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ジョニトリー!  作者: 夜鷹亜目
ジョニトリー、風雲急を告げる!
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第四十話

「いらっしゃいませ、ジョニトリーへようこそ。お二人様でしょうか? はい、かしこまりました、それではお席の方へご案内いたします」


 ジョニトリーでの勤務日。夏休みに入ってからは昼からも勤務もしているが、当初は十二時からの一時間は常にウェイティングがかかっていた。が、今日は客席にパラパラと空きが出ていて、すんなりと案内が出来ている。


 それにいつもであればフロアーは四人体制で勤務しているのだが、今日は三人。俺と獅々田さんと立木見さんだ。しかも立木見さんはセントラルキッチンから配送されてきた食材を冷蔵庫などにしまうためキッチンに行っている。つまりフロアー勤務は実質二人のみ。それでも難なく出来てしまっているのは、俺が仕事に慣れたから……って訳ではない。


「今日も客足は戻ってないね」


 案内をし終えてレジ前に立つ俺に、獅々田さんが話しかけてきた。

 先日の一件があって俺は彼女に対して違和感のようなものを覚えていたが、今日はすこぶる通常運転だ。少なくとも勤務中は普段通りの獅々田さんである。


「そうですね。やっぱりフライアーズと晴れ晴れマリオに流れちゃってるんですかね?」

「それはあるだろうね。ただ、もう一つ気になることがあるんだよね」

「気になること?」


 俺がオウム返しすると、獅々田さんは周りを気にしながら声を潜めて告げた。


「SNSでここの悪評を書いているアカウントがあるの」

「実際に何か不満があって書いてるだけでは?」


 俺はSNSとか見る専だから分からないが、気になることがあったら書きたくなる人っているだろうし。


「その可能性は勿論ある。でも、実態にそぐわないの」

「ん? 来店していないにも関わらず悪評だけ書いてるとかですか?」

「まさしくその通り。実際、そのアカウントが料理の写真と一緒にここの悪評を投稿してたんだけど、料理の写真との辻褄が合わないんだよね」

「えーと、どういうことですか?」


 俺は阿呆みたいに首を傾げる。


「ごめんなさい、もう少し詳細に話すね。そのアカウントが上げていた悪評というのが、お昼に差し込みの麵料理を頼んだけど、異物の混入があって作り直しを要求したら断られたって内容だったの。それで一緒に上げられていた写真にはジョニトリーで扱っている料理の皿の縁に、日付がラベリングされたシールが置かれていたの」

「あー、食材の使用期限を打ち込むシールですか。あれって結構混入しやすそうですもんね。でもわざわざSNSに上げなくても良いでしょうし、作り直しも断るまでも無かったんじゃないですか?」


 我ながらかなり公平な返答をしたつもりだったが、獅々田さんは首を横に振った。


「そうじゃないの。そもそもその差し込みメニューをここでは『まだ』提供していなかったのよ、そのアカウントが投稿した時には」

「まだ、ですか?」

「ええ。ここってフランチャイズでしょ? 色々な兼ね合いもあって直営店よりも半月ほど遅れてメニュー改定されるの。だから直営店ではその当時差し込みメニューとして導入されていた料理ではあるけど、フランチャイズのここではまだ未導入の差し込みメニューだったの。なのに何故かそのアカウントはここを名指ししている。辻褄が合わないでしょう?」

「それはそうですね」

「そう。それにもう一つ辻褄が合わない事があって、混入していたとして上げられていた日付のシールが、少なくとも私たちの店舗で扱っているものではなかったの」

「ええ? それなら明らかにでっち上げじゃないですか」

「うん。でも他のジョニトリーでは使われているシールなの。だからもしかしたら他の店舗と間違えてここの悪評を書いた可能性がある。というか、愛猫さんが従業員に聞き取り調査したら誰もそんなお客様はいなかったって言ってるらしいし、投稿者の勘違いなのかも」


 なるほど。そう考えるのが妥当だろう。俺も納得だ。本当に迷惑な話ではあるが、勘違いなら仕方がない。

 だが獅々田さんは浮かない表情のままだ。


「何か気にかかる事があるんですか?」


 俺が尋ねると、獅々田さんは頷いた。


「その投稿者なんだけど、インフルエンサーでね。所謂外食系インフルエンサー。フォロワーの数も多くて、飲食店の感想を実際に来店して忌憚なく述べるっていうアカウントらしいの。それで日付のシールが混入していたっていうのも、愛猫さんが言うにはネットニュースで取り上げられていたらしくて」

「結構大事になってるんですか?」

「今はまだそうでもないと思う。ただ、もしもこの先何か問題が起きたら、それを火種にして大炎上するかも……って、愛猫さんも言ってたわ」


 大炎上……怖い怖い。

 けどここで問題なんて起きようはずもない。だって皆優しくて、誠実で、問題を起こしそうな人間なんて一人もいな――。


「ん? どうしたの太田さん? 顔色が良くないけど」

「い、いえ。なんでしょう、何か嫌な予感めいたものを感じまして。でも多分気のせいですね」

「?」


 そ、そうだよな。問題起こしそうな人間なんていないよな。このジョニトリーに。例えば世間に知られたらまずい人間が働いてるとか、そんなのまさかいるはずないよ。ははは……。

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