↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界転移した女医ですが、帰りたいのは元の世界だけではなくなりました ~辺境の村から始まる異世界診療記~  作者: 滝内亜依
第5章 王太子妃になったら、スランプになっちゃった。

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

82/105

第八十一話 駆けつける家族

「江理!」

 最初に部屋へ飛び込んできたのは、オジーだった。

 床に横たわる江理の姿を見た瞬間、その顔から血の気が引いた。

「江理、江理!」

「殿下、落ち着いてください」

 アメリアが、震える声ながらも、気丈に声をかけた。

「エイト先生とマイミ様は、もうすぐいらっしゃいます」

「俺は、何をすれば」

「場所を空けていただけますか」

 その時、廊下の向こうから、足音が近づいてきた。

「江理!」

 駆けつけたのは、ミラだった。

 オジーの母であり、かつて自身も病で長く伏せっていた人。

「ミラさん」

 江理が、かすれた声で呼ぶ。

「喋らなくていい」

 ミラは、すぐさま江理のそばに膝をついた。

「大丈夫。大丈夫だからね」

 その声は、震えていたが、不思議と江理の心を落ち着かせた。

 ミラは、江理の手を握り、額の汗を拭った。

「私も、昔、こうして誰かに支えてもらった。今度は、私の番」

 その言葉に、江理の目から、また涙がこぼれた。

 ◇

 ほどなく、エイトとマイミが駆けつけた。

「状況は」

 エイトの声は、医師としての冷静さを保っていた。

「出血があります。意識はありますが、顔色が悪く」

 アメリアが、的確に報告する。

「よくやった」

 エイトは短くそう言うと、すぐに江理の様子を診始めた。

 マイミも、その隣に膝をつく。

「江理ちゃん、聞こえる?」

「うん……」

「大丈夫。私たちがいるから」

 マイミの手が、優しく江理の額に触れた。

 ◇

 部屋の外では、ライリーとマーサが、静かに事態を見守っていた。

「中には、入らないんですか」

 オジーが、不安げに尋ねる。

「今、入っても、俺たちにできることはない」

 ライリーの声は、抑えられていたが、その手は固く握られていた。

「エイトとマイミに任せる。それが、今できる最善だ」

 マーサは、何も言わず、ただ扉の方を見つめていた。

 その横顔には、これまで見たことのない、深い心配の色があった。

 ◇

 部屋の中、ミラは、江理の手を握り続けていた。

「怖いよね」

「……はい」

「分かるよ。私も、怖かった」

 ミラの声には、経験した者だけが持つ、確かな重みがあった。

「でも、一人じゃないから。それだけは、忘れないで」

 江理は、その言葉に、小さく頷いた。

 視界が霞む中、周りにいる人々の気配だけが、はっきりと感じられた。

 オジーの震える手。

 ミラの確かな体温。

 エイトとマイミの、冷静な声。

 扉の外で見守る、ライリーとマーサの気配。

 一人ではなかった。

 その事実だけが、今の江理を、かろうじて繋ぎ止めていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。