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22 ドッグボム04

「はじまりました!」

 春菜が興奮した口調で叫ぶ。

「映像頼む」真田も少し興奮気味に指示を出す。


 春菜がパソコンを操作して中央のテーブルに四ツ谷駅周辺の立体映像を投影する。四ツ谷エリアに飛行させているドローンからの画像をつなぎ合わせて一つの映像に合成して表示を行なっている。

 浜離宮の芳梅亭に集まった品川陣営のメンバーが囲むように集まってその映像に見入る。


 ドローンは四ツ谷駅の陸橋を少し斜め上からのアングルで、新宿通り沿いをゆっくり移動しながら撮影している。路肩に停車している戦車の下から炎が吹き出し爆発を起こす。

 戦車の車体下面の装甲は薄いため、犬爆弾の威力ならひとたまりもない。装甲を貫通し、社内の砲弾が誘爆を起こし、開いたハッチから炎が吹き出す。


「上野の戦車が面白いように吹っ飛んでるわね」

 如月ハニーが興奮気味に身を乗り出す。

 日頃、品川陣営のメンバーは誰もが上野の戦車に苦戦を強いられているので、こうも簡単に戦車が破壊されるのを見るのは小気味が良かった。

「これをやられてたら、うちはひとたまりも無かったですね」

 サンダースが言う。


「しかし、汚いやり方だ」

 銀猫は気に入らないという表情で吐き捨てるように言う。

 上野軍の戦車は大混乱だった。パニックに陥って戦車同士衝突したり、障害物に乗り上げて行動不能になる車両が続出していた。そこへ犬爆弾が殺到する。


 同時に渋谷のヒカリエ要塞の砲兵部隊も砲撃を行なっているようだ。砲弾が着弾して戦車に随伴している歩兵が爆風で吹き飛ばされる。

 最初は歓声を上げて映像を見ていた品川メンバーも、そのあまりにも一方的な虐殺映像に、みないつしか押し黙ってしまっていた。


 その後の二十分間は誰も口をきかなかった。上野陣営の戦車はほとんどが破壊されるか行動不能になり、攻撃を免れた車両は少数だった。

 300両近い戦車がわずか三十分足らずでほぼ壊滅した。


 マップを見ると、四ツ谷駅の東と南西の方向から渋谷陣営の赤い点が津波のように押し寄せている。

 渋谷陣営の主攻撃が開始されていた。


 頃合いを見てこぶ茶が言う。

「みな、聞いてくれ」

 全員が一斉にこぶ茶のほうを見る。

「戦況はここまで、真田さんが立てた計画どおりに推移している。池袋軍の総攻撃と退却、渋谷軍の犬爆弾作戦の発動、上野軍の戦車部隊の損耗・・・」

 全員がゴクリと唾を飲み込んだ、みな緊張で口が渇いている。


「よって、現刻をもって我が軍のスーパーダッシュ作戦を発動する」

 全員が声を出さずにうなずく。みな、高揚する気持ちを必死に抑え込んでいる様子だった。


 真田が立ち上がって発言する。

「私もこれほど大規模に渋谷が犬爆弾を使うとは思っていませんでした。おそらくこの後、渋谷の主力はほとんど無傷で四ツ谷駅を占領するでしょう。ですので、ここからはノーミスで行かなければなりません。みなさん、よろしくお願いします!」


 真田の声は微妙に震えていた。しかしそれがむしろ功を奏して、メンバーに気合いが入った。みな真田の目を見て大きく頷く。

「河合、ブリーフィングたのむ」


 真田に促されて春菜がパソコンを確認しながら答える。メインのスクリーンに広範囲の地図が映し出される。

「四ツ谷駅の上野軍はこれまでに約八割の戦車を喪失しました。一部の部隊は撤退を始めていますが、恐らく反撃可能な戦車は少数だと思われます」

 全員が春菜の説明を聞きながら、食い入るようにマップを見つめている。


「渋谷軍は部隊を二つに分けて四ツ谷駅に進軍しています。グループAは東から、グループBは南西からです」

 マップには渋谷軍の部隊を表す赤い点が、四ツ谷駅の左側と下側に固まって表示されている。

「さらに渋谷駅付近には相当数の予備部隊を展開中です」


 銀猫とサンダースが立ち上がった。

「先に行く」

「行ってきます!」

 二人とも緊張で顔がこわばっている。


「たのむ」

「行ってらっしゃい」

「ご武運を」

 メンバーは口々に声をかけて二人を送り出した。


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