第21話 刀剣スキル20到達――銀行で始まる次の金策
――キィン! ガンッ! ガキィン! キィン! キィン! ガンッ!
横目でチラッとステータス画面を確認する。
まだか。
――ガキィン! キィン! ガンッ! キィン! キィン! ガンッ!
チラッとステータス画面を確認。
そこには間違いなく「刀剣スキル 20」の数字があった。
僕は慌てて、大岩を叩くために振り上げていた木剣の手を止めた。
もう大岩を叩くことも、水面を木剣で叩く必要性もないのだ。
「オヒョ……フヒョヒョヒョー!!つ、ついに刀剣スキル 20! 20! 20 だ!!」
空中に木剣を振り回しながら僕は叫び、大岩の周りをグルグルと走り回った。
大岩を木剣で叩き、水面を木剣で叩いていた子どもが、今度は叫びながら大岩の周りを走り回っているのだ。
こんな恐ろしい光景はあまりないだろう。
僕はそんな光景見たことがない。
僕はついに目標とする刀剣スキル 20 まで上げることができたのだ。
もう一度ステータス画面のスキル値を確認してみる。
【現在のステータス】
■武器系
刀剣スキル:20
盾スキル:3
戦闘技術スキル:13
■生産系
料理スキル:13
■その他
鑑定スキル:0.3
「本当だ!ほんとうに刀剣スキルが 20 になってる! こんなやり方で刀剣スキルを 20 まで上げられるとは… 」
戦闘技術スキルはまだ目標まで 2 ほど足りないが、もう十分だろう。
まったく問題ではないはずだ。
と言うよりも戦闘技術スキルは本当に上げづらい。
刀剣スキルにこんな僕の知らなかった上げ方があるのだ。
だとしたら戦闘技術スキルももっと簡単に上げることができる方法をおっさんは知っているだろう。
僕はそれにかけることにした。
いつもよりスキル上げをやっていたか、半分から夕方頃に帰っていた時よりも早く帰られるため僕はうれしかった。
町に戻ったらすぐに宿屋に向かって、この街をでるための荷物の準備をしよう。
特にこれといった物は宿屋には置いていないが、数少ない僕の荷物も置いてある。
そうだ。
おっさんに刀剣スキルが目標の20まで上がったことを報告するついでに、お金のことも聞かなくてはならない。
僕はこれまで、スキル上げの最中でも全財産をずっと懐に入れて持ち歩いていた。
だが、それが気になって集中できない。
途中からは、人が来ない場所だと分かっていたため、大岩の近くに隠して置くようにした。
それでも落ち着かなかった。
自分の全財産だ。
気にならないはずがない。
「ちゃんとあるよな……?」
何度も確認してしまい、そのたびに手が止まる。
そのせいで、スキル上げに余計な時間がかかっていたのは間違いない。
本当はもっと早く終わっていたはずだ。
この問題は早く解決しないといけない。
そう思いながらも、なかなかおっさんに聞く機会がなかった。
だからこそ、今日は絶対に聞くと決めていた。
町の出入口の門の警護をしている兵士さんにまた少し顔をゆがめられながら僕は町に入った。ちょっと傷ついたが原因がわかっているため僕はそこまで気にはしない。
町はもうすぐ開かれるお祭りの準備でいつもより賑わっていた。もうそんな時期なのだ。いつもなら僕はお祭りの準備を手伝っておこづかいをもらっていたが、今年は冒険者として楽しめそうだ。お金はたくさん持っているからね。
宿屋に向かおうと思ったが、まず露天市場に行っておっさんに会うことにした。
やっぱりまずはお金のことを聞かなくてはならない。
何かいい方法を知っているはずだ。
露天市場で今日も料理露店を開いてサンドイッチを、いやサンドパンだったかそれを売っていた。
エリヤが客引きと声かけをサンドパンを食べながらいつものようにおこなっていた。今日も元気が良い。
ちょうど露店の後ろのほうにおっさんもいるのが分かった。
探しに行く必要性がなくて僕は良かったと思った。
いつもおっさんはどこに言っているのだろうか、僕には分からないため探しようもないが。
「あっ!生臭ジョンもう帰ってきたの……? 」
「ジョン、今日は早いご帰かんだな……どうかしたか……? いやついに目標達成か」
「20 だよ!ついに僕も刀剣スキルが 20 まで上がったんだよおっさん!」
おっさんもエリヤも僕の刀剣スキルが 20 まで上がったことを喜んでくれた。
僕もついに冒険者としてランクを上げることができそうだ。
僕にこんな日が来るとは思わなかったが、こんな日がきてしまった。
