巡る季節と木彫りのクリスマスプレゼント
悲しみは、簡単には消えない。
それでも、泣いてばかりだった時間の中に、少しずつ日常は増えていく。
今回は、雨宮家が家族になっていくまでの話です。
…それからだ
この家に、居るようになったのは…
10年…いや、
それ以上の時間を、
雨宮雫、あめ、サンタは過ごすことになった…
季節は、何度も巡った。
最初の冬。
あめは、夜になるとよく泣いた。
「パパ……」
小さな声で、何度も。
そのたびに、雫はあめを抱きしめた。
少し離れた場所で、サンタはただ静かに見守っていた。
目が合うと、雫に小さく微笑む。
眠っているあいだは、サンタがそっとあめの手を握った。
それが、せめて自分にできることだと思ったからだ。
ときどき、雫とあめが泣き疲れて眠った夜には、《静寂のブリーズ》をそっと重ねた。
春。
あめは、だいぶ笑うようになった。
庭に咲いた小さな花を見つけて、
「これ、パパにあげる」
そう言って、空へ向かって手を伸ばした。
サンタはその姿を見て、短く言った。
「……きっと、喜ぶ」
その言葉に雫も目を細くして微笑んだ
夏。
港の公園には、もう行かなかった。
代わりに、海の見える少し離れた丘へ行った。
風が強くて、あめはよく転んだ。
それでも泣かずに、けらけら笑った。
雫も、つられるようによく笑った。
あめのまっすぐで気持ちのいい笑顔は、きっと雫に似たのだろうと、サンタは思った。
秋。
落ち葉を集めて、焼き芋をした。
「あつっ!」
「ふーふーしてから食べなさい」
そんな何気ないやり取りが、少しずつ増えていく。
あめは食いしん坊のくせに、焼き芋そのものより落ち葉拾いのほうが楽しそうだった。
そんなあめを追いかける雫。
その様子を、少し離れて眺めるサンタ。
その風景は、いつの間にか当たり前になっていた。
冬。
「サンタさん、今年もくる?」
ソファーに腰をかけるサンタの膝の上に頭を乗せて見上げるあめがそう聞いた。
「もちろん!」
サンタはそう答えた。
その夜。
誰にも気づかれないように、枕元へ小さな贈り物が置かれた。
手彫りの馬の飾り。
小さな天使の翼。
どれも、少しだけれど幸せへの願いと命を守る天使の《力》が練り込まれていた。
そして、それをあめが喜んでくれるから、雨宮家のクリスマスには、いつしか木彫りの飾りが並ぶようになっていた。
二年目、三年目と、時間は流れた。
雫も、あめも、泣くことは無くなった。
五年目。
「ねえ、サンタさん」
「ん?」
「サンタさん、欲しいものある?」
サンタは少しだけ目を閉じた。
「……いや、ないかな」
その年、あめは雫と一緒に焼いたクッキーをサンタに渡した。
サンタは返すように、月が微笑んでいる木彫りの飾りを作った。
七年目。
雫もあめも、父親の話を口にすることはほぼ無くなった
もちろん、忘れたわけじゃない。
失った大切な人は、消えたりしない。
それでも二人は、ちゃんと前を向いていた!
ここまで読んでいただき、ありがとうございます!
今回は大きな事件ではなく、ただ季節が巡っていく話でした。
でも、この何気ない時間こそ、サンタさんが100年以上手にできなかったものなんだと思っています。
泣いて、
手を握って、
笑って、
思いやって、
焼き芋して、
クッキーを焼いて。
そういう普通の日々が、少しずつ三人を家族にしていった。
そして、木彫りの飾り。
二章でも少し出ていた雨宮家のクリスマスの原点です。
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《なおき達の物語》とも、ゆっくり繋がっていきます。




