表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
73/81

風の訪問者 (後編 空に咲く想い)

今回は、少しだけ―

《人が見えないところで繋がっていたもの》のお話です。


風が運ぶもの。

光が照らすもの。

そして、言葉にしなくても伝わる想い…


なおきたちが出会った「又三郎」という存在。

その正体や理由を深く語ることはありません。


ただ、一緒に過ごした時間と、あの日の空だけが、確かに残ります。


それぞれのオリジナルスキルが炸裂しますが、少しだけ静かな気持ちで読んでもらえたら嬉しいです。


休みの日、決行の朝、少し田舎に三郎と行くことになった一行…


田舎へ向かう電車の中で作戦会議


みんなの目がキラキラしている!



「じゃ、作戦通りに!」


「おー!!」



電車を降りた、三郎、ミニエル、エル、なおきの一行は休みにも関わらず、人がほぼいない駅のロータリー前から一面に見える田んぼの開けた所で掛け声をあげた


「じゃ、やるよ!」


と言うと、三郎は一瞬で100メートル程上空へ上がった!!


三郎は周りを見回した


そこで手のひらをヒョイ、ヒョイと動かすたびに風が巻き起こるそしてその風がまた風と重なって大きなうねりになった!



下から上へ巻き上がった風の中にあった柿や栗、カリン、胡桃は


ふわりと吹きとんだあと、まるで導かれるように、、


小学校や中学校、保育園の校庭や園庭へと降りていき、気づけば、綺麗に並べられていた。



そして、コスモス、金木犀、リンドウなどの色とりどりの花々も巻き上がった!!


ミニエルが指を鳴らした!

すると木の傍に現れたのは…


「ドライアド」


「来てくれてありがとう!!」


「レミエルの頼みだもの、断れないでしょ!!」



「……誰?」


最初に思ったのは、それだった。



緑色の長い髪に、花や植物をあしらった髪飾り。

風に揺れるたびに、草花の香りがふわりと漂う。


まるで森からそのまま抜け出してきたみたいな美しい女性


服もふわふわしてて、風に揺れてて――

正直、ちょっとだけ目のやり場に困る。


(……エルより、ちょっと大人っぽいかも)


近くにいるだけで、空気が柔らかくなる。


土と、草と、花の匂い。


ただ美しいだけじゃない

近づけば分かる


触れてはいけない自然の気配だ…



「あら」


優しく笑うその人は――


間違いなく、人じゃなかった


「人間だけど私が見えるのね?」



「はい!なおきと言います!!」


「レミエル達と一緒に暮らしてます!よろしくお願いします」


「あら、可愛いわね!いつでも私を呼びつけてくれていいわよ」


「ドライアド!!」ミニエルが睨んだ



「ごめんなさい久しぶりに人間の子とお話ししたから可愛くなっちゃって」



「それより、今日は又三郎のお手伝いなんでしょ!!」


「私あの子嫌いなのよね!だってあの子の風乱暴なんだもの」


その時、遠く上の方から又三郎の声が聞こえた

「ドライアド、今日は悪い!!よろしくな!!」


「来ちゃったからには仕方ないわね!私にできることならしてあげるわ!!」



と言って手のひらを下にかざした


すると、ドライアドの横から真っ赤な大きな花の蕾がたくさんついた植物が育ち始めた!


無数の大きな蕾から真っ赤な花が咲き乱れたのだ


「え?すごくいい香り!!」なおきが言うと



「あら、ありがとう森の管理者の私しか作れない花…


《アモネ・レギア》よ!

「(森全体を満たすほどの香り)と言われているの」


「又三郎!この香り使って!!」


「かたじけない!ありがとう」


そう言うとその香りも風で巻き上げた


「なおきも光の精霊混ぜて!?」

エルがニッコリ片目を瞑りながら言った!


(ほんの少ししか出せないけど、でも僕も、忘れない仲間でいたいもんね!)


右手に集まった光の粒達を又三郎の渦の中に投げた



巻き上がった花々、香り、光が空いっぱいになろうとしていた時、広い空に両手をかざしてエルが叫んだ!


《エターナル・ヴォイド・シュリンク》

(永遠の虚無が空間そのものを圧縮させて消滅させる)

闇の力が空ごと圧縮し始めた…


しかもなんともいえない、(ズドウーン、ズズズ)という音が腹の中まで響く!


又三郎が巻き上げた、色とりどりの花や香りや、季節の恵みをエルが闇の力で圧縮して小さくした!!


これがエルの闇の力…



「じゃ、次は私かぁー」


「なおき!かっこいいから見ててねっ」とミニエルが得意げに言った


《エヴァンジェル・レゾナンス》

(天を讃える歌のような鐘の音…その音が世界の理を書き換え続ける響き)…


その音は見える空の範囲全てに気づかせる音色だった


音の届く範囲の住人、歩行者がその音色に誘われて外に出たり、窓の外を覗いた!!



「ミニエルお願い!も、もう限界だから…」エルが叫んだ!!



