第46話 勝ってはいけない試合
今日は、第三回戦の日だ。
第二回戦で破壊された会場は、すでに修復されていた。
いや――ただの修復ではない。
広い。
明らかに、以前より広く作り直されている。
それでも、準決勝以降に使われる本会場と比べれば小さいらしい。
だが、今回に限っては十分すぎる広さだった。
理由は、すぐに分かった。
対戦相手。
それを見た瞬間に。
第三回戦の相手は――
竜騎士団、副団長。
思考が止まる。
モンスターコロシアムに、竜騎士団が出る。
そんな話、聞いたことがない。
賭ける側ではあっても、戦う側ではないはずだ。
だが。
間違いない。
会場に現れたのは、まごうことなき“本物”だった。
そして。
相手のモンスター。
――竜。
竜騎士団が普段から使っている、あの巨大な飛竜。
この試合のために、会場が広げられた。
そう考えるしかなかった。
僕は、こんな試合を見たことがない。
三回戦のはずだ。
それなのに。
まるで決勝だ。
おっさんは、その対戦カードを聞いて笑っていた。
「行き着くところまで来たな」
軽く言った。
意味は、分からない。
まだ三回戦だ。
どこが“行き着いた”のか、僕には理解できなかった。
試合前。
すでに会場は熱狂していた。
観客の声が、波のように押し寄せる。
「お待たせしました!第三回戦、まもなく開始です!」
実況が叫ぶ。
「注目のカードは――突如現れた少年 VS 竜騎士団!」
歓声。
怒号。
金の匂い。
「副団長に全額だ!こんな美味い賭けはねぇ!」
「誰があのガキに賭けるんだよ!相手が悪すぎる!」
完全なアウェーだった。
僕たちに賭ける者はいない。
「ジョン」
おっさんが静かに言う。
「今回で、コロシアム金策は終わりだ」
「えっ?」
僕は思わず聞き返す。
「勝てば、すごいオッズになるんじゃないの?」
「相手が悪すぎる」
即答だった。
「相手は竜騎士団だ。王国の象徴だ」
指を立てる。
「その竜に、お前の銃ゴブリンが勝ったらどうなる?」
「……強いってことになる?」
「違う」
おっさんは首を振る。
「“竜より強い”ってことになる」
一拍。
「そんなもの、王が認めると思うか?」
言葉が、詰まる。
理解が追いつかない。
だが――まずいことだけは分かる。
「負けたらダメなのに……なんで出るの?」
素直な疑問だった。
おっさんは、少しだけ笑う。
「ここは何処だジョン?」
「───モンスター…コロシアム」
「違う」
間を置く。
「八百長コロシアムだ」
静かに言い切った。
「なんでもありだ」
――だが。
勝つことだけは、許されない。
「おやおや~」
軽い声が割り込む。
振り向くと、控え室の入口にオーナーが立っていた。
いつの間に入ってきたのか分からない。
派手な服。
貼り付いた笑顔。
「ご挨拶に来たのですが……あまりやる気が感じられませんねぇ」
おっさんが肩をすくめる。
「今なら協力してやってもいいぜ。あんたも恥はかきたくないだろ?」
オーナーは笑った。
「いえいえ~。ここは正真正銘の“力と力”のぶつかり合いの場所ですよ」
わざとらしく手を広げる。
「八百長など、もってのほか!!」
嘘だ。
全員が分かっている。
それでも、誰も否定しない。
「では、よい試合を」
そう言って、去っていった。
「旦那ぁ……」
マクダフがため息をつく。
「今回は終わりですね」
迷いはない。
「俺は竜に賭けますぜ」
勝ち馬に乗る。
それだけだ。
「仕方ない」
おっさんも否定しない。
「王国相手に勝つ意味はない」
ジョンも頷く。
分かる。
完全には理解できないが、分かる。
勝ってはいけない試合がある。
それが、今だ。
「行くぞ」
おっさんが立ち上がる。
僕も立つ。
銃ゴブリンのパックが後ろに続く。
扉を開ける。
光。
音。
熱。
会場に出た瞬間。
――圧。
完全なアウェー。
視線が刺さる。
歓声は、敵のものだった。
第三回戦が、始まる。
【あとがき:現在のステータス】
【スキル】
■武器系
刀剣スキル 20
盾スキル 3
戦闘技術スキル 13
■生産系
料理スキル 13
■その他
鑑定スキル 0.3
【所持金】
1,002,171g(銀行預け金:11,250g(銀貨11枚、銅貨2枚、半銅貨5枚))
【所持アイテム】
・???のスクロール 6枚
・奴隷のマクダフの野郎
・武器破損した剣
・???の指輪(バンステ金策で入手)
・ゴブリン(テイム)
【装備品】
・骨護札の首かざり
・水トカゲの手袋(呪)




