クリスマスに呼ばれた名前
二章で出てきた子が登場します!!今回は、その始まりの話です。
なおき達と出会うより、ずっと前。
まだサタンが日本に来たばかり…本当にひとりだった頃。
クリスマスの日に始まった、小さな家族の物語です。
「…お亡くなりになりました」
その一言で、すべてが終わった。
「……やだ」
母親の声が崩れる。
「やだ……やだ……やだ……!」
女の子が、泣き出す。
声にならない声。
男も、そこから少し離れた場所に立っていた。
何も、できなかった。
あと、少し。
ほんの、わずかでも早ければ。
(……守れたかもしれない)
その可能性が、胸に刺さる。
ゆっくりと、手を上げる。
《静寂のブリーズ》
やわらかな風が、この親子二人を包む。
荒れ狂っていた心が、
少しずつ、
静かに癒される。
呼吸が整う。
涙は止まらない。
それでも、壊れない程度に、戻ってくる。
その場しのぎの癒しでしかない…でもこの2人には必要な癒しだった
「……少しは落ち着いたかな?」
男は、母親に問いかけた
長い夜だった。
母親は、ぽつりぽつりと話した。
不思議と…その、目の前にいる人に聞いてもらわなければ思いもそのまま置き去りになりそうでとめどなく全てを話していた…
出会い。
結婚。
この街に来た理由。
そしてーー今日。
「……帰るはずだったんです」
「三人で」
その言葉が、胸に残る。
「そうか…」
男が相槌を打つように答えた
やがて。
「……あの」
母親が、顔を上げる。
「ありがとうございました……私は、雨宮雫と申します」
「お名前を、伺っても……?」
「……サタンだ」
一瞬の沈黙。
そのとき。
母親の膝の上で、
うとうとしていた女の子が、ゆっくり顔を上げた。
「……サンタたん」
その声に、
サタンの動きが止まる。
「……おうち、きて」
眠たそうに。
それでも、確かに。
そう、言った。
サタンはハッとした…
その呼び方が、あまりにも自然でーー
まるで、この出会いそのものに意味があったかのようで。
腕の中の温もりと、目の前の孤独が、
静かに、重なった。
「よかったら…」
一度、言葉が揺れる。
それでも、ゆっくりと顔を上げた。
「行くところがなければ家に、来ませんか?」
目の前の存在が何なのか…
でも、その時は布袋ひとつの親切な男を放っておいていいとも雫には思えなかっだのだろう…
サタンは、少しだけ目を細めた。
行く場所はない。
帰る場所もない。
――ただ、そこにいるだけの存在。
「…私なんかでよければ…」
小さく、答えた。
――100年前の、雪の日のクリスマス。
もらった名前。
「サンタ」
それを、また呼ばれた。
――
「君の名前は?」
サンタが女の子に聞いた
「あめ!晴れでもあめ!!」
少女は不安と、でもしっかりキラキラした瞳で言った
「あめ…生命を潤し、静かな時間を思わせる優しい名前だな」
サンタがそう言うと雫は溢れ出す涙と声を抑えきれずまた泣いた
そして、これが全ての始まりだった…
ここまで読んでいただき、本当にありがとうございます!
二章を読んでくださっている方は、「あめ!?」ってなったかもしれません。
実は今回、サンタと雫、そしてあめの始まりを書いていました。
なおき達の物語とは別のようで、ちゃんと繋がっているもう一つの家族の物語。
そして、《サンタたん》という呼び方。
100年前、雪の日にもらった名前を、また呼ばれる瞬間を書きたくて、この話を書きました。
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