第57話 最悪の前兆
指輪が、熱い。
服の上からでも分かる。
じわじわ。
焼けるような熱。
「っ……!」
ジョンは胸元を押さえた。
「どうした」
おっさんが気づく。
「指輪が……」
その瞬間。
おっさんの顔が変わった。
「見せろ」
声が低い。
ジョンは慌てて服の中から指輪を取り出した。
黒ずんだ金属。
バンステ金策で手に入れた、あの指輪。
表面に刻まれた模様が、赤く光っている。
「……おいおい」
おっさんが小さく呟く。
珍しく、本気で嫌そうな顔だった。
「な、なんなんですかこれ」
「知らん」
即答。
「ただ」
指輪を見る目が鋭い。
「まともな代物じゃねぇのは確かだ」
熱は強くなっていく。
まるで。
どこかを指しているみたいに。
ジョンは顔を上げた。
西門。
黒い煙。
ケムトレイル。
「……あっち?」
指輪が、微かに震えた。
答えるみたいに。
おっさんが舌打ちする。
「最悪だな」
「え?」
「嫌な予感が当たりそうだ」
周囲では、まだ騒ぎが続いていた。
冒険者たちが集まり始めている。
「討伐依頼出るか?」
「進化群なら稼げるぞ!」
「早い者勝ちだ!」
金の匂い。
それだけで、人が集まる。
ジョンも少しだけ期待した。
もし倒せれば。
また稼げるかもしれない。
投資だって増える。
もっと強い武器も買える。
「ジョン。行くぞ」
おっさんが歩き出す。
「見に行くんですよね!?」
「近くまではな」
顔が険しい。
「だが、状況次第で即逃げる」
西門へ近づくほど、人が増えていく。
冒険者。
野次馬。
商人。
中には露店まで出し始めている奴もいた。
異常だ。
まるで祭りみたいだった。
「すげぇ……」
ジョンが呟く。
その横で。
おっさんは、ずっと周囲を警戒していた。
「浮かれるな」
低い声。
「こういう時が、一番死ぬ」
門の近くまで来た時だった。
兵士たちが道を塞いでいた。
「ここから先は封鎖だ!」
「一般人は下がれ!」
怒鳴り声。
押し返される冒険者。
文句を言う声。
混乱している。
だが。
その奥。
門の外。
ジョンは見てしまった。
森が、黒い。
木々が変色している。
煙みたいな黒が、地面を這っている。
そして。
その中で。
何かが動いた。
ゴブリン。
……いや。
違う。
デカい。
異様に。
普通の倍近い体。
膨れ上がった腕。
赤黒い皮膚。
そして。
目。
真っ赤だった。
「――変異種か」
おっさんの声が沈む。
「最悪だな」
【あとがき:現在のステータス】
【スキル】
■武器系
刀剣スキル 20
盾スキル 3
戦闘技術スキル 13
■生産系
料理スキル 13
■その他
鑑定スキル 0.3
【所持金】
2,171g(銀行預け金:11,250g(銀貨11枚、銅貨2枚、半銅貨5枚))
【所持アイテム】
・???のスクロール 6枚
・奴隷のマクダフの野郎
・武器破損した剣
・???の指輪(バンステ金策で入手)
・ゴブリン(テイム)
【投資・契約】
・中立共栄大金庫投資案件(ポーシャ支店)
元本:金貨10枚
状態:運用中
想定利回り:2倍〜5倍(説明ベース)
詳細:非公開/高リスク
【装備品】
・骨護札の首かざり
・水トカゲの手袋(呪)




