そのデート定員オーバーです
なんてことない一言から始まった約束
「高校生カップルは遊園地に行くらしいよ」
その《らしい》は、いつだって突然で、そして妙に本気…
今回、みんなでデートに出かける回
これは――
少しだけ不思議で、ちゃんと楽しい、三人の一日。
ある日の放課後。
唐突に、エルが言った。
「高校生カップルは遊園地デートに行くらしいよ」
?…
「急にどうした」
「テレビで観たもん」
ミニエルがぴょこんと跳ねる。
「観覧車ってやつ!制服コーデ!あとジェットコースター!」
なおきは苦笑する。
「……じゃ今度の休日、遊園地行く?」
エルは腕を組んだまま、じっとこちらを見る。
その目は、本気だった。
「行く」
即答だった。
ーー
数日後の晴れた朝。
三人は最寄り駅のホームに立っていた。
目の前には、流線型の特急列車。
朝の光を受けて、銀色のボディがきらりと光る。
「かっこいい……」
ミニエルがぽつりと呟く。
「速そう……」
エルの目も、完全に乗る前から楽しいモードだ!
写真連写。
角度を変えてまた連写。
ついには動画。
低いモーター音とともに、ドアが静かに開いた。
「おぉ……」
中に一歩入った瞬間、空気が変わる。
静かで、少しひんやりしていて、
どこか特別な場所の匂いがした。
「席広っ……!」
ミニエルが、ぴょんとシートに飛び乗る。
ふかっと沈むクッション。
包み込まれるみたいな柔らかさ。
「なにこれ、すご……」
エルは慎重に座りながら、横のレバーを見つける。
「これ、なに?」
軽く引いた瞬間――
ウィィン……
シートが、なめらかに後ろへ倒れた。
「動いた!?」
「え、なにそれ!もう一回!」
ミニエルも真似してレバーを引く。
ウィィン……
「うわぁぁぁ!!」
「2人とも遊ばないよー」
なおきは苦笑しながらも、自分もウィィィン倒す
「なおきもかい!!」
とミニエルがつっこんだ
背中にぴったりフィットして、
自然と息が深くなる。
「……これは寝るやつだね!」
窓の外を見ると、
ホームがゆっくりと流れ始めていた。
気づけば、発車している。
「もう動いてる!?」
「全然揺れない……」
エルが驚いたように窓に近づく。
大きな窓いっぱいに、街が流れていく。
建物がすーっと後ろに流れて、やがて開けた景色に変わる。
「うわ……」
ミニエルがガラスに顔を近づける。
遠くまで広がる空。
線路の脇を駆け抜けていく景色。
それが、映画みたいに滑らかに続いていく。
「ねえこれずっと見てられるね……」
その時。
カートを押す音が、静かに近づいてきた。
「車内販売でーす」
「きた」
なおきが小さく笑う。
「え、なにそれ!?」
ミニエルが即座に反応する。
並んでいるのは、
コーヒー、紅茶、ジュースに加えて、
冷たいフロートやちょっとしたスイーツ。
「選び放題じゃん……」
エルが真剣な顔でメニューを見つめる。
「……悩む」
「さっきカフェで買うの忘れたからね」
なおきがぼそっと言う。
一瞬の沈黙。
「忘れた!!」
「やっぱりか」
なおきは吹き出す。
「もう、エルが写真撮ってるからでしょ」
「はぁ!?私!?そうきますか!!」
「まあまあ……」
結局それぞれドリンクを手にして、
再び席へ。
カップを持ったまま、
流れていく景色を眺める。
揺れはほとんどなくて、
時間だけが、静かに進んでいく。
「……なんかさ」
ミニエルが窓に額をつけたまま言う。
「どこ行くかより、誰と行くかってやつ、ちょっと分かったかも…」
「まだ着いてないけどね!」
と景色を見ながらエルが言う…
なおきが小さく笑う
「うるさい」
ミニエルが少し怒る
それでも――
その顔は、三人ともしっかり楽しそうだった。
ーー
やがて、列車は速度を落とし、
目的地の駅へと滑り込んでいく。
ドアが開く。
外の空気が、ふわっと流れ込んできた。
「……来たね」
「来たね!」
「ついたか」
三人は顔を見合わせて、
同時に笑った。
ーー
遊園地到着。
制服姿のなおき。
ミニエル達に制服で出かけるように頼まれたのだ
「制服コーデしたいじゃーん」
今時の高校生っぽく、だそうだ。
次の瞬間。
エルとミニエルが制服姿に変身。
風がふわりと揺れる。
正直――なおきは一瞬、見惚れた。
「……可愛すぎない?」
「今さら?」
「惚れなおしていいよ!」
そして。
なおきの頭にカチューシャ装着。
「……これ、僕いる?」
「いる」
「絶対いる」
周りから見れば、
一人でテンションの高い男子高校生である。
「あ!3人並んで撮るよー」
なおきは自撮りをした
「はいチーズ!!」
「あはは!やっぱり映ってないじゃん」
「まあ、別に良いんだよー」
ーーー
お待ちかねのジェットコースター。
「相席お願いしまーす!」
三人横並び。
見えない二人を足して、実質五人。
ぎゅうぎゅう。
「なんか狭いね」と相席の人。
「はい!すみません…」
聞こえないようになおきが謝った…
見えなくても、質量はあるのだ
そんなことを考えている間に――
急降下。
ミニエル絶叫。
「誰よ今なおきの腕にしがみついた人!」
エルが怒る。
そして一回転!!
「この人なおきに抱きついてるぅぅ〜!!!」
「きゃーーあ」
…エル、一人うるさい…
(周囲には聞こえない)
でも、謎の圧だけは伝わったらしい。
横の相席の女の人がぐったりしている…
エルも放心状態だ…
「ジェ、ジェットコースターが怖かったと言う事にしてあげる…ウプッ」
ミニエルは遊園地が嬉しすぎてニコニコしている。
どこへ行くかも大事だけど、
誰と行くかで、景色は変わる。
たとえその存在が見えなくても、
笑ったり、はしゃいだり、ちょっと拗ねたり…
全部ちゃんと、そこにある。
普通じゃないかもw
でもきっと、これもひとつの「高校生らしさ」
次はどこへ行こうか。
そんなことを考える時間まで、
もう楽しいと思えてしまうのだから。




