↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界転移した女医ですが、帰りたいのは元の世界だけではなくなりました ~辺境の村から始まる異世界診療記~  作者: 滝内亜依
第5章 王太子妃になったら、スランプになっちゃった。

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

71/105

第七十話 結婚式の準備

 シアンの城は、朝から慌ただしかった。

「衣装の仮縫い、こちらでお願いします」

「花はどちらに?」

「式次第の確認が、まだ済んでいません」

 行き交う人々の声に、江理は少し呆然としながら立っていた。

「……こんなに、大掛かりになるんですね」

「王太子の婚礼だからね」

 マーサが、呆れたように笑った。

「あんたが思ってるより、ずっと大きな話なんだよ」

 衣装合わせの部屋では、アイリスが真剣な顔で布地を選んでいた。

「エリーさん、こっちの色はどうですか」

「アイリスがそう言うなら、任せる」

「駄目です、自分でちゃんと選んでください」

 叱られて、江理は苦笑した。

 結局、選んだのは、深い青の生地だった。

「これ、サファイアと同じ色みたいですね」

 アイリスがそう言うと、江理は自分の左手を見た。

 あの日、オジーから渡された指輪が、変わらずそこにあった。

 ◇

「式次第だが」

 執務室では、ライリーとエイトが、山のような書類を前に話し合っていた。

「帝国からの賓客もお招きする。アーサー陛下、セレネ様、ルイス殿下、サラ様」

「マルコさんも、呼びたいです」

 江理がそう申し出ると、ライリーは頷いた。

「もちろんだ。あの男には世話になっている」

「シリルさんも」

「あの召喚士か」

 ライリーは、少し考えてから頷いた。

「呼んでやれ。文句を言う理由もない」

 招待客の名前が、一つずつ紙に書き加えられていく。

 村の人たちの名前もあった。イアン、ハンナ、フィン、そしてパール、カナリ、アガットの領主たち。

「こんなに大勢……」

 江理は、その名簿を見て、改めて実感した。

 この結婚は、江理一人のものではない。

 多くの人たちが、それぞれの立場で関わり、支えてくれている。

 ◇

 夕方、庭でオジーと二人になった時間があった。

「準備、大変か」

「うん。想像してた何倍も」

「悪かったな、大事にしすぎて」

「ううん」

 江理は、首を振った。

「これだけたくさんの人が関わってくれるのって、なんか、ありがたいなって思う」

 オジーは、少し照れたように視線を逸らした。

「俺も、緊張してる」

「そうなの?」

「当たり前だろ。国中が見てるんだぞ」

 その言葉に、江理は少し笑ってしまった。

「オジーでも緊張するんだ」

「するに決まってる」

 むきになったその様子に、江理は懐かしさを覚えた。

 17歳だった頃と、変わらない部分も、まだ残っている。

「江理」

「うん」

「その日を、楽しみにしてる」

「私も」

 二人の間に、穏やかな沈黙が流れた。

 城の窓には、準備に追われる人々の灯りが、いくつも点っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。