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久遠の約束~アヤカシの末裔・外伝2~  作者: 遠野まみみ


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6・覚醒

「弱っちいなぁ。いつかも山でオレにやられたよねぇ。霧島。

外見に騙されちゃうなんて、単純すぎるよ。うひゃひゃ」


笑い声の方を見ると、弟の樹が弓を構えて立っていた。

「どうして?」

「どうしてって、姉さま。鬼と仲良くしたらダメだ…。あれ?あれ?」

樹の頭部から皮がずれて顔のパーツが歪んでいく。


「またずれちゃったよ。大きさが合わないかぁ」もぞもぞと

樹が皮を脱ごうとしている。

「…逃げろ」

息も絶え絶えの霧島が自分を抱く此花このはなの着物を掴んだ。

「ヤツは人間の皮を被っている…羅刹らせつだ。逃げろ」


だってあれは…あれは弟…と思う此花の目の前で、

弟の樹だった者は皮を脱いで少女の姿になった。


いつか村で「怖いよ」と言い、樹が家まで送った少女。


「あの男の子、美味しかったよぉ。 皮をもらってあの子のフリをしても

誰も気が付かなくて面白かった。ねえ、姉さまぁ」と、うひゃひゃと笑った。


「!!!!」

気が遠くなりそうだった。


何が何だか理解が追い付かない。 理解したくなかった。

ただ、霧島が突き飛ばさなければ、わたしも矢に射抜かれていた。

わたしを助けて霧島は今、死にかけている。

それだけはわかる。


「どうか、どうか彼を助けて。代わりが必要でしたら、

わたしの命を捧げますから」

此花がそう思った瞬間、何かが此花の額の奥を掴んだ…ような感覚がした。


    ドックン


霧島を抱いて祈る此花の身体が眩しいくらいに輝いた。


突き刺さった矢が溶けるように消えていく。

傷がみるみる塞がって、霧島は目を開けた。


「霧島が生き返った。すげー。その娘の力、欲しい。

喰ってオレのものにする」


同時に、村の末裔の者たちが此花を追いかけてここまで来た。

「そいつが羅刹です」

此花が少女を指さすと「違うよ。えーん」と羅刹は泣き出した。


「こんな子供が人喰いだと?」

羅刹は一瞬足を止めた男の一人に飛び掛かって、首を喰いちぎる。

「うあああ」

次々にやられて、20人ほどいた仲間は半分になった。


「樹が喰われました。そこにある皮が…弟です」

足元に転がる皮を見て、男たちは後ずさりした。


「ねえ、喰わせて。姉さまのその能力ちょうだい」

──気持ちが悪い。「姉さま」と言われてゾッとした。

   

ズザッ


羅刹が此花に飛び掛かろうとした時、鈍い音がして羅刹の右腕が飛んだ。

霧島が太刀を抜いて構えている。

「何だよ、くそっ。鬼は腕力勝負じゃねぇの?」

落とされた腕を持って、羅刹は逃げようとキョロキョロしている。


「腕を落とされても何ともないのか? 此花、離れていろ」

霧島は羅刹に斬りかかるが、全てよけられてしまう。


同じ鬼族のはずなのに、霧島とは明らかに違う。

あれはただのアヤカシではない。化け物だわ。

どうしたらいい?どうしたら弟を殺したあいつを倒せる?

考えるが、何も思い浮かばない此花だった。


末裔の男たちも弓や刀を構えたまま、手が出せない。


ふと、羽音がして強風が吹いて羅刹がよろめいた。


「天城さまより賜った我の土地で何を騒いでいる?

我は万三郎ばんざぶろう。この山の守りじゃ」

烏天狗が不愉快そうに上空から見下ろしている。


「ヤツは人喰いの鬼・羅刹です。できればお力をお貸しいただきたい。

わたしは霧島。西の山から来ました」

「おお、その声は昨日の若いのか。承知した」


「きゃあああああ」

そんな会話をしている隙に、羅刹は人間に襲いかかった。

後方にいた楓に嚙みついて、血をすする。

「楓さんっ」


楓を助けなければ。罪滅ぼしをしなければ。

駆け寄ろうとしたところを、末裔たちの矢が飛んで、うまく羅刹が楓から離れた。

同時に霧島と万三郎の太刀が羅刹を捕らえるが

もう一息のところで羅刹は素早い動きでことごとくよけてしまう。


「楓さん、しっかり」

楓の首の傷を手でふさいで出血が止まるように集中すると

先ほど感じた額の奥を掴まれる感じがして、楓の傷が見る間にふさがっていった。

「すごい!なんて速さで治るんだ」末裔の男が声をあげた。


「目が開かない。血が足りなくてクラクラする。身体の中の血を増やして。

今の此花ならできる」

そう言われて、此花は再び集中した。

徐々に楓の顔色が良くなって、やがて目を開けた。


「ありがと。怪我人の手当をするわよ。わたしは左側。此花は右を」

「は…はい」

仲間として認められた。そう思ったが、何か複雑だった。


その間にも、羅刹との闘いは続いていた。

木々の間を飛び回って、霧島も万三郎も手を焼いている。


ふと、此花は羅刹が特定の木を避けていることに気が付いた。

ひいらぎの木…。

「霧島、羅刹は柊を避けています」


その声を聞いた末裔の者が柊の葉を何枚か集めて矢に巻き付けた。

「ダメ元で、やってみる」と、羅刹めがけて矢を放った。


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