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温もりの記憶

ここまで読んでくださって、本当にありがとうございます!


このお話は、ひとつの区切り――最終回です。


たくさん笑って、少しだけ泣いて、

そしてまた、いつもの日常に戻っていく。


そんな変わらないようで、確かに変わった日々の最後になります。


キャワとの時間。

エルとミニエルの想い。

そして、なおきが繋いだもの。


全部を感じてもらえたら嬉しいです。


それでは――

最後まで、ゆっくり楽しんでいってください。

「キャワ、この間はありがとう!」


「ありがとうー」


ミニエルとエルが、どこか茶化すような調子で声を揃える。

本当に思っているのかどうかは、少し怪しい。


キャワはぷいっと顔を背けた。


「別に!何のこと?」


「まあ……あの話は、なかったってことで!」


そう言ってから、ちらっとエルを見る。


「……私も、言うつもりないし」


少し間を置いて、キャワは肩をすくめた。


「エルはお礼をちゃんと言うの!!」

と、すかさずなおきが口を挟む



「ううっ…キャワ?」


「ん?何?」


「あのままだったら私ヤバかったかも、キャワが来てくれなかったら…だから、、ホント助かりました!ありがとう」


「最初から言えよ!照れてんなよな!!」

とキャワが言う


「お姉ちゃん赤くなってる」


「本当だ!赤!!思った時すぐ言わないからそうなるんだよ不器用か」となおき


「あはは」


ーー



「それでラファリンは帰ったの?」


「うん!みんなによろしくって」


「なんか、なおきに忠誠誓うとか言ってたよ!馬鹿だからあの子」


「キャワ寄りの馬鹿だね」


「おいおい!」


「キャワに失礼!!」


「っていうか、それにしても二人の《愛の力》にはビビったわ」


「あはは」


「愛は無敵なのだよ」



「とか言うあんたもさぁ、こっちの世界に来て結構センチメンタルだったじゃん!」


「そうだったね!」


「私の中のイフリートが…とか言ってね」


「ばっ!……何言って…!」


「キャワ往生際悪いぞー」



「天界と違って下界って全部が軽くて緩いじゃん!」


「封印も来た途端不安定になるんだもん!」


「あはは!!」



横にいたなおきが、キャワの頭をぽんぽんと撫でた。


「ううっ…」


「キャワ照れてる!!」


「好きになるなよ!!」


「ならないわよ!!」


「ならないかぁー」と残念そうななおき。


「ちょっと!?」とエル。


「お姉ちゃんまた怒った!!」


「闇出るかぁー?」


「それは言わないで…」


「あはは」



今日はキャワの大好きなカレーパン、

商店街のお肉屋さんのコロッケ、おにぎりまで並んだ豪華なホームパーティー。


「もちろんメロンソーダもあるからね!シロップと炭酸買ったから!」


ミニエルが嬉しそうに飛び跳ねる。


ちなみにキャワはメロンソーダが初めてで、ミニエルと同じ反応だった。


目をキラキラさせ、

泡をストローで追いかけたり、光にかざしたりしている。



その横でエルは、牛肉コロッケとカレーコロッケを両手に持って交互に食べ比べていた。


「食べさせてない家みたいだからやめてよー」


「交互に食べた方が美味しいのよー」


やれやれという顔でミニエルもカレーパンを食べる。


「あーー辛い!!」


どうやら辛口の方だったらしい。



そんな中、エルがふと口にした。


「キャワ、そろそろ帰るんでしょ?」


「……何だ、知ってたかぁ」


「…まあね」


「うん、分かるね」


なおきもソファで背伸びをしながら言った。


「何で分かるの?」とキャワ。


「最近天界に行ったり来たりしてるでしょ…」


「まあ、確かに」


「帰って欲しくないなぁ…」


「お昼のご飯とか休みのお出かけとか」


「何気によく行ったもんね…」


「そそ、何気にレギュラーメンバーだったよね」


「風の又三郎の時はあの後しばらく怒ってたけどね」


「だって誘ってくれなかったから」


「ま、でも、今だに、自分から行きたいとか食べたいとか言えないよね」


「それな!」


「1ターンめんどいんだよキャワは」


「あはは」


「そこまず直せよな」


みんなでお腹を抱えて笑った…



そしてエルが呆れたように指をさす。


「あんた、編み込みモジモジ触りすぎて両方ボロボロじゃん」


「わかりやすいんだよキャワ」


「モジモジしてるの僕でも分かるからね」


キャワはまた、ほどけかけた編み込みをくるくる触った。



「まあ、近くで生活してみて、なおきの事も、あんた達のことも分かったしさぁ…」


「神様も報告ついでに一度帰ってきなさいって」


「なおきが精霊に懐かれてることには驚いたけどね」


「凄い力だよ」


「大切にしてね」


なぜかミニエルが誇らしそうな顔をしている。



「ってかキャワ偉そうだけど髪ボサボサだからこっちおいで!」


「編み込みしてあげるから」


「うん!」


キャワは、こちらの世界に来てからかなり変わった。


昔の辛い思い出。

イフリートのこと。

それをきっかけに、きっと心が拗れていた。


