見えないはずの温泉で、大事件
京都の夜。
旅館、温泉、そして――ちょっとした非日常。
四人で過ごす、はじめての「旅の夜」は、ゆっくり静かに始まる…はずでした。
……まあ、そんなわけもなく。
見えないはずの存在と、見えてはいけない状況が重なったとき、なおきの運命はどうなるのか。
温泉回です。
(いろんな意味で)
夕暮れの光が落ち着くころ。
四人は、目的の旅館へとたどり着いた。
木の香りがほんのりと漂う、落ち着いた佇まい。
「わぁ……すごい……」
ミニエルが素直に声を漏らす。
「こういうところ、初めてだね!」
「なんかドキドキするよね!」
なおきも少しだけ緊張したように答えた。
引き戸が開く。
「いらっしゃいませ」
出迎えた仲居さんが、ふと首をかしげる。
「……あの、ご予約は1名様で……?」
一瞬の沈黙。
なおきが言葉に詰まる。
「あー、その……」
ミニエルとエルは当然のように立っている。
キャワは、静かにそこにいる。
「……はい1人です」
「あ、でも4人分食べますので!!」
仲居さんは一瞬だけ考えるような顔をして笑いながら
「……かしこまりました」
にこやかに頭を下げた。
(納得した!?)
なおきは内心でツッコむ。
案内された部屋。
畳の香り。
広めの和室。
「ひろーーーい!!」
ミニエルが勢いよく転がった。
「畳気持ちいい!!」
「はしゃぎすぎ」
エルが言いながらも、やっぱり転がった!
それを見ていたキャワは微笑みながら窓際に立ち、外を見ていた。
庭の石と、静かな灯り。
「……落ち着くね」
その声は、少しだけ柔らかかった。
そしてキャワも転がった!
「でさぁ!」
ミニエルが振り返る。
「温泉行こ!!」
「着いてすぐ入るもんなの?!」
「旅行といえば温泉でしょ!!」
「まあ…それはそうだけど、分かんないから僕」
なおきも苦笑する。
エルは小さく頷いた。
「いいわね」
キャワも言った。
「うん!行きたい」
「僕も行きたい」
「じゃ、行こう!」
大浴場へ向かう廊下。
紺色、黄色、ピンク、水色、好きな浴衣を着ていいらしい!
「あとで着るやつだよね?」
「そうそう」
そんな会話をしながら、それぞれ暖簾の前へ。
「じゃあ後でね」
「のぼせないでよ?」
「そっちこそ」
ーー
なおきは、ゴツゴツした岩の露天風呂の湯に浸かっていた。
「……はぁ……」
思わず声が漏れる。
「やば…めっちゃ気持ちいいわ…」
肩まで沈む。
湯気が立ちのぼる。
そのとき。
――ざぶん。
「ん?」
誰かが入ってくる音。
ふと見ると。
「やっほ」
「キャワ!?」
普通に入ってきた。
「なんで!?」
なおきが焦る
「え?ダメなの?」
キャワがキョトーンとしている
「1人だとつまんないかと思って」
「ありがとう優しいね…っておい!そんな話じゃなくて!」
慌てて視線を逸らす。
(いやいやいや!!)
キャワは全く気にしていない様子で湯に浸かりながら「温泉ってスベスベするね!」なんて言いながら近づいてきた…
「いいお湯だねー」
ザバーン、
立ち上がって「でも熱いやぁ、温泉!」と言いながらなおきの前で仁王立ちになった
「うおおおっ、、〜!!」
なおきは完全に目がグルグルである種パニックである…
一方、女湯では、、
エルは静かに湯に浸かっていた。
「気持ちいいねー!」
ミニエルは完全にリラックス。
「キャワは?」
エルがぽつり。
「え?」
ミニエルがきょとんとする。
「さっきまでいたのにね…」
「あの子アホだからなぁー」
嫌な予感しかしない…
「…あの子、まさか」
二人は同時に立ち上がった。
「なおきー!」
ガラガラと扉が開く。
「なにしてるの!!」
「してない!!」
混乱の中心に、なおき。
キャワは相変わらず落ち着いている。
「来たなーミニエル、エル!」
とキャワが言った
「そういう問題じゃなくて!!」
エルの視線がなおきに向く。
「……見たの?」
「見てない!見てないです!!オッパイ!!」
即答。
「見てるやんけ!!」
「エルさん、ちなみに何をですか?!」
「キャワを見ましたか?」
「あ、キャワさんはこちらにいるので見えてますけど」
「だーかーらー」
ミニエルが口を押さえて笑いをこらえている。
「わたくし美しくて天使のような天使のお身体を拝見いたしました…」
ほっこり幸せそうに赤い…
ついでに若干ニヤついて見えるのは気のせいか…
「ププッ修羅場だ」
ミニエルが吹き出した!!