「おっさん!それと聞きたかったんだけど、お金ってどうしてるの? 今まで持ったことのない大金をずっと懐に入れて僕は持ち歩いていているんだけど、それが気になってしょうがないんだけど……」
「ジョン、お前ずっと金を持ち歩いていたのか……? 子どもには銀貨数十枚なんて大金だと思うが」
「だから困ってたんだよおっさん。マクダフに預けておくなんてできないし、おっさんに預けていても欲しい時に会えないと使えないし……」
「ジョン、お前もギルドカード持ってるだろう。それは使ってないのか……? そりゃあいい、今から銀行に行こう! 次の金策の準備をついでに今からやるぞ」
銀行とは冒険者や町の住民の人たちのお金を預かってくれる場所のようだ。
僕もどこかでお金を預けることができることはギルドとかで聞いたことはあったが、これは大人の人が利用するものであって、子どもの僕なんかが行っても利用できないのではないかと思っていた。
どうやらギルドカードを持っていたら、銀行とギルドカードを連携させることができて、このギルドカードを通してお金を預けたり引き出したりできるらしい。
ギルドカードは魔法のカードだ。
ギルドカードにそんな使い方があったなんて僕はしらなかった。
町の出入りとギルドで使うくらいだと思っていた。
「銀行って大人の人以外使えないんじゃないの……?僕まだ子どもだよ。刀剣スキルは 20 もあるけど」
「銀行は金さえ持っていれば大人や子ども、亜人でも誰でも使えるぞジョン……そしてこれから大金を稼ぐのに銀行を使わないのは不可能に近い……これから金貨や白金貨を大量に手に入れて手元にずっと持っておくのは危険だからな。特に子どもなんかがそんな大金持ってたら……」
「き、金貨や……し、白金貨だって! おっさんすぐに銀行に行こうよ。金貨が僕たちを待ってるよ!」
とんでもない話だ。
これから僕は金貨や白金貨と言った、見たこともない、持ったこともない金貨たちをたくさん手に入れることになるようだ。
そんな大金をずっと懐に入れて持ち歩くなんて考えただけで頭がおかしくなりそうだ。
絶対に銀行は必要だ。
僕はおっさんに銀行に連れていってもらうことにした。
急いだほうがいい。
早く銀行を使えるようにしないと、金貨を手に入れても僕は持ちたくないからね。
僕なんかが持ってたらマクダフなんかに取られてしまう。
銀行――中立共栄大金庫
「こ、ここが銀行なの……? 」
「ああ、どの国でも、どの町でも、その中心部にあるのがこの『中立共栄大金庫』だ。俺たちは銀行やバンクと呼んでたがな……」
銀行はギルドの近くにあった。
どの町でも中心の部分にあるようだ。
町の中心にあるのはギルドだと僕は思っていたが、中心にあるのはだいたいこの中立共栄大金庫のようだ。
どの町や国でもこれは一緒のようだ、一部を除いては。
それだけ銀行はすごいところなのだ。
銀行ではどんな人種であっても平等に扱ってくれる数少ない場所らしい。
この場所での争いごとやもめ事は絶対にダメらしい。
僕は今まで入ったことにない銀行に入った。
僕のような子どもが遊びで来る場所ではないと思っていたが、入ってみると中は広くて、ギルドや料理屋などとはちがいとても綺麗な場所だった。
この町にこんな場所があるなんて僕は今までしらなかった。
おっさんはなぜこんなすごい場所のことを僕に早く教えてくれなかったのだろうか。もっと早く教えてくれてたらよかったのにと僕は思った。
そうすればもっと早くスキル上げを終えることができただろう。
「いらっしゃいませ……本日はどのようなご用件でしょうか?」
「この子どもの口座を作りたいのだが。」
おっさんの一言で手続きが始まる。
「はい!僕はお金をいっぱい預けたいので口座?をたくさん作りたいです! オヒョ……」
「それはそれは、数ある中から中立共栄大金庫の当アーデン支店を選んで頂きありがとうございます。冒険者様の方でしょうか?それとも……フラヴィウス様のご子息様でいらっしゃいますか?」
「いや……ただの冒険者仲間だ。ここは初めてのようだから連れてきた」
また知らない名前が出てきた。フラヴィウス様とはいったい誰のことなのだろうか。僕はしらなかったが、これもおっさん名前らしい。
奴隷商館で使った名前とまた違う名前だ。どれが本当のおっさんの名前なのだろうか、鈴木武と僕に初めに教えてくれた名前が本当なのか僕にはよくわからなくなった。
