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香辛料の風が抜けた日

今日は、なんの変哲もない高校生の帰り道の話です。


特別な出来事じゃないけど、

なんとなく記憶に残るような、そんな時間。


新しくできたお店の匂いとか、ふとした一言とか。


そういう小さなきっかけで、少しだけ何かが変わることってあると思います。


今回は、そんな「ほんの少し前に進んだ日」です。


ゆるっと読んでもらえたら嬉しいです。


 

学校の帰り道。


改札へ向かう人の流れの手前、駅前に新しいお店ができていた。


香ばしい匂い。

見慣れない濃い彩りの看板。

くるくる回る、大きな肉の塊。


「ケバブだって!」

あめがカバンに付いた木彫りの馬の飾りをカシャカシャ揺らしながら弾んだ声を上げる。


「え、気になる!」

凪もすぐに反応した。


「トルコのお店らしいよ。のびるアイスもあるんだって!」


あめは楽しそうに続ける。


こういう面白そうを見つけるのが上手くて、気づけば周りを巻き込んでいる…そういう子だ!



あ、知ってる!

昨日、たまたま見かけた。


でも――


…別に、いいかなぁ


そう思いかけた、そのとき。


「あ、その店知ってる!」


気づけば、声が出ていた。


自分でも少し驚く。


「ケバブ、食べたことないから食べてみたい。トルコアイスも気になるし」


……何言ってるんだろう、僕。


こんなふうに帰り道の流れの会話の中に、自分から入ることなんて、今までほとんどなかった。


「なおきくんも行く?」

あめがくるっと振り返ってキラキラとした顔で覗き込む


断る余地を残しているようで、でも自然と来る流れを作る聞き方…


あめが少しだけ首を傾げて、笑う



「え、あ、うん……いいの?」


少しだけ間が空く。


「行こ行こ!」


凪が笑って背中を押す。


やわらかい一言で、空気が決まる。


「神谷も行かない?」


「え、俺もいいの?」


「うん、みんなで行こ」


神谷が肩をすくめて笑う。


「じゃ、遠慮なく行くわ」


――自然だった。


無理に合わせたわけでも、

空気を読んだわけでもない。


ただ、そうしたいと思った。



改札の手前。


人の流れの少し外側で、


「なおきー!」


なおきにしか見えない声が飛び込んでくる。


ミニエルが大きく手を振っていた。


「なにあれ!ぐるぐるしてるやつ!」


「ケバブっていうんだって」


エルは静かに看板を見上げる。


「……面白そうね!」


「いつものみんなで行くから、2人も行くよ!」


「やった!行く行く!」


ミニエルがぴょんぴょん跳ねる。


「ちょ、引っ張らないで」


エルは呆れたように言いながらも、ほんの少しだけ楽しそうに笑っていた。



昔は、一人の方が楽だった。


誰かに合わせるのも、グループで動くのも、面倒だった。


話せないわけじゃない

笑えないわけでもない


でも――


なんとなく輪の中にいて、

なんとなく合わせる空気


たかだか感情の共鳴のために、グループで遊ぶ…



自己肯定感?!同調圧力なのか、、友達って何なんだろうな…

そんなことを、前はよく考えてた気がする。


終われば、すぐに離れる。


それで困ることはなかったし、

それでいいと思っていた。



「ねえなおき!これ絶対美味しいやつ!」


ミニエルの声で、思考がふっと途切れる。


「ちょっと落ち着きなさいよ」


エルが呆れたように言う。


そのやり取りを見て――


少しだけ、思う。



否定を気にしなくていい。

沈黙しても気まずくない。


無理に笑わなくてもいいし、

無理に話さなくてもいい。


ただ、そこにいられる。


自然体でいられるんだ、この人達。



「なおき君はどれにする?」

あめがメニューを覗き込む。


「えー、迷うな……」


「おすすめ聞けば?」

神谷が口を挟む。


「それいいね」

凪が笑う。


「ビーフとチキンの2種類なんだから好みでよくない?」

あめがさらっとまとめる。


「おお、的確」


神谷が親指を立てて笑った!



「はい、どうぞー!」


店員からケバブを受け取る。


「あの外国人の店員さんかっこいいよね!!」


「私も思った!」


「聞こえるからやめてよ」と神谷が言った!


「聞こえるように言ったんだよ」と凪


「こわ!」


ケバブは温かくて、思ったよりずっしりしていた。


ぐるぐる回ってた肉を削って、野菜と一緒に挟んでる。

なんか、それだけで美味しそうだ



「うわ、いい匂い!」

ミニエルが目を輝かせる。



凪がビーフ。

あめがチキン。

神谷がビーフとチキンの二個

なおきが、、チキン三個…



「……なおきくんさぁ」

あめがじっと見る。


「バランス悪くね?!」

神谷が即ツッコミ。


「せめて一個はビーフだろ」

凪も笑いながら乗る。


「いやいや、学校帰りにケバブ三つって」

あめが肩を震わせる。


一拍。


「もはや本格的すぎない?」


「夜ご飯にしても多いよね」


――爆笑。


神谷が「才能あるわ」と追撃して、さらに笑いが広がった。




初めてのケバブをかじる。


香ばしくて、少しスパイシーで


「おいしい!」


思わず声が出た。


「ウマ!」と神谷。


「美味しいね」と凪。


「ね!」とあめ。


こんなふうに、何も考えずに笑える時間が、こんなに心地いいなんて。



「神谷、ソース口についてるよー」


「そういう凪ちゃんはな、こうやって食うのがうまいんだよ!」というとガブガブかぶりついて見せた。


「なおきくん、美味しいね」


向かいのあめが笑う。


「みんなで食べると、余計おいしい」


その言葉に、みんなが頷いた。



こんな時間を、また過ごしたいと思った。




「ねえなおき!トルコアイスも行こ!」


ミニエルとエルが、キラキラした目で言う。


「いいねー」と言いながら2人の頭を撫でた




「……ねえねえ?」


なおきは三人に目で合図する。


「なになに?」


テーブルの中心に顔を寄せる四人…


「トルコアイス、行かない?」


「それな!!」神谷。


「言うと思った」凪。


「なおきくん食べすぎ」あめ。


「あはは」




爽やかな香辛料の風が、ふっと抜けるみたいに…


なんだか、心が軽い


ここまで読んでいただき、ありがとうございます。


今回は、なおきの中の変化をメインに書いてみました。


一人が楽だったはずなのに、

気づけば《誰かといる時間》を心地よく感じている。


でもそれって、無理に変わったわけじゃなくて、ミニエル、エルとの出会いにきっかけに、ただ自然にそう思えただけなんですよね。


あめや凪、神谷みたいな存在と、


エルやミニエルみたいな存在、、


どちらも違う形だけど、

なおきにとって大切な「居場所」になってきている気がします。


そして、ケバブ三個…


1人では流石にねっ


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