見えない手と、ありがとう届いたよ!
今日は、なおきがいない時間の、二人のお話です。
誰にも見えない場所で、誰にも気づかれないまま、
それでも確かに、誰かの役に立っていること。
そんな、小さな優しさの積み重ね。
それが、ふと届いたとき。
少しだけ、2人も世界の見え方が変わるかもしれませんね!
よく晴れた、いつもの商店街。
ミニエルとエルは、なおきが学校に行っているあいだ、よくここを散歩している。
猫とも挨拶やお喋りもできるし、賑やかで活気のある雰囲気。
どこからか漂ってくる、美味しそうな匂い。
それを楽しみながら、なおきと来たときに何を食べるか…
そんな《品定め》をするのが、二人の小さな楽しみだ
「おばちゃん、今日も美味しいコロッケありがとう!!」
「こちらこそありがとね!来週も待ってるから来てね!」
威勢のいいお肉屋のおばちゃんとお客さんのおしゃべりも好き。
「今日も新鮮な野菜入ってるよー。タイムセールで大根もお値打ちだよー!」
「あ、奥さん!昨日の鍋、美味しくできたかい?」
「はい!きのこたくさん入れて、美味しかったです!ありがとうございました!!」
「また、なんでも聞いてねー!」
八百屋のおじさんの声も大きくて好き。
そんなやり取りを聞いているだけで、なんだか楽しくなる。
「今日、鍋もいいよね」
「コロッケも食べたい…」
ショーケースを眺めて、二人は同時によだれを垂らしかけて――
「お腹すいたねー」
「お腹が鳴るよね!」
小さく笑い合った。
「見て見て!あの子!可愛いー」
ミニエルが指をさす。
よちよち歩きの小さな子供が、段差につまずきかけた。
次の瞬間。
ふわり――
見えない風が、そっと体を支える。
「よし!」
ミニエルが小さくガッツポーズ。
「ナイス、ミニエル」
エルがやわらかく笑う。
子供は何事もなかったように、また歩き出す。
それを見届けて――
二人は、顔を見合わせて笑った。
公園。
ボールが転がる。
「あっ!」
小さな子供が、無邪気に追いかけて――
そのまま、車道へ
ちょうどそこへ、トラック。
「危ない!」
とっさにミニエルが風を放つ。
ぐいっ――
見えない力が、子供の体を引き戻す。
だが。
――間に合わない。
「……っ!!」
心臓が、跳ねる。
その瞬間!!
ブレーキ音が響く!!
その瞬間。
『止まって!』
エルの声と同時に、トラックが、ぴたりと静止した。
「大丈夫ですか?!」
運転手が飛び出してくる。
母親も駆け寄る。
「すみません!私が目を離したすきに…!」
「いえ、こちらこそ…!」
何度も頭を下げ合う二人。
子供は、ぽかんとしたまま立ち尽くしている。
やがて――
母親が、ぎゅっと抱きしめた。
「よかった……」
そして、ふと…
辺りを見渡す…
「……今の、なんだったんだろ」
母親が小さく呟いて、ふっと、笑った。
「……魔法みたいだったね」
「まほう?」
子供が見上げる。
「うん」
母親はやさしく頷いた。
「きっと、神様だよ」
その言葉に。
ミニエルとエルは、ぴたりと動きを止めた。
「……ねえ」
母親が言う。
「お礼、言おうか?」
子供がこくんと頷く。
そして――
空に向かって。
大きな声で。
「かみさま、ありがとう!!」
風が、少しだけ揺れた。
優しく撫でるみたいに…
誰もいないはずの空に、確かに何かがあった気がした。
…。
世界の音が、消えたみたいだった。
ミニエルが、ゆっくりエルを見る。
エルも、静かに見返す。
そして――
ふっと、笑った。
「……ほらね」
ミニエルが言う。
「うん」
エルが小さく頷く。
「…ありがとうだって」
その声は、少しだけやわらかかった。
ミニエルが、くすっと笑う。
「神様じゃないけどねっ」
「うん」
エルも笑う。
見えない優しさは、
確かにそこにあって。
そして――
それに気づく誰かが、いる。
ーー
人からありがとうと言われたのはなおき以外初めてだった。
「ただいまー!」
「あ、なおきだ」
「おかえりー!」
ぱたぱたと駆け寄る二人。
「なおき、いつもありがとねー!」
「え?なになに?!肉屋のおばちゃんの真似?!」
「はー?違うよー!なんでよー!!」
「ものまねかと思って。似てたから」
「まあ一応、今日おばちゃん見たんだけどね」
「ミニエル、エル、いつも笑かしてくれてありがとうー」
「…なんだよそれー」
「ひどくない?」
「ひどいよね!」
…でも。
その日の《ありがとう》は、
ちゃんと、二人の中に残っていた。
消えない形で!
ここまで読んでいただき、ありがとうございます!
今回は「見えない優しさ」がテーマでした。
普段は、なおきを中心に物語が進みますが、こうして二人だけの時間にも、色んなことが起きますね。
そして何より「ありがとう」って、やっぱり特別だなと。
どんな時でも思いってちゃんと届く瞬間がある。
そんな優しさを、これからも描いていけたらと思っています。
そして最後のなおきとのやり取りで、日常に戻る感じもお気に入りです(笑)
よかったよ!クスッと笑えた!って方はブックマークや評価で応援いただけると嬉しいです。




