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第22話 銀行の真実――消えた銀貨と“搾取大金庫”

「旦那ぁ……今夜は何かいいことあったんですかい……? さっきからギルドカード、ずっと見てるじゃないですか」


「ああ、マクダフ、見てくれよこれ!僕のギルドカードが今日進化したんだよ!」


宿屋のベッドで俺は横になりながら、いつもと表情の違う御主人様のご機嫌伺いをした。

すぐに顔に出てしまう御主人様だ。

分かりやすい人だ。これは”聞いてほしい顔”だな。

この御主人様と上手くやっていくためにも、そのような一瞬の表情の動きや仕草を俺は見逃したりはしない。


差し出されたギルドカードを見たが、見た目はいつも通り。

だが、ここで”分からない”はダメだ。


「やや、これは!ギルドカードを『中立共栄大金庫』と連携させたんですね。それで進化ですかい……おめでとうございます、俺も自分のことのように嬉しいですよ、旦那ぁ!」


「すごいだろ、マクダフ!これで僕はいつでも銀行でお金を預けたり引き出したりできるんだよ。これで大金をいつも持ち歩かなくてもいいんだ!」


――銀行、ね。


世間じゃあ『中立共栄大金庫』。

俺たちの間じゃあ『搾取大金庫』だ。


「旦那ぁ……『搾取大金庫』なんかに預けなくても、俺に任せてくれりゃあ、2 倍でも 10 倍でも――」


「い、いやだよ、マクダフ!君にはたくさんの負債があるんだよ。今は僕の負債になってるようだけど……金貨 100 枚だなんて返せって言われても今は無理だけど……」


「旦那ぁ……だからどこかで勝負する必要性があるんですぜ。ずっとこの調子だと、旦那もすぐに奴隷落ちしてしまう可能性もありますぜ……なんせ、俺の負債の金貸し元は王国ですからね」


この御主人様は何を思って『搾取大金庫』なんかに口座を作ったんだろうか。

俺の負債を返すための大金を稼ぐことができる当てがあるとも思えないが、自分からギルドカードと連携までさせちまっている。


これで御主人様の懐具合は銀行には筒抜け状態だ。

あいつらは人のことを金としか見ていない。

『搾取大金庫』内に入って銀行のやつに顔を見られたら、即「いくらのお金を預けているか」や「大金庫ランク」によって対応が全く違う。


「搾取大金庫って何……?マクダフ、僕が口座を作ったのは『中立共栄大金庫』であって『搾取大金庫』じゃないよ……よく僕の話を聞いてくれよ、マクダフ!」


御主人様は少し不安そうな顔をする。いい流れだ。


「旦那ぁ……そのギルドカードをよーく見てみて下さい。初めて口座を作ってお金を預けたんですよね……?」


言われるままに、御主人様はステータス画面を開く。

そして――顔色が変わった。


「あ!ああああああああ…僕の、僕のお金が… 預けた金額より減ってる!!」


「それが『中立共栄大金庫』が『搾取大金庫』といわれる由縁ですぜ、旦那ぁ……」


「ちょっと何かの間違いだよきっと。今から『中立共栄大金庫』に行って聞いてみる!」


御主人様が椅子から立ち上がって、こんな夜更けの時間に宿屋から出ていこうとして、俺は慌てて止めた。


「旦那ぁ……こんな時間じゃあ『搾取大金庫』も『中立共栄大金庫』も閉まってますぜ……いくらお金を預けたんですかい。俺がギルドカードを見る限り、全部で銀貨 19 枚ほど預けた感じですかい……?」


「そ、そうだよ、マクダフ。僕は銀行に銀貨 19 枚しっかりと預けたんだ!それが今確認してみたら銀貨 9 枚しか預かってないことになっている。なんで僕が預けた金額を知ってるんだい、マクダフ」


「それはですね、旦那ぁ……『搾取大金庫』に口座を初めて作って、その後にギルドカードと連携をさせた手数料ってやつですぜ。内訳はこうです。口座開設で 4.5 枚、カード連携で 4.5 枚。合計 9 枚」


御主人様が必死に頭の中と手を使ってお金の計算をしている。

足し算をしているのだが、『搾取大金庫』で預けた全財産は引き算になって表れてしまっている。笑える話だ。


「そ、それだとおかしいよ、マクダフ!だって 4.5+4.5 は 9 でしょ。僕の預けたのは銀貨 19 枚だから、19-9 は 10!だから銀貨は 10 枚ないとおかしいよ。マクダフは大人なのに計算苦手なの……?」