けれど今は違う。


凛々しくて、よく笑って、楽しそうで、仲間思いで。


「いてて!ミニエル、引っ張らないでよ!」


「うるさい、文句言うなら変な編み方にするから!」


「あはは!!」




「あっ!そうだ!」


なおきが、キャワに小さな袋を差し出した。


「これ、この間クラスメイトとワークショップ行って作ってきたんだけど…思い出にキャワにあげたくて!」


「僕センスないんだけど」


「そそ!なおきのセンス、皆無なんだよね」とミニエル。


エルもこくこく頷く。



「開けてもいい?」


どうぞ」


「何だろう?」


袋を開けた瞬間。


キャワは――


「はっ…!」


顔を手で覆い、

大粒の涙をぽろぽろとこぼした。


「なんで…なん…なのこれ…?」


言葉にならない声で絞り出す。


「なんかキャワにあげたいなぁって…」


「え?、ごめん!もしかしてダメなやつだった?」


ミニエルとエルも首をかしげる。


キャワは首を振って…震える声で言った。


「植物で編んだ鹿の人形……」


「煤になって滅んだ村の女の子が、女神様にあげるって作ってた人形と……同じ…」


「びっくりしちゃって」


「何なのよ、なおきは…」とキャワ



エルがぽつりと言った

「もしかしたら、精霊の力を持ってるなおきの能力なのかもね」


「キャワの精霊と、なおきの精霊がすごく近い種なのかも」


「でもそれって凄いことだよね」


「何千年前の話なのよ」


「それが今繋がってんだよ」


「凄くない?」


キャワは人形を胸に押し付けたまま、嬉しそうに泣いていた。


「なおき、これ一生大切にするから」


みんなが優しい笑顔でキャワを見る…


少し沈黙。



「ひとつ……お願いしてもいい?」


「何?」となおき


キャワは、恐る恐るエルを見る。


そして言った。


「一度でいいから……ギュッとしてほしい」


その言葉に、エルは一瞬だけ目を見開き――


やがて、すべてを受け止めるように優しく静かに頷いた。


なおきはゆっくりと歩み寄り、

椅子に座るキャワの体を、そっと抱きしめる。


温もりが、触れた。


――その瞬間だった。


キャワの体が、びくりと震える。


そして次の瞬間、堰を切ったように――


「……っ、あ……あぁ……っ!!」


子供のような、抑えきれない泣き声が部屋に響いた。


腰にしがみつく指は小さく震え、

まるで離れたら消えてしまうかのように、必死に力を込めている。


(……ああ、そうか)


何千年もの間。

誰にも触れられることなく、誰にも求めることすら許されず――


この温もりを、知らなかったのだ。


キャワは嬉しそうに泣いた

初めて与えられたぬくもりを、確かめるように。


まるで、長い長い孤独が、ようやく終わったかのように。


ーー


「天界に帰ってからもお人形さん大切にするね!」


「大切にする!」


「ちゃんと持って帰るから!」


三回目あたりで、


「もう分かったって!!」


ミニエルとエルが同時に言い出した。


笑い声が部屋に広がる。


キャワは泣きながらも、

少しだけ照れくさそうに笑った!



ーー


天界


「要観測対象、東雲直希の記録です」


静かな報告。



ーーー



新たに玉座に座る《神様》


長い沈黙。


「……そうですか」


その声は、どこか優しかった。


水晶に映るのは、

笑ってパフェを食べる三人の姿。


「楽しそうですね」


ぽつり、と呟く。


その声には、

祝福と、安堵が混じっていた。


ミカエルが首をかしげる。


「お知り合いですか?」


少しの間。


そして神様は、穏やかに目を細める。


「――昔、少しだけね」


夕暮れの光が、水晶に反射する。


そこに映るのは


笑い合う三人の姿。


神は、何も言わない。


ただ静かに――

その光景を見守っていた。


ここまで読んでくれて、本当にありがとうございました!!


まずは一言、ありがとうございました!完結です!!!


でも、この物語は終わりではありません。


今回の最終回で描いたのは、「日常に戻る幸せ」と「繋がった想い」


【5月2日】から

スピンオフ《天界編》〜原初の光と闇と、分かれたもの〜を投稿します!!(全四話)

初回は二話連投します!!


なぜレミエルは堕ちたのか。

なぜ光と闇に分かれたのか。

なぜエルとミニエルが存在するのか。


なおきと出会う前、すべての始まりを描く物語です。


本編を読んでくれた方ほど、刺さる内容になってます。



そしてもう一つ。


最後に出てきた《神様》


気づいた人もいるかもしれませんが…

この先、とても大きな意味を持つ存在になります。


(ここはあえて多くは語りません)


もしこの作品が少しでも良かったと思ってもらえたら、


・ブックマーク

・評価(★)


めちゃくちゃ励みになります!!


正直、この先を本気で広げていきたいと思ってます。



それじゃあ次は――天界で。


5月2日(土)20時10分、20分に連投します!!お楽しみに!!

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