「笑うな!!」
エルが怒る…
しばらくして。
なんとか落ち着いた四人。
(なおきはぐったりしていた…いや、ほっこりとでも言いましょうか…)
部屋に戻り、浴衣に着替える。
「どう?」
ミニエルがくるっと回る。
「似合う?」
「うん、ミニエルは本当なに着ても可愛いね!」
なおきが素直に答える。
嬉しさいっぱいのミニエル、とびきりの笑顔で飛び跳ねて頭から抱きついてきた。
エルも整った姿で出てくる。
「どう?」
「大人っぽいよ!めちゃめちゃ素敵」
心から思う…
「やった!」
嬉しそうに目を細める。
そのとき、キャワが着替えて隣の部屋から出てきた。
少しだけ、いや、まあまあ、ってか、帯もしていないから、もはや裸で羽織っているだけだ…
「…難しいんだけど、どうなのこれ?」
その一言。
なおきの思考が一瞬止まる。
「え、あ、いや、その…ありがとうございます。」
視線に困る。
エルの眉がぴくっと動いた。
「キャワ?」
エルの静かな声
「あんたはいつもいつも!なんでこうなのよー」
「ちゃんと着なさい」
「えー?じゃ、やってよ!」
すっと近づく。
「ほら、ここ」
そっと整える。
「……ありがと」
キャワは素直に言う。
エルは「いいよ!」と言った
「ってか、前から思ってたけどキャワって2人の妹みたいだよね!」
「キャワは昔から何にもできないんだよー」
「世話が焼けるのよこの子」
「アホだし」
「アホ言うな!!」
「えー?私…そうかなぁー?!」とキャワ
「あんた見た目だけだから」
「うわ!それはひどい!!」
「エル私に誤れよ!!」
「えーなんでよー」
「反省しろ!」
とキャワ
「アンタねぇ!」
「あはは」
今回はとにかく笑いが絶えない
ーー
「おまたせしました。ご夕食をお持ちしました」
襖が開く。
仲居さんが入ってくる…
料理が並べられていく…
一つ、二つ、三つ、、四つ
「…なんかすみません」
なおきがつぶやく。
はたから見ると1人で四人分…
仲居さんは一瞬だけ手を止めた。
「……本日は、豪華な内容となっておりますので食べ応えがありますよ!」
と言うとなおきを試すような笑顔でニッコリ部屋から出ていった。
実際に凄く豪華な料理が並ぶ。
ふわりと出汁の香りが広がった!
「すご……」
ミニエル、即反応。
エルが静かに言う。
「軽く始めるのが京料理らしいわ」
「軽いのにちゃんと美味しい…!」
ミニエルはもう嬉しい
少しずつたくさん並ぶ、小さな料理たち。
キャワがゆっくり口に運ぶ。
「……整ってる」
「おー!」
キャワの一言にみんなが感心した!
「キャワなのに」
「キャワなのにねー」
「私も傷つく心持ってるからな!!」
キャワが箸を止めた。
「……昔さ」
少しだけ視線を落とす。
「こういう時間、必要ないって思ってたんだよね…」
誰も何も言わない。
「でも、」
ふっと笑う。
「凄く美味しい!!」
みんながニッコリした
エルは京都旅行の前に色々調べたらしく、京料理の流れを勉強してきたらしい
「それ焼き物ね!」
フグやブリ、あんこうは秋からの京料理の主役だと教えてくれたり、次は八寸が出るからと前もって説明してくれた!
それをミニエルとキャワがという個性爆発組が聞いていたかは別として…
ミニエルは料理を前に目がキラキラしているし、キャワは全てに嬉しそう、エルが二人の世話を焼こうとしたり…
それぞれが楽しそうに自分の旅を楽しんでいた
食事が終わり、布団が敷かれる。
「ねえ」
ミニエルが笑う。
「まだ寝ないよね?」
エルも小さく笑う。
「当然でしょ」
なおきは嫌な予感しかしない
「……なにする気?」
ミニエルがにやりとした。
キャワが静かに言う。
「……まだ、夜は長いよ」
その言葉に、少しだけわくわくと、少しだけ不穏が混ざった。
旅館回、いかがでしたか!
温泉といえばイベント。
イベントといえばトラブル。
……ということで、しっかり巻き込まれるなおきでした。
キャワの「悪気ゼロ天然」と、
エルの静かな圧、
ミニエルの完全に楽しんでる感じ!
このバランス、個人的にもかなり好きです。
そして後半は、少しだけいつもと違う空気も。
キャワの一言みたいに、
こういう時間って、実はすごく大事なんですよね。
さて――
まだ夜は終わりません。
次回、何が起こるのか。
お楽しみに!
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