↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界転移した女医ですが、帰りたいのは元の世界だけではなくなりました ~辺境の村から始まる異世界診療記~  作者: 滝内亜依
第5章 王太子妃になったら、スランプになっちゃった。

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

72/105

第七十一話 誓いの言葉

 式の朝、江理は鏡の前に立っていた。

「緊張してます?」

 アイリスが、髪を整えながら尋ねる。

「うん、少し」

 正直にそう答えると、アイリスは優しく微笑んだ。

「大丈夫です。私が、ちゃんと綺麗に仕上げますから」

 仕上がった姿を鏡で見て、しばらく声が出なかった。

 深い青の衣装。左手には、あの日からずっと持ち続けてきたサファイアの指輪。

「……こんな日が来るなんて」

「来たんですよ」

 アイリスが、静かに言った。

「異世界に来たばかりのエリーさんを、あの日、村長さんの家に案内したのは私です。あの時は、まさかこんなことになるなんて、思ってもいませんでした」

「私もだよ」

 江理は、鏡越しにアイリスを見た。

「アイリスがいなかったら、私、ここまで来られなかった」

「私こそ」

 アイリスの目に、涙が浮かんだ。

「エリーさんに出会って、私の人生、全部変わりました」

 二人は、しばらく無言で見つめ合ってから、どちらからともなく笑った。

「泣いたら、化粧が崩れます」

「そうだね」

 ◇

 式場となった広間には、多くの人が集まっていた。

 アーサー、セレネ、ルイス、サラ。帝国からの賓客たち。

 イアン、ハンナ、フィン、リアム、マリー。ピーコックとパールの人々。

 マルコ、シリル。そして妖精たちも、天井近くを静かに飛び回っていた。

 正面には、ライリー、マーサ、ミラの姿がある。

 江理は、ゆっくりと歩を進めた。

 一歩ごとに、これまでの日々が頭をよぎる。

 召喚された日の混乱。診療所を始めた朝。城塞での日々。皇宮で聞いた、誰にも言えなかった悩みの数々。そして、建国。

 その全てが、今日この日へ繋がっていた。

 壇上で待っていたのは、正装に身を包んだオジーだった。

「綺麗だ」

 小さく、そう呟くのが聞こえた。

「ありがとう」

 二人は、向かい合った。

 式を執り行うのは、シアン公爵だった。

「誓いの言葉を」

 オジーが、まっすぐ江理を見た。

「俺は、江理を生涯大切にすることを誓う。医者として生きることも、俺の隣にいることも、どちらも尊重する」

 その言葉に、江理は目を見開いた。

 誓いの言葉に、そこまで具体的な約束を入れるとは、思っていなかった。

「江理」

 今度は、江理の番だった。

 これまで積み重ねてきた言葉を、江理は自分の言葉で紡いだ。

「私は、オジーの隣で、これからも医者として生きることを誓います。あなたが困っている人を見過ごせないように、私も同じです。その二つを、両方大事にしていきたいです」

 オジーが、小さく頷いた。

「それでいい」

 二人の手が、重なった。

 広間に、拍手が広がる。

 妖精たちが、歓声を上げながら二人の周りを飛び回った。

『エリー、おめでとう!』

『オジーも、おめでとう!』

 その声に、江理は笑った。

 窓の外には、抜けるような青空が広がっていた。

 帰りたい場所は、今日また一つ、確かな形になった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。