ミニエルの光の力、

「弾けろー!《オーロラ・リベレイション》」

(圧縮された闇から多色光が溢れ出し空間を元の広さに弾け戻す)



パーンと乾いたようで、どこか澄んだ音が空に弾けた。


その瞬間。


圧縮されていた闇が、内側から光を解き放つように、、


一気に、広がった。



ぶわぁぁぁー


空が、ほどける。


いや、違う。


空そのものが咲いた




無数の花々が、解き放たれる。


そしてすべてが混ざり、揺らぐ。


それらが又三郎の渦巻く風に乗り―


青空いっぱいに広がっていく。



くるくると、又三郎の風に跳ねるように舞う。


ふわり、ふわりと。


落ちるのではなく、空に浮かび続ける花の海。


その中心で――


光が、きらめいた。


ミニエルの放った力が、


細かな粒子となって、空中に散りばめられていく。


それはまるで――


オーロラの欠片。


七色の光が、花びら一枚一枚に反射して、


揺れるたびに色を変える。


赤が金に、金が紫に、紫が透き通るような青へ。


風が吹くたびに、


光と花が溶け合い――


世界そのものが、ゆっくりと呼吸しているようだった。


そして、


ふわり、と――


甘い香りが広がる。


強すぎない。


でも確かに、心の奥まで届く。


花の香りと、土の温もり。


どこか懐かしくて、優しくて――


思わず、深く息を吸いたくなる香り。



「……やった、、すごい」


なおきの口から、自然とこぼれる。


その時。


「――ちょっと」


風の流れに、別の気配が混ざった…



「私も呼びなさいよね!」


振り返るよりも先に、


空気が、わずかに熱を帯びる。


「……あ、待ってた…!」


なおきがぽつりと呟く。


「嘘つけ!!」



キャワが踏み出した瞬間――


その手に宿る剣の気配が、やわらかくほどけた。


振り抜くのではなく、


撫でるように放たれる剣圧。


それは決して壊さず、


ただ風に寄り添うように重なっていく。


又三郎の風に、


キャワの剣圧が静かに溶け合った。


次の瞬間――


花びらが、優しくさらに高く舞い上がる。


光が弾け、


色がほどけ、


空が、一段と広がったように感じられる。


「……綺麗」


誰かが、そう呟いた。


それは一人じゃない。


上位の精霊達が涙を流し、笑みを浮かべ、頬を赤らめ、言葉を失う…


それぞれの想いのままに、ただ同じ空を見上げていた…


違う存在で、


違う力で、


違う在り方、、


今この瞬間だけは、すべてがひとつに重なっている。



花と光と、そして熱。


すべてを包み込んで、


空はどこまでも広がっていく。


さらに空いっぱいに重なり、広がる花の渦。


光が踊り、


香りが満ち、


風がそれらすべてを優しく包み込む。



それはまるで――


季節そのものを、空に描いたような光景だった。




ーー遠くで、たくさんの人の声…


「なにあれ……」


「綺麗……」


「動画撮ろう!」


人々が足を止め、空を見上げる…



その奇跡の中心で、


三郎は、静かに立っていた。



風に包まれながら、


その光景を見上げて――


小さく、笑った。



ーー


その帰り道。


電車の窓に、夕焼けが流れていく。


オレンジ色の光が、ゆらゆらと揺れていた。


「……静かだね」


なおきがぽつりと呟く。


さっきまでの賑やかさが、嘘みたいだった。


「うん」


ミニエルも小さく頷く。


「なんか……終わっちゃった感じする」


エルは何も言わず、外を見ていた。


その時――


コトン、と軽い音。


足元に、小さな何かが転がってきた。


「ん?」


なおきが拾い上げる。


それは――


小さな、胡桃だった。


「……三郎君?」


振り向く。


でも――


そこに、三郎の姿はなかった。


「……あれ?」


「さっきまでいたよね?」


ミニエルが立ち上がる。


エルも静かに目を細める。


でも、どこにもいない。


ただ――


ふわり、と。


優しい風が、車内をすり抜けた。



ーー


翌日、朝の教室、


「はい、みんな席つけー」


先生の声が響く。


「えーと、橋田なんだが、」


「家庭の事情で、昨日で転校しました」


教室がざわつく。


「え!?はやっ!!」


「先週普通にいたよね」


「お別れしてないじゃん」


そんな声が飛び交う。


でも――


なおきは、何も言わなかった。


そっと、ポケットに手を入れる。


昨日の胡桃を握った…



「……またね」


小さく、呟く。


その瞬間――


窓のカーテンが、ふわりと揺れた。


風はもう、荒れていなかった。


でも――


確かに、そこにいた気がした。

振り向く。


でも――


そこに、三郎の姿はなかった



三郎君…大丈夫、みんな忘れないから…


ここまで読んでいただき、ありがとうございます。


このお話は、「形に残らないものでも、確かに存在している」そんなテーマで書きました。


三郎は、人が必要なときだけ現れて、役目を終えたら去っていく神様です。


だからこそ――

お別れも、ちゃんとした言葉もない。


でも、胡桃ひとつと、あの日の空。


それだけで、十分に《繋がっている》と思っています。


そして、なおきたちだけじゃなく、空を見上げた人々の心の中にも残ったはずです…


忘れられてしまうものもあるけど、消えないものも、確かにある。


そんな風に感じてもらえたら、嬉しいです。


もしろよしければブックマーク、評価していただけると、本当に嬉しいです!!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