14 魔道具
ハンター達によるダンジョンアタックは続いていて成果を出していた。
身体能力が向上し、更に特殊な能力が使えるようになっていた。
それは一部分を硬化させたり、火を出したりと魔法と呼べるものだった。
ハンターたちは歓喜して魔法の存在を認知するようになった。
レイナはウーサと後藤、重藤、山下と共に上流の川に来ていた。
重藤が夏休みらしいことをしようと誘った中でついてきたのが彼らだった。なおレイナは強制参加である。
「偶には気晴らしもしないと、人間どこで精神の糸が切れるか分からないんだから」
「でも、俺らだけ呑気に川遊びって怒られないですか?」
「内田さんには許可を取ってるもの、私たちのグループは若い子が多いんだから青春は大事よ、青春。でも山下さんも来るとは驚いたわね」
「はぁ、すみません。川なんて行った事がなくて、こんな機会でもないと行けないと思いまして、厚かましくもお誘いに乗ってしまいました」
「いいのよ、多い方が楽しいし、山下さんともお話しできて嬉しいわ」
後藤は釣り竿を持ち込み、重藤はビキニで泳ぐ気マンマンだ。山下は短パンTシャツの普通の服装。レイナはウーサを浅瀬に浸からせて身体を洗っていた。
レイナは真夏の照り付ける太陽の下、川辺の涼しい木陰から足を水につけて寝ころぶと眠気が襲ってきた。
「山下さんってハンターになりそうにない人だけど、何でハンターになったんですか?」
「ああ、母親が魔物に殺されて何も出来なかった自分が許せなかったんです。だからハンターになりました。でも未だに魔物が怖くて情けない次第です。ははっ」
「へぇ、大変だったんですね。俺は無我夢中で魔物から逃げて倒して気が付いたら力を手に入れて、せっかくだから力を使えるハンターになったっす。
あんまり動機とかはないですね。ただ魔物を倒したいってぐらいです」
「あたしなんて、男女関係ない力を手に入れられるっと思ってハンターになったから動機はもっと不純よ。
でも、そんな人もいないとやって行けないでしょ」
「そうですね、僕も動機は様々でいいと思います。ただ目的と手段は間違えないように気を付けたいですね」
大人たちが親睦を深めている間、レイナはウーサと夏の日の昼寝を貪っていた。
ダンジョン攻略はなかなか進まなかった。
魔物も魔法を使うモノが出て来てからは、行く手を阻まれて遅々として進まない。
しかし、魔物を倒してハンターたちの力は増していった。
だが、ある日の朝に宿舎に警察が押し入ってきた。
突然のことでハンターたちは騒然とするが、内田が一喝すると収まった。
睨み合うハンターと警察官の間に内田が入る。
「警察の方がここに何の用です? 私たちは魔物討伐の為に善意の有志としてこの地にいます」
「市民の通報でお前たちが不正にダンジョンに入っているという情報が入った。
不審な集団がダンジョンを使用しているとあっては市民は不安に駆られる。
この集団を解散してダンジョンの場所を教えなさい」
「はぁ!? てめえら警察が魔物を倒しきれてないから俺らが倒してんじゃねえか! 俺らを取り締まる前にお前らは魔物を倒せよ!!」
「魔物討伐は我々も行っている。しかし、君らはダンジョンに不用意に入り魔物を倒しているそうじゃないか。この辺の魔物もそのせいで逃げて来たのではないか」
「酷い言いが掛かりですね。そもそもどこの市民が私たちがダンジョンを見つけたと言ったのです」
「匿名の通報だ。この集団を解散しないと言うなら全員連行するぞ」
ハンター達は警察官の横柄な態度に怒りを覚えている。
警察官はハンターをわざと煽って暴行の現行犯逮捕を狙っているふしがあった。
内田は眉を顰めながら警察官を睨みつけていたが、冷静な態度で応えた。
「…分かりました、この場は解散させます。話は私がしますから皆を拘束するのは止めて下さい」
「そんな! 内田さんこんな奴らの言うことなんて聞く必要ないぜ」
この場の責任者である内田が任意同行することでその場は収まった。なおも言い募る人もいたが、周りが抑えて暴行には至らなかった。
宿所に集まっていた人々は解散の為、帰り支度をしていた。
これではもうダンジョンに潜って探索することは出来ないだろう。
森で魔物を討伐してきた彼らだったが、いなくなった後に魔物が街に降りてこないといいがそれは警察が対応するだろう。
レイナも少ない荷物をまとめていると、隣で後藤と重藤が愚痴をこぼしている。
「あーあぁ、こんな早くに解散だなんて。まだダンジョンに入って探索も進んでないし魔物を倒して強くなれたのになぁ」
「だから警察が来たんでしょう。私たちハンターが力を付けるのを恐れた誰かが見張ってたんじゃない? あわよくばダンジョンまで見つけ出させたのかもね」
「げっ、俺たちが苦労して探したダンジョンを横から掠め取るだなんて狡っ辛い連中ですね。ますます信用ならねぇ」
「あんた、連中のすぐ傍でよくそんな事いえるわねぇ」
後藤と重藤が片付けている横で、山下がこそこそ物陰からレイナを呼んでいる。
レイナが近づくと、小声で何かを手渡してきた。
「僕もダンジョンに潜って魔力が貯まって新しい魔道具が作れるようになりました。これをあなたに渡しておきます。
僕も趣味で作ったので役に立つ物ではないのですが、警察に取られても困るし僕が持っていてもあまり役に立ちません。
本当はハンターの人達に持たせて喜んで貰うために作りました。
おもちゃみたいな物ですが最初の一つはあなたにお渡しします」
山下に手渡されたのは、金属製のカードだった。
メタリックな光沢が光るが特に文字や絵が描かれてはいない。
レイナは訝し気に裏表を見ていると、突然文字が浮き上がってきた。
驚くレイナに山下も少し得意げにカードの魔道具の説明を始めた。
「これは所持者の能力を明記できるカードです。
魔力によって数値化されるようですね。
原理は私にも分かりません。私が手に入れた能力はただ作りたい作れそうと思えば魔力さえあれば作れるようなのです。
ただし、膨大な魔力が必要なので小さな物しか作れません。
ハンターの彼らが持てば魔物討伐後の能力向上や魔力の可視化で意欲が向上して喜んでくれると思ったんです。さしずめ『ハンターカード』でしょうか」
山下の魔道具は驚くべき性能だった。
「……ありがとう、分かりやすくて助かります。すごい魔道具ですね」
レイナが褒めると山下は嬉しそうに照れていた。




