放課後の距離感と今日は月が綺麗だね…
ほんの少しだけ、世界が広がった放課後。
教室の外には、たくさんの人がいて…
笑って、話して、同じ時間を過ごす関係がある。
でも、その中にいるからこそ、気づくこともある。
自分にとって大切な距離、
変わってほしくないもの、
そして、少しだけ揺れる気持ち、、
これは、そんな一日の話。
放課後、
教室にはまだ数人残っていた。
なおきは教科書を机に広げて、深いため息をついた。
「……無理だこれ」
ミニエルが横からのぞく。
「もう諦めたの?」
「まだ始めてないよ」
エルが静かに言う。
「それは諦めているのと同じだね」
なおきが机に突っ伏した。
その時。
「なおき君!」
胸のあたりで小さく手を振りながら、あめがこちらに駆け寄ってくる。
明るくて、人との距離を詰めるのが上手な子だ。
遠足で同じ班になって以来、自然と話すようになった。
「今日さ、凪ちゃんと神谷君と勉強会するんだけど」
「勉強会?」
なおきが聞き返すと、あめは少しだけ身を乗り出した。
「うん。テスト近いし、みんなでやろうってなってさ」
「よかったら一緒にやんない?」
楽しそうに笑うその様子に、断りづらい空気がにじむ。
とは言っても嫌な気分になるような子ではなくむしろ行きたいとすら思う雰囲気で接してくれる
なおきは少し考える…
「僕教えてもらうばかりになっちゃうけど…」
あめが笑った
「大丈夫!」
「私が教えるから」
ミニエルが小声で言う。
「先生だ」
「良かったね!」
…エルは黙って二人を見ていた。
なおきはうなずく。
「じゃあお願いしようかな」
「やった!」
あめが嬉しそうに言った
こうして同級生とぞろぞろ歩いて下校するのも、いつぶりだろう?
となおきは思った。
そして少しだけ、胸があたたかくなる。
ファミレスに到着した高校生一行。
「うわ、めっちゃ混んでるじゃん」
「でもちょうど席空いてる!」
店員さんに案内されて、みんなで一つのテーブルに収まる。
「とりあえずドリンクバー頼も」
ガチャガチャと椅子を引く音。
メニューを広げる音。
さっきまでの帰り道の延長みたいな、ゆるい空気。
「なおき何飲む?」
「え、僕はカルピスかなぁ…」
「子どもじゃん」
「うるさいな!」
笑いが起きる。
それぞれ飲み物を取りに立って、戻ってきて、、学生のファミレスの行動
ようやく、少し落ち着いたところで。
誰かがぽつりと言った。
「……で、勉強するんだっけ?」
「あ、そうだった」
「やば、全然その空気じゃなかったわ」
笑いながらも、カバンが開かれる。
ノートと教科書がテーブルに広がる。
「あめちゃん、ペンケースのキーホルダー天使の翼?木彫りで可愛い!!」凪が言う
「でしょ!気に入ってるんだよねー」
と言うとあめは羽のキーホルダーをシャープペンの後ろで軽く突いた…
そういう何気ない話で案外高校生というのは脱線を繰り返すのだ
遠足の時、同じ班だったメンバー。
あれ以来、なんとなく話すようになってから自然に友達になった
「ここさぁ」
女子がノートにペンを走らせる。
「この公式使うと簡単だよ」
「どれ?……あ、本当だ」
なおきが素直に感心する。
さっきまでの賑やかさとは少し違う、
でもどこか楽しい空気の中で――
勉強会が、ゆるく始まった。
「すごいね!分かりやすい」
ミニエルが目を輝かせる。
「本当に先生だ」
エルは静かに見ている。
女子が言う。
「なおき君ってさ」
「意外と素直だよね」
「え?」
「イメージだけど男子って普通もっと強がるじゃん!」
「ねえ、神谷?!」
「俺にいうなよー」
なおきが笑う。
「わからないものはわからない」
「正しい」
とミニエルが言う
女子がくすっと笑う。
「なんか可愛いね」
「俺?好きになるなよ!」と神谷
「お前じゃねえよ!!」とあめと凪
「あはは」
…その言葉に
その楽しそうな会話にエルの眉がほんの少し動いた。
ーー
勉強は順調に進んでいた。また
「できた!」