「旦那ぁ……その銀貨 10 枚から預け入れ手数料で 10% がなんと!毎回取られるんですぜ。そのため 10-1 で 9 枚。これが今回、御主人様が入金したお金になります… 」


沈黙。


そして――


「そんなのっておかしいよ!それで誰も銀行に文句も言わないってみんなこんなすごいこと知らないの……?そ、そうか、もしそれを知ってもし文句言いに来たら、預けていたお金が引き出せなくなるのか!なんて奴らだ!!」


御主人様の顔が、面白いくらいに変わっていく。

無理もない。これは、この世界の仕組みを初めて思い知らされる瞬間だ。


子供には少し酷だが――遅かれ早かれ知ることになる。


これで御主人様も、『中立共栄大金庫』を『搾取大金庫』と呼ぶ側に回るだろう。

あのふざけた名前を本気で信じているのは、恩恵を受けている一部の連中だけだ。


「旦那ぁ……この世界は銀行に支配されてるといっても過言ではないんですぜ。とても便利ではあるんですがね……いつか旦那がこの腐れ切った『中立共栄大金庫』をぶっ壊してくれるのを俺は楽しみにしていますぜ……」


「任せてよ、マクダフ!僕はこんなおかしな仕組みの銀行は無くさなくてはいけないと思うよ。あ、だからおっさんも僕に次は銀行で金策だって言ったのか!!今わかったよ。」


トリポリオの旦那とやる次の金策はどうやら銀行らしい。

銀行でどうやって金策するつもりなんだろうか、楽しみだ。

今のこの御主人様なら、あいつらに合わせてもいいだろう。

きっと良い仲間になってくれるはずだ。


今日はこのことで御主人様は興奮して眠れそうにもなさそうだ。

そのため、俺はこのままベッドで眠ることにした。


それと、どうやら御主人様は今日のスキル上げで刀剣スキルが目標の 20 まで上げることができたようだ。

そうなると、もうこの町にいるのも後少しといったところだろうか。

トリポリオの旦那が次にどの町や国に行くのかはまだわからないが、その先でもきっと御主人様と俺のことを楽しませてくれるだ

ろう。

奴隷落ちしたが、この御主人様の元にこれたのだから悪くはなかっただろう。

なんと言っても、俺の負債はすべて御主人様のモノになったのだ。

この負債のために、俺はずっとどの奴隷商館でも酷い扱いだったからな。


「やっぱりだめだ。マクダフ、僕はちょっとそこら辺を走ってくるよ。もう夜遅いから町の外に出るのは怖いけど、町中なら大丈夫だと思う。」


「そうですかい、旦那ぁ……俺はこのままここで眠らせてもらいますぜ。あまり遠くに行ったら危ないですからね。町中と言っても、夜はスラム街の方へは行かない方がいいですぜ。旦那ぁは子供なんですから……」


そう言って御主人様は部屋を飛び出し、夜の町へ走っていった。

まったく、こんな時間に体力作りとは元気なものだ。子供はそれくらいでいい。


……ただ、さっきスラム街には近づくなと言ったが、ちゃんと聞いていたかどうか。

最近は夜になると、あの辺りから物騒な連中が町中に流れてくる――そんな話を、料理屋で耳にしたばかりだ。


まあ、心配しすぎか。

御主人様は子供とはいえ、刀剣スキル 20 だ。


まともにやり合えばともかく、そこらのゴロツキ相手なら――逃げる時間くらいは稼げるはずだ。

【あとがき:現在のステータス】


【スキル】

■武器系

刀剣スキル 18

盾スキル 3

戦闘技術スキル 11


■生産系

料理スキル 13


■その他

鑑定スキル 0.3


【所持金】

671g(銀行預け金:銀貨9枚)


【所持アイテム】

・蛇肉(大量)

・???のスクロール 6枚

・奴隷のマクダフの野郎

・武器破損した剣

・木剣2本


【装備品】

・水トカゲの手袋(呪)




【あとがき:マクダフ様の現在のスキルステータス】


【スキル】

■武器系

刀剣スキル 16

槍スキル 36

盾スキル 21

戦闘技術スキル 20


■生産系

料理スキル 32

薬調合スキル 6


■その他

鑑定スキル 1

ギャンブル


■ 負債

負債:1,000,000g

王法違反及び軍規違反支払い金額 ※1

※1 支払いは金貨または白金貨のみとする

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