第52話 夢の終わり
今思えば――
あっけないものだった。
準決勝まで進んだ。
あの広い部屋にも泊まった。
好きなだけ食べて、飲んで。
それだけでも、十分すごいことだ。
……そう思うことにした。
もしかしたら。
勝てるんじゃないか。
決勝まで行けるんじゃないか。
そんなことも、少しだけ考えていた。
竜に勝った。
それが、頭から離れなかった。
でも。
違った。
あれは、勝ったんじゃない。
勝たされたのかもしれない。
今なら、少しだけそう思う。
宿屋に戻る。
扉を開けた瞬間、
いつもの匂いがした。
木の匂い。
古い布の匂い。
少しだけ混じる酒の匂い。
――落ち着く。
狭い部屋。
低い天井。
軋む床。
でも。
こっちのほうがいい。
あの広い部屋より。
少し不便で、少し窮屈で。
それでも、安心できる。
「ジョン。この町での金策は終わりだな」
おっさんが言う。
いつも通りの声で。
「潮時だ」
短い言葉。
でも、重い。
僕も同じ考えだった。
あんなことがあった後で、
ここに居続けるのはよくない。
何が起きても、おかしくない。
もう、十分だ。
次の町。
どんな場所だろう。
どんな食べ物があるのか。
どんな魔物がいるのか。
どんな金策ができるのか。
考えると、少しだけ楽しくなる。
マクダフは――戻っていない。
昨日から、一度も見ていない。
あのままどこかで寝ているのか。
それとも。
別の何かに巻き込まれているのか。
少しだけ気になった。
でも。
すぐに考えるのをやめた。
あいつは、そういうやつだ。
どこかで、うまくやっているだろう。
たぶん。
コロシアムの優勝者も、気にならない。
どうせ同じだ。
あれは戦いじゃない。
見世物だ。
何でもあり。
その“何でも”が、やりすぎている。
でも。
誰もおかしいとは言わない。
観客の目を思い出す。
熱に浮かされたような顔。
金の匂いに引き寄せられた目。
少しだけ、怖いと思った。
「ジョン。二日後には出るぞ。もうこの町に用はない」
おっさんが言う。
「やり残しがあるなら、済ませておけ」
二日後。
思っていたより、少し遅い。
おっさんには、まだ用があるらしい。
この町に。
「わかった」
僕は答える。
何をしようか考える。
やりたいことは、特にない。
……ふと、思い出す。
お金。
今、僕は――
2,002,171G 持っている。
改めて考える。
おかしい。
子供が持つ額じゃない。
重さも。
価値も。
現実感がない。
ずっと持ち歩いている。
今までは、何もなかった。
でも。
これからも、何もないとは限らない。
狙われる。
そう思った瞬間、
少しだけ背中が冷えた。
銀行。
あまり好きじゃない。
あの場所。
あの仕組み。
あの手数料。
でも。
持ち歩くよりは、ましだ。
僕は立ち上がる。
銀行に行こう。
【あとがき:現在のステータス】
【スキル】
■武器系
刀剣スキル 20
盾スキル 3
戦闘技術スキル 13
■生産系
料理スキル 13
■その他
鑑定スキル 0.3
【所持金】
1,002,171g(銀行預け金:11,250g(銀貨11枚、銅貨2枚、半銅貨5枚))
【所持アイテム】
・???のスクロール 6枚
・奴隷のマクダフの野郎
・武器破損した剣
・???の指輪(バンステ金策で入手)
・ゴブリン(テイム)
【装備品】
・骨護札の首かざり
・水トカゲの手袋(呪)




