風の訪問者 (前編)
日常の中に、少しだけ違和感が混ざる日があります。
いつもと同じ教室、いつもと同じ時間。
でも、ほんのわずかなズレが、世界の輪郭を揺らすことがある。
今回のお話は、そんな「気づくか気づかないか」の境界にいる存在との出会いです。
風は、目に見えません。
けれど、確かにそこにいて、何かを運び、何かを変えていく。
それがただの風なのか―
それとも。
少しだけ、意識して読んでいただけたら違う楽しみ方もできるかもです!
おはよう。
教室に着いて、まもなくホームルームの鐘が鳴った。
「はい、みんな席つけー」
先生の声とともに扉が開く。
その後ろに、一人の少年が立っていた。
赤毛の髪に、透けるように白い肌。
どこか緊張した面持ちで、静かに前へ出る。
教室の空気が、ほんの少しだけ変わった気がした。
「えー今日から転校してきた……自己紹介どうぞ」
少年は小さく頷いて、口を開く。
「橋田三郎です。よろしくお願いします」
――短い。
でも、不思議と耳に残る声だった。
(……なんだろ、この感じ)
ざわつくわけじゃない。
でも、どこか引っかかる。
そんな空気をまとっている。
席は――
「東雲の隣な」
(あ、僕の隣か!)
僕の席は一番後ろ。
つまり――隣になった。
「よろしくね!三郎くん!」
僕は笑って手をひょこっと上げた
「あ、しののめくん!よろしく!」
少しだけ表情が緩んだ。
「僕、東雲直希って言います!」
「……うん」
「もしよかったら、なおきでもいいし、好きに呼んでね」
「うん!ありがとう、なおき君」
その笑顔は、どこか安心するものだった。
お昼前の気配…
(来たな)
「なおきー!」
「お腹すいたー!」
ミニエルとエルが教室に入ってくる。
その瞬間、僕は戦闘態勢。
そしていつものように――
二人は当然のように、僕の膝の上に座った。
「……」
「あ、横の人誰?」
ミニエルがひょこっと顔を出す。
「あ、今日から転校して来た三郎くん」
「へぇー、そうなんだー」
「綺麗な赤毛の子だね」とエル
――
キーンコーンカーンコーン
昼のチャイム。
同時に、
「行くよ!!」
「うん!!」
いつものコンビプレーが始まる。
僕が一直線に走る。
その先で、二人が状況に応じてサポート。
人混みを抜け、最短ルートを確保。
ミニエルはなおきにしがみつき障害物からのサポート、エルは闇の力でドレインタッチ…おいおい!!
「よし!!今回は二番かぁー!」
上々の結果。
……のはずだった。
「……あれ?」
ふと、違和感。
(さっき……教室にいたような?)
パン売り場の前。
そこに――
三郎がいた。
何事もない顔で、パンを選んでいる。
(……え?)
(いや、でも……)
考えても分からない。
とりあえずいつも通り――
カレーパン二個。
焼きそばパン二個。
チョコクロワッサン二個。
ピザパン二個。
しっかり確保して、屋上へ向かった。
⸻
「キャワいるー?」
「はーい!」
屋上の扉を開けると、元気な声。
「いつもごめんねー!ありがとう」
「いいのいいの!」
三人でパンを広げる。
いつもの、穏やかな時間。
……のはずだった。
「……ってかさ」
僕は空を見上げる。
「今日の風、かなり荒くない?」
ビュオッ――
不規則な風が吹き抜ける。
「規則性が全くないんだよ」
「確かに……あっちからもこっちからも来てる感じ」エルが目を細める。
「風の精霊も、なんだか騒がしいし……」
ミニエルも、少し真面目な顔になった。
――その時。
ゴォッ、と一際強い風が吹いた。
キャワの顔にピザパンがペチャ…
「もう!!」
「私強い風嫌いー!!」
「キャワ、顔べちゃべちゃ」
「あはは」
午後
移動教室のため、階段を上がる。
女子の集団が階段の上に差し掛かった時
下から、突き上げるような突風が吹いた
「きゃっ!?」
女子のスカートが大きく舞い上がる。
「……っ!」
男子たちの視線が一斉に固定される。
「ごちそうさまです!!」
誰かが言った。
「こらぁ!!」
女子たちが怒る――
(……なんだ、この風)
ただの風じゃない?
意思を持っているみたいな
その時。
廊下の窓際に――
一人、立っていた。
赤い髪が、風に揺れる
ーー
帰りのホームルーム前、空は少しだけ暗くなっていた。
晴れているのに、雲の流れがやけに速い。
風が、おかしい。
「……また強くなってない?」
廊下を歩きながら、なおきが呟く。
ビュオッ――!
突然、横から叩きつけるような突風。
「うわっ!?」
窓がガタガタと音を立てる。
その瞬間。
バサッ!!
「きゃあっ!?」
教室の中、プリントが一斉に舞い上がった。
ノートも、ペンも、軽いものは全部宙に浮く。
「ちょ、なにこれ!?」
「風強すぎだろ!?」
クラスの生徒が軽いパニック。
でも――
綺麗に元のあった教卓にプリントも、生徒のノートやペンも元の位置にきちんと戻る
みんな
「奇跡じゃん」、「動画撮ればよかったー」
拍手して大喝采!!
廊下の奥。
赤い髪の少年が微笑みながら外を眺めていた
ーー
帰り際、少し雨が降ってきた
傘をさして帰る男女2人
男子の傘が突風で壊れた…
女子が「よかったら傘一緒に入って帰る?」
「う、うん!ありがとう」
木陰からその様子を見る三郎がいた…
「ただいまー!」
「なおき、あの隣の子どうだった?」
とエルが聞いた
「え?何が!?」
「あれ?気づかない?」
「あの子さぁ…」
「あの子、風の神様だよ」
「ええーー?!」
ここまで読んでいただきありがとうございます。
今回の話は、いつもの賑やかな日常の中に「少しだけ異質な存在」を紛れ込ませることを意識して書きました。
三郎の正体は比較的早めに明かしていますが、本当の意味で彼が何をもたらすのかは、これから少しずつ見えてくると思います。
風は、何かを壊すこともあれば…
この出会いが、なおきたちにとってどんな変化を運んでくるのか――
中編、後編 (前日)、後編もお楽しみに!!