なおきが言う。
女子がうなずく。
「ほらできるじゃん」
ミニエルが拍手する。
「なおきすごい!」
なおきが笑う。
「先生のおかげ」
あめは照れたように笑った。
「そんな大したことしてないよ」
エルは黙っている。
ミニエルが気づく。
「エル?」
「……なんでもない」
ーー
帰り道。
あめと凪は駅の前で手を振った。
「また明日、学校でね!」
「ありがとー」
なおきも手を振る。
神谷も「俺あっちだから」と帰っていった
しばらく歩く…
ミニエルが横を見る。
エルは黙っていた。
「…エル?」
「何?」
「機嫌悪い?」
「悪くない」
なおきが言う。
「今日は助かったな」
「頭いい人ってすごい」
エルが止まる。
「……なおき」
「ん?」
「んーー」
少しだけ言葉を選ぶ。
「不用心!!」
「え?」
「女性とあまり距離を近づかないでほしい」
なおきが首をかしげる。
「普通じゃない?」
ミニエルがニヤニヤする。
「お姉ちゃん嫉妬してるんだよ」
エルは即答した。
「してない!!」
ミニエルが笑う。
「絶対嫉妬」
エルは静かに言った。
「違うもん…」
少し間…
それから小さく付け足す。
「……少し嫉妬」
なおきが驚く。
「え?」
エルは視線をそらした。
「なおきが…」
少し小さい声。
「……さっき取られそうと思った」
なおきはぽかんとする。
そして笑った。
「ごめん!無自覚なのも悪いわ僕…気をつけるよ」
「でも、大好きなのはミニエルとエルだから」
エルはまだそっぽを向いていた。
「……知ってるけど」
でも耳が少し赤かった。
「あはは、知ってるけど」とミニエル
数メートル歩いて
ミニエルが「知ってるけど!!」
「あんた次それ言ったら炎で焼き尽くすからね!!」
「お姉ちゃん、怖いー、知ってるけど」
ミニエルは走って逃げた
「なおきぃー!ミニエルむかつく!!」
「仲良いよね」
「よくない」
クルクル、ヒュッ
(キラキラ)
クルクル、、、ヒュッ
(キラキラキラキララ)
「さっきから指の先に精霊集めて私に飛ばしてくるのやめてよね!ちょっと痛いんですけど…」
「バレてたか!」
夕暮れになると精霊達がなおきに遊んで欲しそうに寄ってくるのである
その日の夜
ミニエルはソファで寝てしまっていた
エルはベランダの室外機の上に座って月を見ていた
「横いい?」
「いいよ…」
「今日はごめんね、心配させちゃって…私、なんかさぁ…なおきの事になると周りが見えなくなるというか…」
「…でもね、それ言ったら僕だよ…この幸せがいつまで続くか、守れるか…」
「天使の2人を前に守るとかおこがましいけどさぁ、でも、僕らには間違いなく寿命差があるし…」
トン、なおきの肩にエルは頭を預けてきた
(守ってくれてるじゃん)と言おうと思ったけどエルは言わなかった…
「自分が先に死ぬのになんか置いていかれる気持ちに…たまに考えちゃう事もあって」
「今日、エルが話してくれたヤキモチを聞いて安心してたり…ずるいでしょ僕」
「私と同じだね、なおきも…」
「でも、信頼と愛してもらえてる気持ちが上回っていつも落ち着くんだけどね」
「それ私も!!」
「同じだね、エルも」
「…今日は月が綺麗だね!!」
「うん!私も同じ事思った」
そしてエルは少しだけ顔の距離を近づけていたずらっぽくなおきを見上げた…
今回は、なおきがクラスメイトと関わることで、少しだけ《外の世界》が広がる回でした。
その一方で、エルの小さな嫉妬や、三人の関係の特別さもより強く描けたかなと思います。
楽しい時間の中で生まれる不安。
でも、それ以上に大きい安心。
このバランスが、この物語の大事な部分です。
夜のシーンは、そんな気持ちをお月さんを使って静かにまとめるように書きました。
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これからも三人の物語もクライマックスに入っていきますので、ゆっくり大切に描いていきたいと思います




