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アンブレラ 〜なおき〜

これは、同じ時間を過ごした三人の、少しだけ違う見え方の話…

雨の日の帰り道、同じ場所にいて、

同じ音を聞いているはずなのに…

それぞれの世界は、少しずつ違っている。

三つの視点から描く、ひとつの時間。

「アンブレラ」三部作。


雨の日は、音が多い。


気づいてしまうと、ずっと鳴ってる音


ぽつ、ぽつ。


アスファルトに落ちる音。


ざああ、と広がる音。


遠くでタイヤが水を切る音。


全部、混ざってる。



その中に、もうひとつ。


ばしゃん!


「ミニエルーーーー!!」



……これも、混ざる。



「ごめんってばー!」

笑ってる。


「この子反省してないよ」

とエルの声も混ざる



足元を見ると、水たまり。


さっきより広がってる。


その中心に、ミニエル。


そして――


その外に、僕とエル


もっと外側に色とりどりの傘の波



「風邪ひくって…」


と言いながら、ちょっとだけ息を吐く。


正直、ちょっと冷たい。


でも、それ以上に楽しそうな2人の笑顔



「ねえなおき!もう一回やっていい?」


「ダメ」


即答。


「えー!」



……絶対やるな、これ。



少し視線をずらす。


エルは横で同じ傘の中


同じスピードで同じ音を聞いて同じ色を見ている



同じ雨なのに、


いつも違う



ミニエルは、バシャバシャ水遊び


エルは、傘の彩りをよく眺めている



で、僕は…



少しだけ、傘をエルの方に傾ける


いつものこと…



ほんの一瞬。


エルが、こっちを見る。


でも、何も言わない。



……その代わり。


少しだけ、体を寄せる



ばしゃん!


「うわっ!?」


また来た。



「ミニエル!!」


水、飛びすぎ。


普通にかかる。



「ごめんごめん!」

笑いながら逃げる



「もう!あっち行きなさいよね!!」

エルの声が真横から聞こえる



「なおきもお姉ちゃんもやろうよ!」


「やらない」




そのとき、


しゃらしゃら……


細かい音が、水たまりに混ざる


さっきより軽い雨。



「ね、これ好きなやつ!」

ミニエルが言う。



「うん!私も」

とエル



「……いい音だね!」

僕もそう言うと、



ミニエルは満足そうに笑った。


エルは、少しだけ目を細める。


同じ音を聞いてるのに、


聞こえ方、見え方は違うんだろうけど…


ちゃんと響く!



全部、ここにあるんだから



「ほら、帰るよー」


「えー!まだ遊ぶ!」


「ダメ」



歩き出す。


水を避ける僕と、


水たまりを踏みにいくミニエルと、


その真ん中で、


少しだけ距離を合わせるエル。




ばしゃん、、


「ミニエルーー!!」



賑やかで、笑いと愛情に満ちてる生活がずっと続いてほしいなぁ…


と思う。



茜色が、雲の隙間からこぼれ出した。


なおきは、少しだけ手をかざす…


雨粒の向こうで、光が揺れた。



濡れても、笑っても、


この距離のままで



「……守りたいな」

誰にも聞こえないくらいの声で



「傘みたいに…」


包むような、そんな存在でいられたら、、



まだ少し降る雨ももうそれほど冷たくはなかった


「あ、見て?!」


雲の隙間から、光が差し込む。


思わず手をかざすと、いつものように、光の粒たちが集まってきた。


その光の中で、なおきは小さく息を吐く。


「……雨もたまにはいいなぁ」





ここまで、「アンブレラ三部作」を読んでくれて、ありがとうございました。


雨の日の、ほんの少しの時間。


大きな出来事があるわけじゃなくて、ただ一緒に歩いて、笑って、濡れて。


それだけのことなのに、どうしてこんなに、残るんだろうって思います。


ミニエルは、まっすぐに楽しんで。

エルは、静かに受け止めて。


その真ん中で、なおきはただ、この時間を守りたいと思っていました。


同じ雨でも、感じ方はきっと、それぞれ違うけど。


それでも、同じ場所にいられるなら、それだけで十分なんだと思います。


この物語のどこかに、皆さんの「大切な時間」と重なるものがあったなら嬉しいです。


よければ、ブックマークや感想などでそっと教えてもらえたら、すごく励みになります。


今回も読んでいただいてありがとうございました!

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