3

戦闘技術スキル 13


■生産系

料理スキル 13


■その他

鑑定スキル 0.3


【所持金】

2,171g(銀行預け金:11,250g(銀貨11枚、銅貨2枚、半銅貨5枚))


【所持アイテム】

・???のスクロール 6枚

・奴隷のマクダフの野郎

・武器破損した剣

・???の指輪(バンステ金策で入手)

・ゴブリン(テイム)


【投資・契約】

・中立共栄大金庫投資案件(ポーシャ支店)

 元本:金貨10枚

 状態:運用中

 想定利回り:2倍〜5倍(説明ベース)

 詳細:非公開/高リスク


【装備品】

・骨護札の首かざり

・水トカゲの手袋(呪)

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