風の訪問者 (中編)
風は、いつの間にかやってきて、気づけば、隣にいるものです。
名前を知っても、正体を知っても、それがすぐに何かを変えるわけじゃない。
ただ、少しだけ日常が揺れて、少しだけ世界の見え方が変わる。
今回のお話は、そんな気づいた後の時間です。
変わらないようで、確実に何かが動き始めている。
その感覚を、少しでも感じてもらえたら嬉しいです。
「ええーー?!」
「三郎君?!」
「そう!」
「又三郎」
「又三郎?!」
「名前が?!」
「そう!風の又三郎っていうの風の精霊だよ」
「だからパン負けたの!?」
ミニエルとエルがこちらを振り返った!
その目は闘志がみなぎっている
「やるか!」
「負けねー」
「勝つぞ!」
次の日、
ウチらのメラメラした闘志に
隣の三郎君が「ん?」
首を傾げた
そしてお昼のチャイムと同時にエルが三郎対策の《闇の結界》を張る、通ればすぐに分かるらしい
ミニエルは《女神の碧翠》の目を使って全てを見透かした!!
あそこの角を曲がれば
「なおき、そのまま全力ダッシュのまま曲がっていいよ!サポートするから」とミニエル
今日こそ三郎君に!!
「えー?」
「なおき君もパンなんだね!!」
「あ!う、うん、そうなんだよー」
「三郎君もなんだぁー」
なんて言いながら、なおき、ミニエル、エルはその場でずっこけた。
好きなパンは買えたけど…
なんで負けた?
と、ミニエルもエルも首を傾げた!!
ある日の夕方、すごい風と雨…
家にいる日の雨や雷って僕結構好きなんだよね
「あ!それなんか気持ち分かる!!」
「ここが安心できる居場所なんだって再確認できる感じがするよね」
「夏の終わりってこんな日がよくあるよね」
「又三郎が来てるしね!!」
「秋の風を連れてくる精霊だからね…」
「じゃあ、収穫を祝う神様かぁー!凄いなぁ三郎君!!」
三郎君が来て、数日が経った
体育の授業で男女混合バスケの時も、ひどく転びそうになった女の子が顔を打ち付けずに回転して凄い着地をしたり、
壁に激突しそうになった男子が3メートルほどフワッと飛んだり、、
「うちのクラス最近奇跡がよく起こるよねっ!?」
と神谷が話しかけてくるぐらい色々なことが起こった!!
家に帰って、ミニエルとエルに聞いてみた…
「明日、三郎君に聞いてみようと思うんだけどどうかな?」
「うん、いいと思うよ!」
「多分すぐいなくなるだろうし…」
「え?そうなの?!」
「又三郎は夏の終わり、突風や台風を連れてくる精霊なのよ」
「土を潤し、海をかき混ぜるのよ」
「実りをもたらす神様とも言われてるんだよ」
だからずっと同じところには止まらないと2人が教えてくれた
「なるほどね!」
そんな感じで数日が過ぎた…
神谷と三郎、なおきの三人でバッティングセンターへ行くことになった。
「うおー!久しぶりだわここ!」
神谷がテンション高くコインを入れる。
ガコンッ――
機械が動き出す音。
「なおき、勝負な!」
「え、急に!?」
――シュッ!
カキンッ!!
「よっしゃぁ!!」
神谷の打球が、気持ちよくネットに突き刺さる。
「ナイス神谷!」
「だろー?」
楽しそうに笑う神谷。
その隣で――
「……」
三郎が、じっとピッチングマシンを見ていた。
「三郎くんもやろうよ!」
なおきが声をかける。
「……うん」
コインを入れる。
構える。
――シュッ
カキンッ。
軽い音。
でも――
打球は、ありえない軌道で上に伸びた。
「え?」
そのまま、天井ギリギリをかすめて、ネットの一番奥に突き刺さる。
「今の何!?」
「ホームランとかそういうレベルじゃねぇぞ!?」
神谷が爆笑する。
「お前プロかよ!」
三郎は少し困ったように笑った。
「風、ちょっとだけ使った」
「何だよそれ、魔法でも使えるの!」
「あはは!」
三人で笑う。
そのあとも、
なおきは普通に空振りしたり、たまに当たったり。
神谷は調子に乗って大振りして外したり。
三郎は、たまにとんでもない当たりを出したり。
他愛もない時間。
ただ、それだけのはずなのに
どこか、特別だった
ーー
休憩スペース。
「はー、疲れた!」
「腕終わったわ…」
神谷がベンチに倒れ込む。
「三郎くんすごかったね」
なおきが笑いながら言う。
「……そう?」
三郎はストローをくわえたまま、ぼんやりと外を見ていた。
夕方の風が、少しだけ強い。
「……」
(あれ……?)
その横顔が、少しだけ――
寂しそうに見えた。
さっきまで笑っていたのに。
「……三郎くん?」
呼びかけても、すぐには返事がない。
風に意識が向いているみたいに、遠くを見ている。
なおきは、少しだけ迷って――
「……話、聞こうか?」
そう言った。
ーー
三郎は、少しだけ目を細めた。
遠くを見るような、どこか懐かしむような目。
そして――
「……うん」
小さく、そう答えた。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
風の又三郎って実在したんですね(笑)
三郎の正体が分かってからも、日常は変わらず続いていきます。
パンを競ったり、笑ったり、遊びに行ったり…
でもその中に、ほんの少しだけ混ざる違和感や、言葉にしきれない感情が、この話の軸になっています。
風は、何かを奪う存在ではなく、何かを動かす存在なのかもしれません。
そして、風が通り過ぎたあとに残るものこそ、きっと大切なものなんだと思います。
この先、三郎がどんな風を運んでくるのか…
(後編)凄いことになります!
その前に(後編 前日)を挟みます。
見守っていただけたら嬉しいです。
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