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20 夏休み

 夏、誕生日を迎えて16歳になったレイナはハンター証と二輪免許を取得した。


 ハンターの試験は老若男女が出席していて、レイナのような若者もわいわいと友達と一緒に出席している姿が見られた。

 講習を二時間ほど受けた後に簡単な試験が実施され、それに合格すればハンター証が貰える簡単なものだった。


 二輪免許は移動手段を確保するためだ。

 公共機関で行けるダンジョンばかりではない。

 山奥にも行けるバイク免許を二か月掛けて取った。




 夏休みに入るとレイナはロードバイクを買って、キャンプ用品を詰め込み、黒猫とウーサを乗せて未発見のダンジョン探索の旅に出た。


 何も闇雲に旅に出たわけではない。

 レイナの魔力感知を使っているのでダンジョンがあるのは確実だった。

 

 強い日差しと暑さの中、颯爽と風を切るバイクは爽快だった。

 山道脇の木洩れ日でバイクを止めて、身体から吹き出る汗を拭いながら水を飲んでいると、涼しい風が通り過ぎていく。

 煩いセミがそこら中で鳴いていた。


「レイナ、もうそろそろダンジョンに着くかい?」

「うん、この先に大きな魔力を感じる」


 この近辺にダンジョンがある報告はされていない。

 未発見のダンジョンがあると思われる場所にレイナたちは向かっていた。

 



 山道を進むと僅かな田畑と家がある山村に着いた。

 しかし人気は無く、自然に帰る田んぼや廃屋から限界集落だと思われる。

 もしかしたらダンジョンから氾濫した魔物によって人々は逃げてしまったのかもしれない。 


 静かな集落の中をバイクの爆音を響かせながら進み、たどり着いたのは神社だった。

 小さな神社だったが綺麗に掃き清められ、人の手入れがされている。

 神社の御神木だろう数百年の大木のウロからダンジョンに続いていた。


「これは…ハズレかな」

「こんな所にあるのに魔物が氾濫している様子がないのは、誰かが討伐している可能性が高いね」


 神社の周りを見ても魔物の姿や荒らされた形跡はないことから、このダンジョンから魔物が氾濫していないことが分かる。

 では、誰が政府に報告もしないでダンジョンに入っているのか考察していたレイナたちに声をかける者がいた。


「お前さん、ハンターかい?」


 現れたのは犬を連れ、作業服に猟銃を持った初老の男性だ。普通の田舎にありふれた人物だがレイナは彼等に魔力を感じた。


 彼等が神社のダンジョンに入っているのは一目で分かった。

 レイナは彼に自分もハンターだと明かすか逡巡した。

 他人が探索しているダンジョンを攻略するつもりはなかったのだ。


 しかし初老の男性は無言のレイナに対して何かを察したのか、がしがしと頭をかいて苦笑しながら頼んできた。


「お前さんがハンターだと見込んで俺と一緒に魔物退治をしてくれんか?」

「…どうして?」

「説明するから、家に来なさい」


 逡巡するレイナだったが、男性の傍らにいる黒い柴犬が懇願するような目で見つめて来るのに耐えられず、男性の家について行った。




 ***




 男性の家は広い敷地と大きな倉庫と家、軽トラやトラクターが置いてある農家の家だった。

 広い土間で靴を抜き、居間でお茶とお菓子を

貰いながら初老の男性の話を聞いた。


 初老の男性林修造はこの山村に住む農家だ。

 子供は既に独立し、妻には先立たれたが、黒柴犬のゲンと共に細々と田畑を耕し、趣味の狩猟をして老後を過ごしていた。


 しかし、突然魔物の氾濫がこの村を襲った。この村は限界集落で老人ばかりでまともな若者がいない。修造は猟銃を片手にゲンと共に魔物と戦った。

 日本の魔物氾濫が沈静化する頃には、修造は自力で魔物を討伐していた。

 

 その後、政府にダンジョンの報告をすれば良かったのだろうが、村の総意でしなかった。

 小さな村は他人の介入による変化を嫌ったのだ。村の総意が絶対の法だった。


 しかし、元々少なかった人口が魔物氾濫後に減少していく。

 村を出て行った子供たちが孤立無援な村に危機感を感じて、老いた親を呼び寄せ始めたのだ。


 更に人が減った村は、もはや離散かと思われたが、決して村を離れようとしない老人もいた。

 村を離れるぐらいなら魔物に喰い殺されようという頑固な人に修造も付き合うことにした。

 生まれた時から住んでいる村と世話になった人だ、最後まで付き合おうとダンジョンに挑み続けていた。

 

 しかし、段々と魔物が強くなり、修造でも手に負えなくなって来ていた。

 そんなときにレイナたちがダンジョンを見つけてしまった。

 政府に報告されるだろうと諦めていたが、そのような様子はない。むしろ立ち去ろうとするレイナに修造は助けを求めていた。

 若者に助けを求める老人は滑稽に見えるだろうか。しかし、一人戦い続けていた修造も限界を感じていた。

 見栄より即戦力を欲した修造はレイナに頭を下げていた。それだけ切羽詰まっていたのだ。


 レイナは幾分悩んでいたが、修造を助けることにした。

 修造にレイナたちのことを他言無用と約束させて、修造の家に寝泊まりしながらダンジョン攻略することになった。


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