食べ歩きと少しの戦い
春の陽気に誘われて、三人でやってきた商店街。
目的は――食べ歩き。
ただ美味しいものを食べるだけ。
……のはずだったのに。
なぜか始まる謎の戦闘、
暴発する魔法、
そして止まらない笑い声。
これは、ちょっと騒がしくて、でも確かに幸せな一日の話。
「次はあれー!!」
ミニエルがびしっと指差した先。
「長っ!?」
屋台に並ぶ、ありえない長さのチュロス。
どう見ても五十センチはある。
「剣じゃん」
「武器ね」
「食べ物だからね!」
一本ずつ買ったチュロス。
ミニエルはチョコ。
なおきはきなこ。
そして――
「私はシナモン」
さらりと言うエル。
「お、大人だ……」
「さすが……」
なぜか感心されるエル。
「甘すぎるのは少し苦手なの」
そう言って、すっと一口。
さくっ。
「……おいしい」
上品。余裕。完全に大人。
――の、はずだった。
「なおきの、きなこ……」
じー。
「え?」
「……少しだけ」
ちら、ちら
完全に欲しい目。
「さっき大人ぶってシナモン選んだのに?」
「それとこれとは別」
頬がほんのり赤い。
「ほら」
差し出すと、エルは嬉しそうに近づいて――
ぱく。
「……きなこ、美味しい」
「やっぱり背伸びだったな?」
「……雰囲気よ」
なおきは吹き出した。
その横で。
ミニエルはチュロスを剣のように掲げている。
「太陽の光を浴びよ! 聖なる――」
ボキッ。
ポトッ。
「……あ」
手の中には、五センチの残骸。
「……ちっちゃくなった」
「さっきまで大剣だったのに」
「短剣になっちゃった…うう」
「言い換えるな!」
ミニエル、しょんぼり。
「ミニエルの、剣……」
「だからチュロスね」
なおきは自分のチュロスを半分に折る。
「ほら。僕の半分あげるから」
「……いいの?」
「いいよ」
ぱぁぁっと顔が明るくなる。
「やったぁー!!」
一瞬で復活。
エルはそれを見て、少し微笑んでから――
「……なおき」
「ん?」
「きなこ、もう一口」
「また?」
もぐ。
「……やっぱりこっちの方が好き」
「シナモンは!?」
「……雰囲気」
素直すぎる。
ーーー
「うわ、いい匂い!」
顔くらいある台湾唐揚げ。
スパイスの香りが鼻をくすぐる。
「旨辛って書いてある」
「ちょっとくらいなら大丈夫よ」
三人で一口。
さくっ。
じゅわっ。
「おいし――」
「からぁぁぁ!!?」
エル、絶叫。
「!?!?」
「辛い! 何これ辛い!!」
口をぱたぱた扇ぐ。
「ミニエル、何か氷の魔法お願い、辛すぎる!」
「分かった!」と言うと
指をエルに向けて「アイシクル!!」
エルが「ばっ!!」と言ったと思った瞬間…
「あがががっ」
氷の柱がエルの口に挿入…
「あーあ…終わったわ」
「こら!ミニエル!!アイシクルはダメでしょ!!」
「大き過ぎるんだから!!」
大きさの問題だったの?!
ドキドキしながらもミニエルも台湾唐揚げに挑戦
「ひゃぁぁぁ!! 口が熱い!!」
辛さでぴょんぴょん飛び跳ねている。
涙目!!「お姉ちゃん、み、水!!」
嫌な予感しかしない…
「仕方ないわねー」
「ウォーターバレット!!」
ミニエルの目ん玉が飛び出した!!
「待って!そんな攻撃魔法を口に…」
「うべべべべっ」
「お姉ちゃんのアホーー!」
「死ぬわ、私でも」
相変わらずであるこの2人…
「え、そんな辛い?」
なおきは普通に食べている。
「なおき平気なの!?」
「ちょいピリ辛くらいだけど」
「魔法で対応しようか?」
「いえ、結構です!流石に僕の場合死ぬので」
「危なかったねー」
「天界に旨辛文化はありません」
なおき、苦笑。
ーーー
そして最後に見つけたのは。
「見て!!」
ガラス越し。
びよーん。
信じられないほど伸びる大福。
「すご……」
三人で一つ注文。
「いくよ?」
なおきが左右に引っ張る。
びよーん。
「なっが!?」
エルが反対側を持つ。
びよーーーん。
「まだ伸びる!」
ミニエルも参戦。
「私もー!!」
びよーーーーーーん。
ぺちん。
三人、静止。
もぐ。
もぐ。
もぐ。
「……あまい」
「……おいしい」
「……幸せ」
目が合う。
次の瞬間――
商店街の真ん中で、三人同時に笑い出した。
ーーー
「食べ歩きって、こんなに大変だったっけ?」
「楽しいよね!」
「めっちゃ楽しい!!」
左右から腕にぎゅっと抱きつかれる。
「まだ食べる!!」
「次は甘いものがいい」
「さっき大福食べたよね!?」
「別腹」
「堕天使の胃袋、無限か!?」
夕暮れが近づく商店街。
笑って、騒いで、ちょっと失敗して。
でも――
三人の手は、最初よりもずっと強く繋がれていた。
まだまだ、食べ歩きは終わらない。
ここまで読んでいただき、ありがとうございます!
今回はがっつり日常回、そしてコメディも少し入れておきましたw
エルの“大人ぶり→秒で崩壊”と、ミニエルの安定の暴走っぷり、そしてエルの仕返し…書いててめちゃくちゃ楽しかったです(笑)
こういう何気ない時間こそ、この物語の“芯”なのかもしれません。
もし「いいな」と思っていただけたら、
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次回も20時10分にお待ちしています!




