4 冒険
新しい不思議空間をレイナと黒猫で探すことにした。
黒猫は額の目を閉じればただの野良猫に見えるので、人に見られても問題ない。
レイナは魔法の存在を感知して木造の家を見つけたが、黒猫はさらに鼻が利くのか人気のない雑木林に潜む洞窟を見つけた。
早速ウーサと黒猫を伴って入ると、そこには草原が広がっていた。
穴の時のように動く草が練り歩いていることは無い。
一見普通の草原のように見えるが、所々小さな穴が開いていて中にはげっ歯類の小さな動物たちが住んでいた。
小さな動物たちはレイナ達を見つけると、穴から飛び出して素早い動きで攻撃してきた。
黒猫は本能でげっ歯類の首に噛みつき、ウーサは角で刺し殺し、レイナは火魔法で焼き殺した。
一瞬で侵入者に制圧されたげっ歯類たちは形勢が不利だと気付くと慌てて穴に戻り、身を隠した。
しかし、ウーサが小さくなって穴を突き進み、慌てて逃げだしたげっ歯類たちが穴から出た所を黒猫が仕留め、レイナは穴に火を入れて炙り殺した。
げっ歯類たちを倒し尽くすといつの間にか奥に進む道が出来ていた。
「新しい道が出来るのは主がしているの?」
「そうだろうね。この場所は主が作っている訳だから、このげっ歯類たちも主が作ったことになる。それを僕たちが倒し尽くしたからもっと強い生物で対抗しようとしてるんだろう」
だからあの穴はどんどん深くなって強い不思議植物が出てきたわけだ。
次に出てきたのはイタチに似た、細長い胴体を持つ動物だった。
彼らは草むらに潜みながら素早く移動して草陰からレイナ達を襲ってきた。
スピードが速くてさすがに黒猫もイタチ似の動物に追い付けない。
立往生した一人と二匹だったが、レイナが周囲の草を焼き払い見晴らしを良くした所で、イタチ似の動物の姿が見えてから火球を打ち込んで仕留めた。
二匹も慣れてきたのか黒猫はスピードに追い付き、ウーサは飛び跳ねて倒せるようになっていた。
穴にいた不思議植物の時から感じていたが不思議生物を倒せば倒すほど、身体能力は増し、魔法の力は大きなっていく。驚きと共に楽しさを齎してくれていた。
どんどん不思議生物たちを倒した一人と二匹は、とうとう主と思われる雑木林の中に佇む狸のような動物を見つける。しかし狸にしては鼻が長くて耳がよく見えない。
狸似の動物はレイナたちを鋭く睨みつけてウヴゥと唸ると襲い掛かってきた。
「私たちの友だちになりませんかー」
「無駄だと思うよ。奴に僕たちの言葉は分からないだろう」
レイナは声を掛けたが黒猫に言う通り狸似の主は攻撃を止める様子が見られない。
しょうがないので主を倒すことにした。
黒猫が狸似の主を翻弄してウーサがタイミングよく飛んで突き刺す。レイナが補助として時折火魔法を使うと狸似の主はウーサの角に刺され、毛皮を焼かれて倒れてしまった。
倒した狸似を火葬すると燃えカスから黄色い玉が出てきた。
「これが主の証さ。僕とウーサはすでに持っているからレイナが使いなよ」
レイナが黄色い玉を手に取ると、玉は消えて頭の中から声が聞こえてきた。
「おめでとうございます。あなたは新しいダンジョンマスターになりました。
ダンジョンの再設定と、望む力を選んでください」
「……ここはダンジョンだったの?」
「はい、ここは数多あるダンジョンコアによって作られたダンジョンです。あなたちがダンジョンマスターを倒し、ダンジョンコアを手に入れたことによって新しいダンジョンづくりと力を手に入れることが出来ました」
「あなたは誰? いつからここにいたの?」
「私はダンジョンコアに内臓された伝達機能です。このダンジョンが作成されたのは前ダンジョンマスターの頃からとしか分かりません」
「このダンジョンや力はどうやって与えているの。何で存在している?」
「分かりません。私が出来ることはダンジョンマスターの要求に応えることです」
「……手に入れる新しい力とはどのようなもの?」
「ダンジョンマスターが望む力が現存する魔力量に見合う形で現れます」
「分からないことがたくさんあるけど、とりあえず新しい力を決める。私はこの不思議なことの根幹だと思う魔法を知りたい」
「……、……、……、分かりました。現在の魔力量で付与できる力は魔力感知です。説明がいる場合は私にお声掛けください」
すると、レイナは今まで気づかなかった魔力をダンジョンや自分の身体に感じるようになった。
まもなく、ゴゴゴッと揺れるとレイナと二匹は浮遊感と共にいつの間にか人気のない雑木林に佇んでいた。洞窟があった場所にはもう何もない。
しかし、レイナが頭の中で声を掛けると応える声が聞こえる。
(ねえ、そこにいるの?)
(はい、現在私はあなたの中に存在しています)
レイナはダンジョンコアに内臓された伝達機能のことをアコと名付け、新たに加わった仲間? を引き連れて木造の家に帰った。
レイナは自分のダンジョンをウーサと同様黒猫の木造の家と統合して家の機能向上を望んだ。
アコはレイナの要望によって木造の家の電気、水道、ガス機能その他、置物と化していた家にあった道具を本来の目的で使えるようにした。
やっと人間のレイナにとっても使いやすい家となった。
三つのダンジョンコアを内包したダンジョンと言える木造の家(花畑付き)だが、四者は協議の結果、新たな不思議生物を作ることはしなかった。
それはアコは説明したダンジョンの機能と目的にあった。
ダンジョンコアがいつ、どこから、何故、どうやって現れたのか分からないが魔力が動力であること。たくさん存在していること。ダンジョンマスターが決まるとダンジョンを作り魔物を作り出す。
魔物を作り出し増やすと、魔力も増加してダンジョンはより深く、広大に広がって行く。
ダンジョンの目的は魔力を増やすことで、機能として魔物が存在しているのだ。
では、魔力とは何か? とアコに聞けば、生命が内蔵するエネルギーだと言う。
人間が知らないだけで全ての生き物に存在する。
それをダンジョンは内包する魔物や周囲にいる生物から少量ずつ吸収して運営している。
現在の木造の家は黒猫とウーサが暮らし、レイナが入り浸っている。
生物が少なく魔力が足りないと思われるが、ダンジョンマスターは膨大な魔力を手に入れているので空間を拡大しない限りは維持できるそうだ。
むしろ、他のダンジョンを攻略してダンジョンコアを手に入れた方が効率がいいかもしれない。
そう四者は結論を出して木造の家はそのままで維持して、他のダンジョン攻略に力を注ごうという話になった。
ダンジョンマスターが自分のダンジョンを離れて他のダンジョンを蹂躙する、または他のダンジョンマスターを倒してダンジョンコアを簒奪することは同じダンジョンコアとして嫌じゃないのかと黒猫が人間臭い質問をアコに聞いたが、アコはダンジョンコアの目的は魔力を増やすことであるので問題ないとの実に機械的な答えだった。
それは魔力は生産的でも略奪的にも増えればいいという手段を問わない答えだった。




