第110話 契約を見る男
朝。
僕は机に向かっていた。
「百二十一番。」
さらさら。
「百二十二番。」
さらさら。
券の右下へ。
いつものように名前を書く。
発行者 ジョン
最後に台帳へ同じ番号を書き写す。
「これでよし。」
「旦那ぁ。」
マクダフが覗き込む。
「毎回書くんですか?」
「うん。」
「大変じゃねぇですか?」
「後で分からなくなるからね。」
おっさんが頷く。
「それでいい。」
「商売は帳簿が命だ。」
昼。
商人ギルド。
「確認します。」
受付係は券を見る。
「番号百二十二。」
「台帳一致。」
「本物です。」
旅商人は安心して券を受け取る。
「ありがとう。」
僕は不思議そうに見ていた。
「毎回確認するんですね。」
受付係は笑う。
「信用は、数えるものですから。」
「なるほど。」
ちょっと難しいけど、大事なんだろう。
その頃。
ポーシャ支店。
「失礼します。」
一人の男が静かに部屋へ入った。
黒い外套。
銀縁の眼鏡。
年齢は三十代半ば。
無駄な動きが一切ない。
支店長が立ち上がる。
「ようこそ。」
「王都特別契約調査室の方ですね。」
男は小さく頭を下げた。
「契約監査官、エドガーです。」
部屋の空気が変わる。
「報告書は読みました。」
「どう思われますか。」
エドガーは即答した。
「異常です。」
「どの点が?」
「発行者が無名。」
「資本金がない。」
「なのに信用だけが流通している。」
支店長は苦笑する。
「まさに、その通りです。」
「ですので。」
エドガーは静かに言う。
「本人に会います。」
夕方。
広場。
「ジョン君。」
商人ギルド長が手を振る。
「お客様です。」
「僕?」
振り向く。
黒い外套の男が立っていた。
「初めまして。」
「契約監査官のエドガーと申します。」
「監査官?」
難しい肩書きだ。
「少しお話を伺えますか。」
「もちろん!」
僕は笑顔で答える。
「採掘のお話ですか?」
エドガーは少し間を置いた。
「……いえ。」
「契約のお話です。」
「契約?」
僕は首をかしげる。
「採掘の参加券ですよ?」
その一言で。
エドガーの表情が固まった。
「参加……券?」
「はい!」
「みんなで鉱山を掘るための券です!」
周囲が静まり返る。
支店長は目を閉じる。
商人ギルド長は額を押さえる。
おっさんだけが、空を見上げてつぶやいた。
「……やっぱり、そう答えるよな。」
エドガーは深く息を吸う。
そして、人生で一番難しい仕事が始まったことを悟った。
「この少年は……。」
「本気でそう思っている。」
誰よりも危険なのは、悪意ではない。
純粋な善意なのかもしれない。
そんな考えが、エドガーの頭をよぎった。
その頃、キュ太郎はジョンの懐で丸くなり、小さく鳴いた。
「きゅ。」
まるで、これから始まる騒動を知っているかのように。
【あとがき:現在のステータス】
【スキル】
■武器系
刀剣スキル 20
盾スキル 3
戦闘技術スキル 13
■生産系
料理スキル 13
■その他
鑑定スキル 0.3
【所持金】
171G(銀行預け金:250G(銅貨2枚、半銅貨5枚))
財布は相変わらず軽い。
ジョン
「採掘資金は増えてるのに、僕のお財布は増えないなぁ。」
おっさん
「最初からお前の財布じゃない。」
ジョン
「そうだった。」
【所持アイテム】
???のスクロール 6枚
(今日はキュ太郎が一枚を気にしていた。)
奴隷のマクダフの野郎
(紹介料より手数料の方が高いと学習済み。)
武器破損した剣
???の指輪
(バンステ金策で入手)
ゴブリン(テイム)
ケムトレイル群
立場:保護対象
詳細:不明
キュ太郎
(契約監査官を見ても、なぜか眠そうだった。)
【投資・契約】
中立共栄大金庫投資案件(ポーシャ支店)
元本:金貨10枚
状態:運用中
想定利回り:2倍〜5倍(説明ベース)
詳細:非公開/高リスク
ジョン
「そろそろ増えてる?」
銀行
「契約満了後のお楽しみです。」
おっさん
「その『お楽しみ』が怖い。」
【M資金の現在】
目的
鉱山採掘資金
発行券種
100G券
500G券
1,000G券
5,000G券
利用地域
ポーシャ町
隣町
現在の参加窓口
ジョン
商人ギルド
新しい動き
王都から契約監査官エドガーが到着。
発行台帳と券の照合が「信用」の要となり始める。
現在の用途
ジョン
「採掘資金!」
町人
「夢への出資!」
商人
「決済!」
銀行
「保管!」
両替屋
「手数料!」
旅商人
「運搬!」
裏社会
「紹介!」
王都
「契約監査」
ジョン
「仲間が増えてきた!」
おっさん
「肩書きだけ増えて、本来の目的を知ってる奴が減ってきたな。」
※ジョン個人の所持金に変動はありません。
ジョンの一言
ジョン
「契約って難しいね。でも、ちゃんと読めば大丈夫!」
おっさん
「読むだけじゃ足りん。相手が何を考えてるかも読まないとな。」
マクダフ
「俺は契約書より、手数料の明細を見るようにしますぜ……。」




