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緋色の瞳とカレーパン

屋上に、四人。


いつもと同じはずの時間。

でも、少しだけ違う空気。


笑っているだけじゃいられない日もある。


それでも――

一緒にいる理由は、きっと変わらない。


これは、一人でよりみんなで抱えてしまったものと向き合う話。


「……私の目、見て」


風が止んだみたいに、空気が静まる。


夕焼けを映した緋色の瞳が、まっすぐなおきを射抜いた。


「ちゃんと見て…」


逃がさない、というより《知ってほしい》目だった。


なおきは、何も言わずに頷く。


キャワは一度、唇を噛んだ。


「……まだ、私、弱かったんだよね」


編み込みを握る指が震えている。


「その日に天使になったばかりで、何も守れなかった…」


声が掠れる。


「その時ね」



一瞬その場の呼吸が止まったみたいに静かになった…


そしてキャワは話を続けた…

「村を炭にした炎の魔人、《イフリート》を」


その名前を口にした瞬間、風が強く吹き抜けた。


「私の中に、閉じ込めたの」


なおきの心臓が跳ねる。


「封じることしか、できなかった」


「倒す力なんてなかったから」


「だから……私の目は、緋色なの」


夕焼けよりも、深い赤。


「大切なものを消した存在が、私の中にいるんだよ…」


声が、震える。


「どんな気持ちか……分かる?」


ぽたり、と。


一滴、涙が落ちた。


言葉にならない嗚咽。



声を押し殺しても、涙だけが溢れていく。


屋上に、泣き声が広がる。


「ご飯の時間が、好き」


「みんなで食べるのが好き」


「見てるだけでも…しあわ…」


「でも……怖いの」


「また全部、なくなったらって思うと」



大切なものを奪った魔人が、自分の中にいる…

それを抱えて、笑って、屋上でカレーパンを食べていたのかとなおきは思った。



それがどれだけの重さか見当もつかない。


その時。


「……そんな事知ってるよ」

静かな声…エルだった。


キャワの肩がびくりと揺れる。


「……」


「あなたがイフリートを封じたことも」


「その代償も」


ミニエルも、真っ直ぐに見つめる。


「ずっと前から知ってる」


「なおきも今日知った!」


キャワの声が、崩れる。



「怖くないの?」


「私の中にいるんだよ?」


エルは、ゆっくり首を振った。



「私が強いの知らないの?」


「ミニエルなんてもっと強いし!」


「キャワだって天界一物理攻撃最強なんでしょ?」


「自称だもんねそれ」とミニエル


「おい!!」とキャワ


「イフリートだろうが魔王だろうが抑えれるように強くなったんでしょ!!」


「みんな知ってるよ!!」



「だって、あなたはあなたでしょ」


ミニエルも一歩前に出る。


「キャワが守ったんだよ、封印して…世界を」


「村は残念だったけど…今でもその村のために祈ってるんでしょ!」


「弱かったんじゃないよ」


「あんたは強いよ!」


キャワの目から、また涙が溢れる。


「でも、私の中にいるの」



その言葉に、なおきがやっと口を開いた。


「じゃあさ、一人で抱えなきゃいいよ」


キャワが、ゆっくり顔を上げる。


「イフリートが中にいるなら」


「その外に、僕たちがいるよ」


「僕は弱いけれども」


「あはは」ミニエルとエルが笑った!



「カレーパン食べながらね!監視してあげるよ、僕も」


沈黙。


「ごめん」


風が、優しく吹いた。


「……ばか」


涙でぐしゃぐしゃの顔で、キャワが笑う。


「そんなので封印保てるわけないじゃん」


「じゃあもっと食べる?」


「違う」


くしゃ、と袖で目を拭う。


そして、小さく呟く。



夕焼けの中、

緋色の瞳が、少しだけやわらいだ。


「怖くない?」


エルが微笑む。


「怖がってほしいの?」


ミニエルも笑う。


「だって、キャワはキャワだもん!おとぼけキャラ」


「最近あんた、空気重いんだよ!!」


屋上に、もうさっきの重たい空気はなかった。


まだ涙は止まっていない。


でも。


孤独は、少しだけ薄れていた。


夕焼けが、四人を包む。


キャワは小さく息を吸って。


「……ねえ」


「明日もカレーパン、ある?」


なおきは即答した。


「ある!」



「…ありがとう」



「ってか、戸締り終わった校舎からどうやって帰る?」


「なおきが階段から降りたら先生にバレるよね」


「ミニエルとエル飛べる?」


「私達羽無いからなぁー」



「じーーっ…」


「私かぁ!!」


と、キャワは人差し指で涙をはじいて嬉しそうに…


…しかし、1人ずつ屋上から下ろす作業は大変だったそう…


「めんどくせぇなぁこいつら!!」


「キャワ、なんか言った?」


「言ってませんよー!」


「めんどくせぇなぁって言っただろ!」


「聞こえてんじゃねぇか」




ここまで読んでいただき、ありがとうございます!


キャワの過去と、「緋色の瞳」の理由が明かされる回でした。


強さって何なのか。

守るってどういうことなのか。


一人で抱えるには重すぎるものも、誰かとなら、少しだけ軽くなるのかもしれません。


……そして結局カレーパン。


この作品らしさも、ちゃんと残していきたいなと思っています。


次回のお話…

ある世界の王が現れます!!


もし「いいな」と思っていただけたら、

ブックマークや評価で応援してもらえると、とても嬉しいです


次回も、よろしくお願いします!

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