女神のヤキモチと空を見上げる理由
遠足回後半です!
いつも通り騒がしい二人と、それに振り回される班長なおき…
フィールドアスレチックという名の戦場で、今回も平和(?)に大暴れします。
ただ今回は、少しだけ違います。
楽しいだけじゃなくて、ちゃんと誰かを見ることや、見守ることを知っていく回です。
笑いながら、ちょっとだけ心が動く
そんな一日になっています。
フィールドアスレチックに到着した瞬間。
「うおーーーーっ!!」
ミニエル、嬉しくて即ダッシュで飛び出した!!
「ちょっと待ちなさい!」
エルも負けじと駆け出す。
「待てぇぇぇぇ!!」
班長・東雲直希、即出動!
巨大ネット。
跳ね方も尋常じゃない。見ているだけで怖い!
「なおき!めちゃ揺れるから来て来て」
とミニエル…
さっきミニエルが飛びすぎて一度見えなくなったほどだ…
他の生徒も異様に跳ねるネットに楽しんでいる…
丸太渡り、
これは怖いというより、案外難しいらしく、おそるおそる進んで行く二人…
(生徒は安全ロープとヘルメットを被るのだが、それを着けていない2人…
エルは一度落下して「キャー」という悲鳴と共に森の中に消えて行った)
ターザンロープ。
「なおき見て!!」
ミニエルが満面の笑みで宙を舞う。
エルもすっかり気に入ったらしく、風を楽しんでいる。
が、はたから見るとロープだけが動いている。
なかなかに怪奇現象である。
「楽しいいいいい!!」
涼しい顔をしているエルも、ちゃんと楽しそうだ。
そんな2人を見ていたら…
「危ない!!」
バシャン
ミニエルが池に落ちた!
数秒後。
何食わぬ顔で、水底から現れる女神のような姿。
エルがすかさず言う。
「私もやりたい!!」
ざざざっ。
「あなたの落としたのは金の斧ですか?銀の斧ですか?」
エルの神々しいポーズ。
なおきも真顔で
「私の落としたのは鉄の斧です」
「…正直なあなたには、私をあげます」
「……」
なおきのツッコミは追いつかない。
ミニエルがぽつり。
「もう少しちゃんとしてたり、やきもちも程々だと女神なんだけどなぁー」
「あんたは池に沈んでなさい!」
「そういうとこだよお姉ちゃん!!」
「うぐっ!」
「東雲くん、なんか忙しそうだけど大丈夫?」
同じ班の凪ちゃんに声をかけられる。
「ごめん!あまりに楽しくてテンション上がっちゃって」
――変な言い訳をしながら汗だくな自分がいる…
とにかく、あの二人を事故らせないことが最優先だ。
その時。
「きゃっ!」
小さな悲鳴。
丸太から足を滑らせた、同じ班のあめちゃんが地面に手をついた。
空気が止まる。
「大丈夫?!」
迷わず、なおきが駆け寄る。
膝と手のひらが擦りむけている。
あめは泣くのを必死にこらえていた。
「いた、い……」
なおきはタオルで砂を払う。
「無理に立たなくていいよ。ちょっと見せて」
自然だった。
考えるより先に、体が動く!
少し離れた場所で。
エルがその光景を見る。
(……二人の距離近い)
体を支える距離。
真剣な顔。
優しい声。
自分が知らないなおきの表情。
ミニエルが小さく言う。
「お姉ちゃん?」
「……わかってるよ」
あめの目にあるのは特別な感情じゃない。
ただの痛みと安心。
なおきの目にあるのも、好意ではない。
責任と優しさ。
(……本気で助けてるんだもん)
その時、
エルは小さく息を吸う
誰にも気づかれないほどの風が、あめの傷と捻った足に触れる。
温かく、優しい空気。
「あれ……ちょっと楽になった…」
「え?ってか、いるの?!」
あめの言葉になおきは首を傾げる…
エルは何事もなかった顔で見ていた…
ミニエルが肘でトントンとエルを突いた
「何よ?」
「なんでもないよー」
「…やるじゃんお姉ちゃん!」
ーー
救護所へ向かう途中
なおきは肩を貸して歩く
エルはその背中を見る…
胸の奥は、寂しいとかじゃなかった…
(うん、そう、、)
かっこよく見えた
ーー
処置のあと。
あめが頭を下げる。
「東雲くん……ごめんね」
「なんで謝るの?誰でも転ぶことなんてあるじゃん!」
「うん、ありがとう」
ただの感謝。
なおきは少し照れて、
「あはは、どういたしまして」
エルはその様子を静かに見ていた。
なおきは誰かを選んで優しくしているわけじゃない。
目の前の人を放っておけないだけ。
それが、なおき。
ミニエルがにやにや。
「やきもち?」
「ち、違う!」
「なおき、ちゃんと仲良くできてるね」
エルはなおきを見る。
輪の中で笑っている。
自然に、そこにいる。
(……そうだね)
ゆっくり息を吐く。
「……今回は」
「いいよ、今回は、他の子に優しくしても多目に見るから」
「え?何が?」
「べ、別に深い意味はないもん!」
「お姉ちゃん可愛い〜女神様みたいだよー」
「なによあんた!!」
でも。
こんなにやきもちを焼く自分も、ちゃんと見守れるようになった自分にも少し驚いていた。
なおきが誰かと話していてもーー
戻ってくる場所は、ここだとわかっているから。
「東雲!次あれ行こうぜ!」
神谷が言う
「うん!行こう!!」
なおきが走る。
ミニエルも追う。
エルは一瞬だけ立ち止まり、空を見上げる。
高い空。
澄んだ風。
(……変わったのかなぁ)
なおきも。
そして、自分も。
(なんか人間ぽくなってるなぁ…私)
ほんわか心の中が温かくなった
下界を上から覗くことはあったけど、
空を見上げることなんて、なかったから…
「ほら、お姉ちゃん置いてくよー!」
「あ、待ってよー!」
笑い声が広がる。
遠足はまだ続く。
でも確かに、何かが進んだ。
暴走と優しさの間で。
ーーー
屋上の塔屋の上。
「今日はみんな遅れてるのかなぁー?」
鼻をすんすん鳴らしながら空を見上げる少女。
編み込みをくるくるいじりながら、待っている。
風だけが優しく吹いた。
――その後、誰も来なかった昼下がり
ここまで読んでいただきありがとうございます!
今回の話は、・ミニエルの全力暴走・エルのやきもち(進化版)・なおきの誰にでも向ける優しさ
この3つが軸でした。
特にエルは、「独り占めしたい」から「見守れる」に一歩進んだ回です。
それでも完全に大人じゃないところが、ちょっと可愛いポイントだったりします。
そしてラストの誰も来なかった少女
ここから少しだけ、空気が変わります。
引き続き、見守ってもらえると嬉しいです!
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