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22 ドッグボム02

 二時間ほどの攻防戦だった。四ツ谷駅は完全に緑一色になり、池袋軍の残存集団は池袋駅前面に撤退して防衛線を張った。四ツ谷駅の新しい主人となった上野軍は駅の四周に堂々の防御陣地を築いた。

 上野軍は、池袋との戦闘でおよそ60両の戦車が破壊されるか行動不能に陥ったが、それでも240両の大部隊であり、さらに上野駅に続く後方の路上には予備の戦車部隊が120両ほど待機している。


 上野の部隊編成は戦車4両を一組とし、それぞれに歩兵を8人ずつ随伴させる基本フォーメーションを取っていた。その各チームが前後左右に連携できるように、網の目のように点々と等間隔に四ツ谷駅を取り囲んで布陣している。

 防衛線を横一列に敷くのではなく、奥行きを持たせて配置することにより、味方間の連携が取りやすくなり敵の攻撃に柔軟に対応できるような布陣だった。


「これは普通に攻撃したらかなり骨が折れるな」ムスタングが呟く。

「はい、普通に攻撃したらですけど」ロキが無表情で答える。


 ムスタングはマップの全貌を眺めた。

 四ツ谷駅の南西の方角に、渋谷陣営の赤い集団が集結しつつあった。

 渋谷陣営の突入部隊は大きく二手に分けられていた。一班は神宮球場で、もう一班は秩父宮ラグビー場で降車し、そこから徒歩による進軍に切り替える。

 前者は信濃町駅を通って四ツ谷駅の西側から接近する。後者は赤坂御用地を通って四ツ谷駅の南側からの進路を取った。


 渋谷軍の長所はそのプレイヤー数にあった。池袋上野のそれぞれ1.5倍、品川陣営の3倍以上のプレイヤーが所属している。しかも練度の高い古参のプレイヤーが多く全員が統率の取れた指揮のもと、互いに連携しながら有機的に集団戦闘を行う。


 部隊には戦車と歩兵戦闘車、合わせて200両ほどの車両が随伴していた。渋谷の戦車の使い方は上野とは優先順位が異なり、あくまで歩兵の援護だ。歩兵の盾となり、歩兵の脅威となる機関銃や戦車を狙って攻撃する。

 上野の歩兵が戦車を守るのに対して、渋谷は戦車が歩兵を守る。


 ムスタングは机に肘をつき、組んだ指の上に顎を乗せてじっとマップを睨みつけた。作戦室にいた渋谷陣営のメンバーが息を殺してムスタングを見守る。

 ムスタングは一呼吸おいて時刻を確認し、おもむろに声を上げた。


「最終確認!」

「各隊、最終確認せよ」ロキが復唱すると、オペレーターが次々に報告する。

「突入隊、突入ポイントに配置完了」

「砲兵中隊、射撃準備完了して待機中」

「予備隊、所定のポイントで待機中」

「ドッグボム、四ツ谷駅に浸透を完了しています」


「他陣営の動きを報告せよ」ロキが追加で報告を促す。

「上野軍は四谷駅のフラグを確保して防御態勢、池袋軍は池袋駅前面に退却して防衛線を構築中、品川軍は動きなしです」


「各部隊、攻撃準備完了しました」ロキがムスタングに報告する。

「ご苦労」

 ムスタングは再度時刻を確認した。18時25分だった。

 そのまま巨体を持ち上げるように立ち上がり、穏やかに宣言した。

「では始めよう」


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