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謝罪の先にあるもの

これは、戦いのあとに残ったものの話。


正しさとか、強さとかじゃなくて…

ただ、人としてどう向き合うか。


そんな、少しだけ静かな回です。

ーー


窓の外、朝日が差し込む。


「さてと!」


なおきがエルの方を見て、いつもの調子で声をかけた。



――その頃。


部屋の外、ベランダ


手すりの上に腰掛けていたのは、ラファエルだった。


その隣には、静かに腕を組むキャワ


朝の光が二人を照らしているのに、

ラファエルの表情だけが、どこか影を落としていた。


「……優しいあなたが」


キャワが、ぽつりと口を開く。


責めるような声ではない。

けれど、逃げ場もない声音だった。


「やり過ぎだね」


その一言に、ラファエルの肩がびくりと揺れる。


言い返す言葉は、出てこなかった



キャワの開いた空間の扉が閉まる前に勝手に下界に降りたこと…


なおきを死んでもおかしくないほど傷つけたこと…


空間に干渉し、歪みを生んだこと。


――そして…


エルを闇に堕としかけたことも含めて、どれも、軽く流していいものじゃない。


「……っ」


唇を噛む。


いつもの余裕なんて、どこにもなかった。


そんなラファエルを見て、キャワは小さく息をつく。


「あなたが優しいのは知ってる」


少しだけ、声が柔らかくなる。


「だからこそ、ちゃんと分かってほしい」


まっすぐに、見つめる。


逃がさないように。


でも――突き放さないように。


「天界の神様には私から伝えた。とにかく、自分がすることはわかるよね?」


ラファエルは、少しだけ視線を落として。


それから、小さく頷いた。


「……うん」


一拍、置いて、



「謝る……ちゃんと」


その声は、少し震えて聞こえた


確かに、自分の意思で出した言葉だった。


キャワは、それを聞いて――


ほんの少しだけ、表情を緩めた。


「うん!今はそれしかない」



責めるためじゃない。


導くための言葉


朝日が、少しだけ強く差し込む。


その光は――


さっきよりも、ほんの少しだけ温かい…




ベランダの扉が、静かに開いた。


「……あのさぁラファリン、ごめんね!」


ひょこっと顔を出したミニエルとエルが、思い切ったように言った。


でも、


言ったあとで、自分でも(あ、軽かったかも)と思ったのか、ほんの少しだけ視線が泳ぐ。


その様子に、ラファエルがはっとする。


「あっ……ち、違う!僕が謝らないといけないのに……!」


慌てて身を乗り出す。


「ごめんなさい!!」


勢いよく頭を下げた。


……沈黙。


朝の風が、ふわりと三人の間を抜けていく。



その空気を、壊すように―


「……ねぇ」


エルが、少しだけ頬を膨らませて言った。


「私達ってさぁ、いつもこんな感じじゃん?」


怒ってるわけでもなく、でも少しだけ、拗ねたみたいな声。


「ケンカしても、すぐごちゃごちゃになってさ」



くすっと、小さく笑う。


「ラファリンに対して私達がした事の方が悪いと思ってる…」


その言葉に、ラファエルは目を瞬かせた。


怒られると思っていたのに…


責められると思っていたのに…


――違った。



エルは、いつも通りだった。


「だからさ」


一歩だけ、近づく。


「ちゃんと謝ってくれたなら、それで終わりでいいよ」


まっすぐに見て、にこっと笑う。


「ってか、謝るの私たちにじゃないしね」


少しだけ、いたずらっぽく。


ラファエルの胸の奥に、じんわりと何かが広がる。


「……そうだね」


小さく、でも今度はしっかりと頷く。


「うん……ありがとう、エル」



「よし!」とミニエルがラファエルの背中を叩いた。



空気を切り替えるように、明るく言う。


その無理やりな明るさが。


逆に、すごく優しかった。



ベランダのヘリを抜ける風が、心地いい。




ーー


「ラファエルさん」


「あ……」


声に振り向く。


なおきが、ゆっくりとベランダに出てきた。


ラファエルは、腰掛けていたヘリから静かに降りる。


少しの間。


目を合わせることすら、怖かった。


――それでも。


「……昨日は、すみませんでした!」


ようやく、絞り出した言葉。


空気が、止まる。


「全然、大丈夫です!」


間を置かず、なおきが答えた。


その即答が、逆に胸に刺さる


「でも……怪我をさせて、大切な物も壊してしまいました…」


視線を落とす


消え入りそうな声


「あはは」


なおきは、少しだけ困ったように笑った


「僕、弱いので」


冗談みたいに言ってから、


「ミニエルが治してくれましたし。本当に大丈夫ですよ」


そう、ちゃんと伝える。


それでも、


「でも…」


ラファエルは顔を上げる。


泣きそうな顔で、なおきを見た。


その目に映るのは、後悔と…自分への嫌悪。


「……許さない方が、いいですか?」


「え…?」


ラファエルは一瞬、言葉を失った。


「いや… 」


戸惑いが、そのまま声に出る。


…その時。


ラファエルは、はっきりと理解していた。


自分が、何をしてしまったのか。


縄張りを守るみたいな、醜い感情。


エルの視線が、なおきに向いていることが、


ただ、苦しかった。


認めたくなくて。


下に見ようとして。


傷つけて。


…全部、自己防衛だった。



「…あはは」


小さく、乾いた笑いが漏れる


「ごめんなさい。ちょっと意地悪しましたね、僕」

なおきが言う…


ラファエルは顔を上げる。


でも、その目はまだ揺れている。



「これで……おあいこ、です」


そして――


なおきは、少しだけ真面目な顔になる。


「でも」


一歩、近づく。



「反省とか、後悔とか、罪悪感とか」


「ラファエルさん、顔に出すぎです」


優しく、でもはっきりと言った…



「そんな人のこと、これ以上怒れないです、僕」


その言葉を聞いた瞬間。


――堪えていたものが、崩れた。


「……っ」


声にならない。


ぐしゃぐしゃに歪んだ顔。


涙だけが、溢れてくる。


謝りたいのに、言葉にならない。


それでも――


なおきは、何も言わずにそれを受け止めた。


責めることもなく。


逸らすこともなく。


ただ、そこに立っている


――その姿が、何より痛かった。


ラファエルは、心の底から思った。


この人を殴り、蹴飛ばしたことを、きっと一生後悔する。


だから次は、


この人を、守る側にいよう…と



ーーー


天界。


静まり返った空間の中。


水晶を見つめる、ひとつの影。


長い沈黙。


「……」


神は、何も言わない。


ただ――


ほんのわずかに、目を細めた。





ラファエルの回でした。


強いキャラほど、こういう《崩れる瞬間》を書きたくなるんですよね(性格悪いですねww)


そして、なおきはやっぱりこういう子です。


優しいけど、甘やかさない。

でもちゃんと受け止める。


だからこそ、周りの人が変わっていくのかもしれませんね!


この関係性、好きな人は絶対ハマりますよねっ!


そしていよいよ――

明日で二章、終わります。


そしてスピンオフへ…


よかったら、ブクマ・評価で応援してもらえると嬉しいです!


【明日、二章最終話】


本気で届けに行きます!!

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