「そうでしたか。冒険者様でしたら、ギルドカードをご提示ください。当中立共栄大金庫はギルドカードと連携しておりますので、カード一枚で預け入れや引き出しが可能です。また、冒険者様同士であれば、当金庫に来ずともギルドカードを通じて金銭のやり取りも行えます。」
「す、すごい!それは僕のギルドカードが進化するってことですね! フヒョヒョヒョ……」
「し、進化ですか……さそうでございます……」
今日僕は刀剣スキルが 20 になり成長したが、僕の冒険者としての証明のギルドカードも進化してしまった。
すごい一日だ。
この日のことはぼくは絶対に忘れないだろう。
銀行の人にギルドカードをわたしてから少しして、僕のギルドカードが進化した。
これで僕も中立共栄大金庫を利用できる人になったのだ。
ただの子どもではないのだ。
エリヤよりも僕はすごいのだ。
「お待たせしました。次回からこちらのギルドカードを提示して頂ければ、すぐにお金を預け入れしたり引き出したりすることが可能です。」
僕の手元に戻ってきたギルドカードは、以前よりもわずかに光って見えた。
水トカゲの手袋のように、水気がなくても光っている。
そのとき、ふと気づく。
この銀行の人は、僕の生臭いにおいにまったく反応していない。
顔色ひとつ変えない。
初対面なのにだ。
おっさんは慣れているから平気でもおかしくない。
でも、この人は違う。
――いい人だ。
そう思った僕は、手持ちのお金をすべて中立共栄大金庫に預けることにした。
これで、いつでもお金を引き出せる。
これから稼いだ分も、安全に預けられる。
もう、眠るたびに懐の金を心配する必要はない。
朝起きて、こっそり無事か確かめることもない。
こんなに安心できるなら、もっと早く知りたかった。
どうしておっさんは、今まで教えてくれなかったんだろう。
「お金を預けたいです!今日はこれだけお願いします!」
そう言って僕は懐にある全財産を銀行のカウンターに出した。
銀貨 19 枚だ。
何枚かの銀貨は僕の青黒い色の手袋に引っ付いていてカウンターに置けてなかった。
「はい、ありがとうございます。では今回はこちらの銀貨 19 枚を当中立共栄大金庫にてしっかりとお預かりさせていただきます。ギルドカードをお貸しください。」
僕は、先ほど受け取ったギルドカードをもう一度銀行の人に渡した。
このカードのどこにお金が入っているのか、不思議でたまらない。
きっと、僕には分からないすごい仕組みがあるのだろう。
もし銀貨19枚分だけカードが重くなったり、厚くなったりするなら――
大金を預けている人は、いったいどうやって持ち歩くのだろうか。
そんなことを考えていたが、返ってきたギルドカードはいつも通りだった。
重さも、厚さも、何ひとつ変わらない。
それを確かめて、僕はほっとした。
「ほかに何かご用はございますでしょうか?」
「いえ!またお金預けに来ます。その時はよろしくお願いします!」
「はい、ジョン様……またのご利用を心よりお待ちしております。私 ルキウス が本日は担当させて頂きました。」
銀行の人のルキウスさんに名前をおぼえられてしまった。
どこでしったのだろうか、僕はなんかすごい人になった気がした。
冒険者としても人としても成長しているのだ。
うかれ気分で銀行から出て振り返って銀行を見てみると、もうすでに僕の対応してくれた銀行の人はいなくなっていた。
お仕事がいそがしいなか僕の対応をしてくれたのだろう。
もしかするとルキウスさんは中立共栄大金庫のすごい人で僕はそのすごい人に対応してもらったのかもしれない。
銀行を出たあと、おっさんが聞いてきた。
「内部、覚えたか?」
「え?」
「配置や動線だ」
嫌な予感がした。
「次の金策は――銀行だ」
「……は?」
「金が一番集まる場所だからな」
背筋が冷えた。
「まさか……銀行を……」
最後まで言えなかった。
だが、おっさんは笑っていた。
もう決まっている顔だった。
手元のギルドカードが進化したため、簡単にステータス画面で銀行に預けた金額もわかるようになっていた。これはとても便利だ。
【あとがき:現在のステータス】
【スキル】
■武器系
刀剣スキル 18(前回 16 → 今回は 2 上昇)
盾スキル 3
戦闘技術スキル 11(前回 10 → 今回は 1 上昇)
■生産系
料理スキル 13
■その他
鑑定スキル 0.3
【所持金】
671g(銀行預け金:銀貨9枚)
【所持アイテム】
・蛇肉(大量)
・???のスクロール 6枚
・奴隷のマクダフの野郎
・武器破損した剣
・木剣2本
【装備品】
・水トカゲの手袋(呪)




