15 警察
レイナが山下と話している内に宿舎の片づけは終わり、ハンターたちは各自解散となった。
後藤と重藤は街の駅までわざわざレイナについてきた。
「レイナちゃん、両親のことは悲しいけど、世の中捨てた物じゃないわ。
あなたにはまだまだ先がある。楽しいことも見つけなさい」
「まだ魔物を倒したくなったらハンターに連絡してくれ。俺たちと一緒に魔物を倒そうぜ」
そう言って二人と別れた。
レイナは二人が立ち去るのを見届けると電車には乗らず、元来た森まで引き返した。
宿舎には未だ警察が捜索を続けていたが、岩場のダンジョンまで来ると人影はなかった。
レイナとウーサが岩場のダンジョンに着くと木影から黒猫がするりと出てきた。
「ダンジョンに潜った人はいる?」
「いいや、昨日からダンジョンに潜った人はいないよ」
「なら、急いでダンジョンを攻略しよう」
レイナはダンジョン入り、魔物を倒しながら黒猫に今朝からの出来事を説明した。
急ぐ理由を黒猫が理解するとさらにスピードを上げてダンジョン攻略を進めた。
黒猫がレイナたちと離れていた理由だが、最初に森に入った時にダンジョンを探すレイナと魔物を倒す黒猫の二手に分かれていた。
気配に敏い黒猫と離れたことでレイナたちは後藤に見つかってしまった。
レイナも最初はしまった! とドジを踏んだと思ったが、彼らがハンターだと知ると実情を知るために潜入する作戦に変更した。
ウーサという魔物がいるのにもう一匹いるとなると、さすがに不審に思われると考え黒猫は森の中に潜伏して貰っていた。
ダンジョンに上手く誘導してくれたのは黒猫の独断だが、彼は常にレイナを見守っていたのだろう。
ダンジョンが見つかってからは、人がいない夜の間に一匹でダンジョンに潜り魔物を倒していた。
勝手の知っている黒猫に先導されて数時間後、レイナたちはダンジョンマスターの許へたどり着いていた。
そこにいたのは大きな黒い角が突きだしたカブトムシだった。
カブトムシは飛びながら角を突き出して攻撃してきた。
黒光りする甲殻は攻撃を防ぎ、空から突進してくる角は固く鋭かった。
ウーサも甲殻に阻まれ突き刺さらない。
黒猫も黒霧を作るが、飛んで吹き飛ばしてしまった。
攻めあぐめる相手に苦戦するが、レイナが水球をカブトムシに当てると嫌って避けようとする。
レイナが水球で牽制しながらウーサと黒猫がちまちまと傷を負わせていく。
ふらついたカブトムシに風の刃を飛ばして薄い羽を切り飛ばした。
地面に落ちたカブトムシは大きくなったウーサと押し相撲をして抑え込んだ所をレイナと黒猫で止めを刺した。
やはり前より魔物やダンジョンマスターは強くなっている。魔法の使い方も身体の固さも上がっている。
カブトムシから黒い玉を取り出し、レイナたちはダンジョンを後にした。
* * *
警察は内田の証言を聞きつけ、自衛隊を引き連れて岩場のダンジョンに赴いていた。
しかし、そこには既にダンジョンの痕跡はなくなっていた。
偽りの証言だったのかと内田に怒りだす警察官の横で、自衛隊の隊服を着ている男達は周囲を観察している。
「これは『ダンジョンマスター』に先を越されたかな? どう思います柏木さん」
「この森の魔物の発生を見てもダンジョンがあったのは確実だろう。周辺の魔力を僅かに感じる」
(ダンジョンマスター?)
内田は聞きなれない言葉に内心首を傾げた。
隊員は内田にも声を掛けてきた。
「ハンターの中に異様に強い者や変わった能力を使う者はいなかったか?」
「……いいえ、私たちのグループにそのような人はいません。協力して魔物を倒していました」
「ふむ…、ハンターにも隠して活動していたのか。全く別の場所から来たのか…」
そう言うと、隊員たちは森の中に入って行った。
ダンジョンが見つからなかったことで内田は長期間拘禁されることになった。
警官は内田にハンターの構成員やダンジョンの所在を執拗に追及したが内田は口を割らなかった。
内田が警察に拘留されたことにハンターたちは憤り、ハンターと政府の確執は深まっていた。
* * *
岩場のダンジョンを手に入れたレイナたちは母親のいる自分達に街に帰って来ていた。
木造の家で寛ぎながら、レイナは山下が作った魔道具を見ていた。
金属製のカードにはレイナの能力が書かれていた。
++++
魔力:2034
魔法:炎、風、水
強化:なし
能力:魔力感知、野菜作成、収納、【空欄】
ダンジョン:木造の家4《穴のダンジョン1、林のダンジョン1、屋上のダンジョン1》、【やくざの事務所1】【岩場のダンジョン2】
++++
魔力量については参考にする人がいないので割愛するが、それ以外の項目が他人の目に触れるのは問題だった。
「分かりやすいけど、ほんと迷惑」
「これは人に見せられないねぇ」
レイナは新しい能力で【偽装】を手に入れ、これによってカードの偽装と他のダンジョンマスターに魔力過多を察知されないようにした。
それにしても驚いたのがダンジョンにレベルのような段階が存在したことだ。
木造の家は現在四つのダンジョンが統合されて快適な空間となっている。
やくざの事務所で作った空間はあれ以来放置して忘れていた。
岩場のダンジョンは中の魔物もダンジョンマスターも強かったからかレベルが2になっている。
ダンジョンも成長して強くなるということだ。
これは今後もダンジョンは成長し続けて魔物も強くなり外に出ていく可能性があると言うことだろうか?
誰かが意図して行っている場合、その誰かの求める目的までは止まらないことになる。
それは文明の破壊か人類滅亡か終焉を意味しているのか、まだ誰にも分からなかった。
レイナは使っていない二つのダンジョンコアを見てダンジョンを作ることを提案した。
ダンジョンに入れないのなら作ってしまおうという考えだ。
使わないのは勿体ないという思いからかもしれない。
皆に提案すると、黒猫は反対、ウーサは賛成、アコは賛成となった。
黒猫はダンジョンの危険性を説いた。
ダンジョン管理が上手く行くとは言えないし。魔物が制御できずに外に出てしまったら取り返しがつかない。
人が中に入って来たら殺してしまうかもしれない。我々にその責任を取れるのかと言った。
それに対してアコはダンジョンの有用性を説いた。
ダンジョンコアであるアコはダンジョン運営についてノウハウがある。
アコに任せれば魔物を外に出すことはない。魔物氾濫の時も我々に反応はなく問題なかった。
ダンジョンを運営して魔物を増やせばマスターであるレイナたちの魔力が増加すると言う恩恵も受ける。
レイナたちが他のダンジョンを攻略してダンジョンを統合していけば最強のダンジョンが完成できる。
中に入った人間の扱いについて、十分アフターサービスはするが力を求めてやってきた以上、リスクが発生するのは許容すべきで運営側に責任を求めることではないと述べた。
二人の意見を聞いたレイナは有用性を取った。
これからは普通の人も力を求めないと生き残れないと思ったからだ。
警察や自衛隊の一部の人間がダンジョンを独占して力を持ち始めている。
それなのに普通の人には危険だからと入らせないのは不公平だと感じた。
彼らの為にもダンジョンは必要なのではないかと思ったのだ。
採決は民主主義に乗っ取った多数決となり、ダンジョンを作ることになった。
皆でどんなダンジョンをどこに作ろうかと悩みながら楽しく話し合った。




