キラキラの理由
なおきの高校新学期が始まり、クラスも変わって、席も変わって、
周りの顔ぶれも、少しだけ変わった。
――けれど。
朝の光の中で繰り返される、あの騒がしさだけは、
なにも変わっていなかった。
変わらないものと、
少しずつ変わっていくもの。
そのどちらもが、ちゃんとここにある。
そんな、春のある日の話。
新学期が始まっても、朝のルーティンは変わらない。
わちゃわちゃと朝ごはんを食べて、
相変わらずミニエルとエルは目玉焼きの黄身を吸うという気持ちが悪い行動を披露し、なおきはそれを呆れ半分で見守る。
慌ただしく二人を抱きしめて、いい子いい子してから学校へ向かう毎日。
しかし、
今日の朝は、少しだけ違った。
「あのさぁ、明日遠足でさあー」
その僕の一言で、二人が同時に振り向いた。
「いてて……」
全力振り向きの勢いで、ミニエルが首を押さえる。
「遠足ってなに?」
エルが真顔で聞く。
「クラスが変わったから、親睦を深めるってやつ。フィールドアスレチックのある大きな公園に行くんだよ」
ヤバい。
二人の目が、ありえないほどキラキラしている。
なおきは悟った。
――この二人がキラキラした時は何かが起こるやつだ…
遠足当日
班ごとにバスへ乗り込む。
なおきは迷わず一番後ろの席を確保した。
クラスの人数的に、あそこが最後まで空くのを知っていたからだ。
そして、
遠足が決まった瞬間、生まれて初めて班長にも立候補した。
全部、ミニエルとエルという(不確定不安要素)のため。
案の定、二人はにっこりとした顔で一番後ろの席を陣取り、
窓の外を眺めている
予想通り遠足について来たのだ…
しかし、…もう一年かぁ
でも、この二人の横顔は――
一番見慣れているはずなのに、いまだに新鮮だ。
このレミエル出会ったから、
なおきは変わった。
事実、以前なら遠足なんて行かないという選択肢もあった。
クラスの人と必要以上に関わることもなかった。
人が嫌いだったわけじゃない。
ただ、自分に理由がなかった。
必要がなかった。
とでも思っていたのか、今ではそれも定かではない…
でも今は違う。
この二人と出会ったこと…
そのおかげで――言い訳をする意味がなくなった。
キラキラした瞳は、下を見るのがもったいないと言わんばかりに、
まっすぐ前を見ている。
ーーー
バスは1時間、高速を走り山の中へ向かう。
途中のサービスエリアでは、ご当地牛の串焼きやたこ焼きをせがまれ、
結局いくつか買う羽目になった。
バスへ戻ると、それぞれが買ってきたお菓子を広げ始める。
「なおき、案外食べるんだね!」
「本当だ! 東雲くんお昼食べれなくなるよ?」
クラスメイトに笑われる。
「食べるのが好きなんだよ」なんて言ってだいたいやり過ごす…
ミニエルとエルにとっては、そんなことはどうでもいい。
楽しくて美味しければ、それで幸せなのだ。
座席近くの友達とUNOや大富豪をしている間も、
ミニエルは当然のようになおきの膝の上でカードを覗き込み、一緒にやろうとするし、勝手に出した時には
「今、カード、、空に浮いたよね…」とクラスメイトをビックリさせて
「あっ!マジック、マジック!!」
と言って見えないミニエルを使ってカードを浮かせたり手の平に下ろしたりなおきの特技を披露した…
ミニエルは嬉しそうでエルは苦笑い
エルは窓の外の景色に目を輝かせている。
山が近づく。
空気が澄んでいく
そして目的地が近づいてきた
「遠足」という言葉ひとつで、
こんなにも世界の見え方が変わるなんて、思っていなかった。
前なら、ただの学校行事だった。
面倒で、適当にやり過ごすだけの一日。
でも今は違う。
同じ景色でも、
同じ時間でも、
隣にいる誰かや、生活の変化でこんなにも意味が変わるんですね…
キラキラしているのは、
遠足だからじゃない。
きっとその時間を一緒に見てくれる存在がいるからだ。
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