15 ユウラクチョウ03
新橋駅前のSL広場には、品川軍の仮設指揮所のテントが張られていた。
品川陣営のメンバーは一週間後に迫った四ツ谷杯の予備作戦を遂行中だった。
真田が立案した作戦をこぶ茶が陣営全体に周知した結果、品川軍のGIジョージ、ドグラ、ピンクドルフィンの三大チームなど、品川陣営のほとんどのチームが協力を申し出たのだった。
作戦は前日の夜から粛々と開始され、つい先ほどジュリアたちピンクドルフィンのグレネード攻撃により本作戦が発動されていた。
真田と銀猫は本部のテントの中でドローンからの立体映像を覗き込んでいる。炎上する上野陣営の戦車が映し出されている。
銀猫はドグラのチームリーダーだ。体格はがっしりしていて、短髪で眉毛が太くいかにも筋肉バカといった見た目だったが、目が小さいため少し愛嬌のある顔立ちのアバターだ。
「相変わらずジュリアの命中精度はバケモノだな、戦車乗りにとっては悪魔みたいなプレイヤーだよ」
銀猫が小さな目を大きく見開きながら言う。
「このままチクチク攻撃してても勝てちゃうかもしれませんね」春菜が興奮気味に言う。
「まあ、そうもいかんだろ。上野もバカじゃないからすぐに動きがあるはずだ。たぶん強引に力押しで来るはずだ」銀猫は忌々しそうに言う。
銀猫のドグラは何度か有楽町駅の攻略作戦を実行していたが、そのたびに強力な上野戦車の鉄の壁に阻まれていた。
「真田さん、今日は日頃のうっぷんを晴らさせて頂きますよ」
「よろしくお願いします」
その時、日比谷公園の方角から砲弾の爆発音が聞こえた。
「敵の砲撃が始まったみたいだな」銀猫が呟くように言う。
「河合!」
「了解です」
真田に促されて、春菜がノートパソコンを操作する。
「ちょっと待ってください、えっと、えっと、えっと、えっと」
春菜は目にも止まらぬ速さでPCを操作して、ドローン映像を次々に切り替えていく。
「早くしないとジュリアさんたちが吹き飛ばされてしまうぞ」
真田が春菜をせかせる。
「わかってますよ、ジュリアさんが心配なのは分かりましたから少し黙っててください、えっと、えっと」
「これじゃないか?」
ノブナガが横から口を挟む。一枚の映像が前面に表示される。
「あ! ノブナガありがとう、たぶんここです。上野国立美術館の北側の森の中です!」
「クリスタルタルさん、敵のジャミング状態はどうですか?」真田が春菜の横でパソコンを操作している女性プレイヤーに話しかける。
クリスタルタルは今日の作戦で春菜の支援に入ってくれたピンクドルフィンのドローン担当者だ。女性のアバターで紺のスカートに白い軍用ワイシャツ姿だ。頭には赤茶色のベレー帽をかぶっている。
他にもピンクドルフィンのドローン担当が三名オペレーターとしてヘルプに入っており、春菜と五人のチームを組んでいた。
役割は、春菜が主に敵ドローンのハッキングと監視、クリスタルタルが味方ドローンの画像解析を行い、残りの三人がドローンの飛行経路の管理を担当していた。
「ジャミングかかってますけど、いつものAパターンですから解除できそうです。三十秒待ってください」クリスタルタルがPCを操作しながら言う。
「お願いします、河合、映像出しておいてもらえるか」
「はい、どうぞぉ!」
真田の視界にウィンドウが開いて上野公園の上空からの映像が流れる。
「ジャミング、解除しました」
クリスタルタルが真田に報告する。上野公園の木々の間から幾筋かの砲煙が立ち昇っている映像が流れる。
「ここだな」
「ここですね」
「よし、砲兵隊にリンク開始だ」
「了解、ドローンリンク、開始します!」
ドローンリンクはドローンがロックオンした位置情報を味方の火砲の照準器と直接連動させるシステムで、春菜とフォークトが共同で開発した。真田はスマートフォンを取り出すと、浜松町で待機している砲兵隊に電話をかけた。
「敵砲兵隊の位置を確認できました。今、リンク開始しましたので、ピンポイント砲撃お願いします」




