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07 トラノモン01

 ディケロメンバーはジョーのハンヴィーに乗って天王洲を出発した。

 ハンヴィーはアメリカ軍が採用している軍用車両である。定員は六人なので七人乗るとかなり狭かった。


 この日は結局『北』に出撃することになった。

 BAP東京圏の陣営は上野、池袋、渋谷、品川の四つがあり、隣り合う陣営とは戦闘が発生しやすい。

 ディケロが所属する品川陣営から見て『北』には上野陣営が位置している。ちなみに『西』は渋谷陣営だ。


 各陣営にはそれぞれ特徴がある。上野は戦車などの戦闘車両が多く、力攻めでゴリゴリ押してくる戦術だ。池袋は砲が充実していて野砲、対戦車砲、迫撃砲などとにかく大量の砲弾を撃ち込んでくる。さらに、渋谷は歩兵部隊が強力でプレイヤー数も全陣営の中で一番多く練度も高い。


 しかし品川は、はっきり言って何も特徴が無かった。良く言えばバランスが取れているという事だが人数も一番少なく、陣営戦のイベントではほとんど勝てない。強いて言えばドローンによる情報収集やハッキングなどの電子戦で若干優位なくらいだった。


 リアル世界の品川駅は他の陣営の駅に比べるとかなり地味な駅だ。目立ったランドマークも無く、店舗などの数も他に比べて圧倒的に少ない。そしてそもそも街としての特徴的な文化が希薄なのだ。そのため現実世界で品川に愛着を持つ人は少ないので、BAP内でも品川陣営を選ぶプレイヤーが少ないのであろう。


 ハンヴィーは首都高羽田線を通って新橋駅の東口に出た。

 品川軍はいつも北の上野陣営に押され気味で、両陣営の中間地点の東京駅は常に上野軍に占領されている。また、一駅南の有楽町駅も占領されていることが多く、その南の新橋駅が品川陣営にとって北方面の最前線になっていた。


 ジョーは新橋駅北側のガードを抜けて戦闘可能となる山手線管内エリアに入り、駅前のSL広場に車を止めた。

 この日の新橋駅にはかなりのプレイヤーが集まっていた。戦車や装甲車があちこちに並べられている。

 戦闘エリアの山手線環内に入ってから三分間は射撃ができないので、すぐに前線に出るのは危険だった。制限時間が過ぎるまで、味方の多い安全圏内で過ごす必要がある。


 ディケロメンバーは車から降りて各自装備を確認する。春菜とムサシは後部座席から何かの機器を取り出す。

「ツバメ?」

 真田が聞くと春菜が答える。


「はい、これはツバメ型の偵察用ドローン、パロパロ君です!」

 全部で八羽いた。

「なんでツバメなんだ?」

「さあ、なんででしょうね、本体を作ったフォークトさんに聞いてみないと分からないです。でも鳥型のドローンはNPCの鳥と区別がつきにくいから見つかりにくくて優秀なんですよ。作るには高度な機械技術が必要なんですけど」


「なるほど、このゲームでは技術と材料さえあれば新しい機械も作れるって事だな」

「そうなんです、ちなみにこれほど小型なのを持ってるのはうちのチームだけなんですよ。本体が小さければ小さいほど積めるカメラも小型になるから、映す映像も荒くなっちゃうんですけど、そこは私の画像解析プログラムでチョチョイのチョイ、あら不思議5Kテレビ並みの映像の出来上がりです!」


「それは分かったが、この時期ツバメは日本にいないんじゃないか? かなり怪しい気がするが」

「ううっ、いいんです、小さくて飛ぶのも速いからたぶん見分けつかないです、ちゃんとジャミングもするし」

「じゃあ鳥型である必要も無い気もするが」

「細かいなぁ」

 春菜は口を尖らせながらツバメを一羽ずつ空に放っていく。


 すぐ横ではムサシが一抱えもある円盤型の機器をセッティングしていた。何かボタンのようなものを押すと、左右に付いているプロペラが回り始め、ゆっくりと宙に浮かんで空に舞い上がって行った。


「あれは早期警戒用ドローンのどら焼き君です。対ドローン用ドローンともいって、敵のドローンを先に見つけたりジャミング電波を発信したりできるんですよ」

「あれは大きいけど見つかっても大丈夫なのか?」

「どら焼き君は強出力のセンサーを積んでいて遠くまで探知できるので、後方の安全な空に飛ばしておきます。いちおう常に移動させておかないとスナイパーに狙撃されちゃったりしますけど」


 広場にたむろしていた一団が声をかけてきた。

「おう、ディケロじゃないか」

「やっぱりドグラか、ずいぶん戦車が多いなって思ってたよ。今日は何の祭りだい、何かの作戦かい?」ジョーが応対する。

「ああ、いっちょ気合い入れて有楽町取り返そうって事になってな、今集合かけてるところなんだわ」

「そっか、よろしく頼むわ、有楽町口使えるとなにかと便利だからな」


「ディケロも参加するかい? やるならリーダーに話通すぜ、参戦してもらえると心強い。ちなみにハニーんとこも来ることになってる」

「悪い、今日はやめとくわ、新人の初陣だから手頃な相手探すわ」

「そっか残念、また今度な」

「おう、また誘ってくれ」


「ドグラは品川陣営でニ番目に大きいチームなんです、メンバーは全部で三百人くらいいるんですよ」春菜が解説する。

「しかも課金が在籍のルールになっていて、毎月の課金ノルマを超えないと除名されちゃうんですって。私みたいな貧乏プレイヤーは一生入れないです」

 ジョーたちはドグラの男たちに手を振って別れ、再びハンヴィーに乗り込んだ。


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