表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
95/123

その夜、救えなかった命と…

三章、ここからいよいよ本筋が始まります。


昨日までは、なおき達の時代より、ずっと昔の話を通してまだサンタクロースという存在が、優しい伝説になる前のお話…ひとりの堕天した男が、人間達の中で生きていた頃の物語でした。



そして現代、今回かなり重めです。

でも、この夜が全部の始まりになります!!

冷たい海風が、頬を撫でていた。


港の見える小さな公園。

遠くに並ぶコンテナと、静かに揺れる船の灯り。


まだ夜にはなりきらない空は、

オレンジからゆっくりと黄色へとほどけていく。


その光が、海の上に長く伸びて、

揺れるたびに形を変えていた。


街の喧騒から少し離れたこの場所は、

時間だけが、少しゆっくり流れているみたいだった。


やがてーー


色が、少しずつ沈んでいく。


オレンジが溶けて、

空の端から、淡い紫が滲みはじめる。


昼と夜のあいだ。

どちらにもなりきれない、静かな境目。


控えめなイルミネーションが、ひとつ、またひとつと灯る。


さっきまでの光とは違う、

少しだけ冷たい、でも優しい輝き。


そしてーー


空はゆっくりと、夜へと変わっていく。


――クリスマス当日…


「きれい……」


小さな声が、静けさの中に溶けた。



女の子が柵に手をかけ、海を覗き込む。


「落ちるなよ」


父親が、苦笑しながらその背中を軽く支える。


「大丈夫だよー!」


振り返った笑顔。


その隣で、母親も穏やかに微笑んでいた。


ーー


「そろそろ帰ろうか」


「うん!」


三人で並んで歩き出す。


街灯に照らされた帰り道。

ゆっくりとした足取り。


どこにでもある、ありふれた幸せなクリスマスの夜…


――そのはずだった。



足音が、一つ増えた。



「…え?」


母親が、わずかに振り返る。


その瞬間。


鈍い音。


ドスッ。



一瞬、何が起きたのか分からなかった。


父親の身体が、ぐらりと揺れる。


「あ……?」


視線が落ちる。


腹部に、赤。


刃物だった!



背後に立つ男


目に、意味はない。


怒りも、悲しみも、目的も。


――ただ、そこにいたから…そんな目だった



「きゃー!下がって!」

女の子に向けての母親の必死の悲鳴!


母親の喉が引きつる。


震える声。


だが、小さな女の子は動けない。


ただ、目の前の現実を理解できずに立ち尽くしている。



男は、何も言わずにその場を去った。


逃げるでもなく、焦るでもなく。


ただ、歩いて消えた。



「っ、う…ぅ!」


父親が、その場に崩れ落ちる。


「やだ、…やだ…!」


母親が駆け寄る。


手で押さえる。


だがーー


血は、止まらない。



そのとき。


少し離れた場所に、男はいた。



船を降りたばかりだった。


あてもなく、この街に降り立ったばかり。


ただ、たまたま。


そこに、いた。


「……」


一歩、踏み出す。


状況は一瞬で理解した。


傷。出血。位置。量。


――間に合うか。



(…遅いか)



力が、足りない。


堕天と共に、力は失われた。


かつての力は、もうない。



それでも。



男は、駆け寄った。



「見せて」


母親の手をそっと外す。


その手は、震えていた。



手をかざす。


微かな光。



だがーー


止まらない。



「……くそ」



助けられない。



ほんの少しの光の力で痛みを和らげることしかできない。


それでも、男は手を握り続け離さなかった!



「救急車……!」


母親が震える手で電話をかける。


声がうまく出ない。



「大丈夫……大丈夫だから……!」


誰に向けた言葉か分からないまま、繰り返す。



女の子も、動けない。


ただ、父親の顔を見ていた。


「……パパ?」


男は怯え震える女の子の手と父親の手を一緒に握った…


父親の返事は、ない…



遠くで、サイレンの音。



――


遅い。



ーー


救急車の中。


男は混乱している母親、立ち尽くす子供を放って置けず救急隊員に促されるまま、一緒に救急車に乗り込んだ…



しばらくするとーー


白い光が降りてきた…黄色い光も混じっていた《聖なる導き》


これが来ると判定が覆ることはない…



「連れていくなよ…」


虚しく一瞬響いた…


母親は男を見た…



そして、静寂。



ーーー


病院に着いて処置室に連れて行かれてまもなく…


「…お亡くなりになりました」




今回も読んでいただきありがとうございます。


三章、ついに本筋が始まりました。


今回は、「救えなかった夜」


力を失ったある堕天使が、それでも人の手を離さなかった話です。


ここから、ある少女達に繋がる物語が始まっていきます。


ピンとくる人は分かりますよね!!そう、あの子です!!


もし続きが気になったら、ブクマ・感想・評価で応援してもらえると本当に励みになります!


かなり大事な伏線回収の章になるので、一緒に追いかけてもらえたら嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