↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界転移した女医ですが、帰りたいのは元の世界だけではなくなりました ~辺境の村から始まる異世界診療記~  作者: 滝内亜依
第4章 いつのまにか、国づくりまで始まっちゃった。

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

68/105

第六十七話 気づいてしまった気持ち

 十八歳の誕生日から数日、江理はなかなか眠れない夜を過ごしていた。

 寝台に横になったまま、天井をぼんやり眺める。

 もう、「まだ十七歳だから」という理由は使えない。それなのに、肝心なことが、まだ自分の中で言葉になっていない。

 ――私は、オジーのこと、どう思ってるんだろう。

 考えようとすると、思い浮かぶのは、いつも小さな場面ばかりだ。

 視察から帰ってきたオジーが、疲れた顔で笑ったこと。

 失敗を認めて、それでも次の日には立て直していたこと。

 誕生日の夜、庭で「待つのは得意になった」と言った、少し照れたような声。

 その一つひとつを思い出すたび、胸の奥が、じんわりと温かくなる。

 ――これは、何だろう。

 弟のように思っていたはずだ。危なっかしくて、目が離せなくて、だから気にかけていただけだと思っていた。

 でも、最近は違う。

 オジーが他の誰かと親しげに話しているのを見ると、少しだけ落ち着かない気分になる。

 視察で数日会えないと、必要以上にその日を指折り数えている自分がいる。

 これは、弟に対する感情ではない。


 ◇


 翌朝、診療所の帰り道で、マイミに声をかけられた。

「江理ちゃん、なんか顔つき変わったね」

「そう?」

「うん。何か、吹っ切れたみたいな」

 少し迷ってから、昨夜のことを話す。

 黙って最後まで聞いてから、マイミが呆れたように笑った。

「それ、とっくに好きになってたってことじゃない」

「……そうなのかな」

「そうだよ。周りは、とっくに気づいてたと思うけど」

「え、そうなの?」

「うん。江理ちゃんだけ、気づいてなかった」

 その一言に、少し恥ずかしくなる。

「私、鈍いんだね」

「医者としては鋭いのにね」

 からかうように、マイミが言う。

「まあ、遅くても、気づけたならよかったじゃない」


 ◇


 その夜、江理はオジーを庭へ呼び出した。

「話が、あります」

「なんだ、改まって」

「ずっと考えてた。オジーのこと、弟みたいに思ってるだけだって」

「……うん」

「でも、違った」

 まっすぐ、オジーを見た。

「いつの間にか、好きになってた」

 その一言に、オジーが息を呑む気配がした。

「本当か」

「本当」

 頷いた。

「だから、ちゃんと考えて出した答え。私、オジーのこと好き」

 しばらく、何も返ってこなかった。

 それから、深く息を吐き、目元を手で覆う。

「……泣くほど?」

「うるさい」

 声は震えていたが、そこには確かな喜びが滲んでいる。

「十七の頃から、ずっと待ってたんだ」

「知ってる」

「待った甲斐、あったな」

 小さく笑った。

「これから、色々考えなきゃいけないこともあるけど」

「一緒に考える」

 まっすぐ、オジーが言う。

「一人で全部背負おうとするなよ」

 その言葉に、改めて実感した。

 これは、誰かに言われたからでも、流れに任せたからでもない。

 自分の意思で気づいた気持ちだ。

 夜空の下、二人は静かに、その気持ちを分かち合っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。