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ただいま〜三人の帰る場所〜

夕暮れの涙のあと、三人は少しだけ外に出ることにしました。


向かった先は、なおきとレミエルが初めて出会った日の…あの場所


一年という時間の中で、三人の関係は少しずつ変わりました。


そして今夜、なおきはようやく一つの答えを口にします。

顔はぐしゃぐしゃ。

目の周りは泣き過ぎてひりひりしている。


エルは長い金色の髪が少し乱れて、

ミニエルは僕の腕に寄りかかったまま、泣き疲れてうとうとしていた。


静かな部屋に、三人分のすすり泣きの余韻だけが残っている。


……しばらくして。


ぐぅぅぅぅ。


「…………」


「…………」


「…………」


ミニエルのお腹だった。


一瞬の沈黙のあと、

エルが小さく吹き出す。


「ふふ……」


僕も、つられて笑ってしまう。


涙でぐちゃぐちゃの顔のまま、三人で笑う…


なんだかおかしくて、でもすごくあたたかい。


「……なんか、お腹すかない?」


鼻をすすりながら言うと、エルがこくんと頷いた。


「すいた」

ミニエルが、まだ半分眠そうな声で呟く。



「ご飯に行くには……ちょっと遅いかな」


窓の外は、もうすっかり夜の色だった。


少し考えてから、なおきがぽつりと言った。


「パフェ、食べに行かない?」


その瞬間。


ぱちっ。


ミニエルの目が完全に開いた。


「いく!!」


「切り替え早いね!」


「甘いものは別腹なの!」


エルがくすっと笑う。


「じゃあ、ミニエル。ちゃんと起きなさい」


「うん!」


よいしょ、と僕の腕から体を起こすミニエル。

まだ少し目は赤いけれど、表情はいつもの柔らかさに戻り始めていた。


支度をして、三人で外に出る。


夜風が、少しだけ冷たくて心地いい。


そして――


僕は、ある方向へ足を向けた。


「……あれ?」


エルが気づく。


「この道……」


ミニエルもきょろきょろと周りを見る。


「あっ」


見慣れたガラス張りの外観。

少し落ち着いた照明。

やわらかな光が漏れる入口。


「ここ!!」


僕は、少しだけ笑った。


「初めて会った日に行ったカフェ」


あの日。

バイト代が入った昼下がり。

不思議な出会いのあと、二人で入ったあの場所。


扉を開けると、優しいコーヒーの香りが広がる。


「いらっしゃいませ」


同じ空気。

同じ席。

でも――隣にいる存在は、あの日よりずっと近い。


「もうすぐ、一年だね」


席に座りながら、僕は静かに言った。


エルが、少しだけ驚いた顔をする。


「……そうか」


「はやいねぇ」


ミニエルがメニューを覗き込みながら呟く。


「さくらんぼは……ないかぁ」


「季節じゃないからなぁ」


「じゃあ、いちごパフェ!」


「私も同じでいいわ」


運ばれてきたパフェは、

赤いいちごが綺麗に飾られていて、

甘い香りがふわっと広がった。


スプーンを持ったまま、

僕はしばらくそれを見つめていた。


そして、ゆっくりと口を開く。


「……さっきさ」


二人が、同時にこちらを見る。


「お母さんと、お父さんの話」


少しだけ、息を吸う。


「ありがとう」


その一言に、

エルの瞳が静かに揺れた。


「怖くてさぁ」


自分でも驚くくらい、素直な声だった。


「もし、本当に捨てられてたんだって確定したら……って思うと、怖かった」


ミニエルが、そっとスプーンを置く。


「だから、ずっと逃げてた」


「でも――」


エルとミニエルを見る。


「二人が、一緒に泣いてくれて」


胸の奥が、じんわりと熱くなる。


「初めて、(守られてたかもしれない)って思えた」


静かな空気。


でも、重くない。


やわらかい空気。


「あとね」


少しだけ笑う。


「もう一つ、ずっと言えてなかったことがあってさぁ」


「言ってなかったっけ?とも思うんだけど…」


エルが、まっすぐ僕を見る。


ミニエルも、じっと見ている。


(ちゃんと伝えないと)



(順番がバラバラになっちゃったけど)


(それでもいい、言わなきゃ!)


スプーンを置いて、姿勢を正す。


「レミエル」


二人の肩が、ぴくりと動いた。


「今更なんですけど、これからも、ずっと一緒にいたいです」


声が震える。



「遅くなったし、順序もバラバラだけど……」


一度、深く息を吸う。


そして、まっすぐ伝える。


「大好き!愛しています!!」


静寂。


店内の静かな音楽だけが、遠くで流れている。


次の瞬間――


ぽろっ。


ミニエルの目から、また涙がこぼれた。


「……なおき」


エルの声は、かすかに震えていた。


でもその表情は、

これ以上ないくらい優しくて、あたたかくて、そして幸せそうだった。


「こちらこそよ」


エルが、ふわりと微笑む。


「ずっと、一緒にいる」


ミニエルも大きく頷く。


「いっしょ!!」


三人で、いちごパフェをひとくち食べる。


甘い。


でもそれ以上に、胸の奥があたたかい。


初めて出会ったあの日と同じカフェで、

同じように甘いものを食べているのに。


今はもう――


ひとりじゃない。


夜のガラス窓に映る三人の姿は、

あの日より、ずっと家族の気がした



「なおき、私も一言いい?」エルが言う


「ん?」


「そういうことはもっと早く言えよな!」


「そうだぞなおき」ミニエルも茶化した


この3人はこれからもきっと変わらない…







そして、天界――。


白く静かな空間に、淡い光がゆらゆらと揺れていた。


その中央で、一人の天使が静かに目を細める。


「神様、私……ちょっと行ってきます」


柔らかい声だった。

けれど、その奥には確かな意志が宿っている。


玉座に座る神は、しばらく何も言わなかった。


まるで、遠く――

地上の小さな光を見つめているかのように。


やがて、ゆっくりと口を開く。


「……そうですか、ミカエルさん」


静かな声。


だが、その響きはどこか意味深だった…


「よろしくお願いします」


「地上の光は美しいほど脆いですから…」


その言葉に、ミカエルは小さく微笑む。


「はい」


そして、くるりと背を向けた。


純白の羽がふわりと揺れる。


「エル……」


誰にも聞こえないほど小さな声で、そう呟いて。


次の瞬間――

彼女の姿は、光の中に静かに溶けて消えた。


天界には、再び静寂が戻る。


けれど神は、わずかに目を細めていた。



その視線の先にあるのは、

夕焼け色に染まる、小さな世界。


三人が笑っている、あの場所だった…


第一章、ここまで読んでいただき本当にありがとうございます。


この章は、「出会い」と「家族になるまで」の物語でした。


捨てられたと思っていた少年。居場所を失った堕天使


三人が一緒に笑って、一緒に泣いて、ようやく「ただいま」と言える場所ができました。


けれど――物語はここで終わりではありません。


天界は静かに動き始めています。


第二章では、三人の日常に少しだけ“天界”が近づいてきます。


もしよろしければ、これからも三人を見守っていただけると嬉しいです。


二章も明日、20時10分に投稿させていただきます!!


これからもよろしくお願いします。

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