3人のクリスマス 1
今回は三人のクリスマスのお話です。
なおきにとっては「ただの一日」だったはずの日。でもミニエルとエルがいると、その一日が少しずつ特別になっていきます。
少し不格好で、でもとてもあたたかい夜。三人のクリスマスを楽しんでいただけたら嬉しいです。
クリスマス回、三部作の1話目です!
街はすっかり、きらきらしていた。
商店街の入口には大きなツリー。
店先には赤や金の飾り。
夜になると、電飾が星みたいに瞬く。
「なおき!!」
窓に張り付いたミニエルが、勢いよく振り返る。
「綺麗だねー!!」
「クリスマスイルミネーション派手でいいよね」
「ねぇなおき!クリスマスって何の日なの?」
「イエス・キリストの誕生をお祝いする日だね」
「あ、そうか、なるほどイエス君のね!」
(ん?イエス君?!)
「えーと、そうだと思うけど…大事な人と一緒に過ごしたり、プレゼント交換したり、ケーキ食べたりする日かな」
「あと、お利口さんにしていた良い子にはサンタさんがツリーの下にプレゼントを置いてってくれるんだって!」
――沈黙。
ミニエルの瞳が、みるみる輝いた。
「大事な人と過ごす日!?」
「そうそう!」
「プレゼント!?」
「そうだよー!」
「ケーキ!?」
「そこ食いつくねー」
次の瞬間。
ミニエルはエルの手をがしっと掴んだ。
「エル」
「はい?」
「やるよ」
「何を?」
「クリスマス」
静かに、しかし力強く。
「なおきの、はじめてのクリスマス」
エルは、ゆっくりと頷いた。
誕生日の夜。
「ただの一日だった」
あの言葉が胸をよぎる。
「……うん」
「やろう」
「全力で」
その日から、二人の様子がおかしくなった。
やたらとコソコソしている。
なおきが近づくと話をやめる。
部屋の隅に謎の袋が増えていく。
ガサガサ…
「……何してるの?」
「な、何もしてないよ!?」
「いや、掃除!」
「散らかってるけど?」
「うん!掃除!」
ミニエルの声が明らかに不自然だった。
エルも珍しく視線を逸らす。
「機密事項なんだよ!ねっ、ミニエル」
「怖いなぁ」
――そして、クリスマス当日。
「なおき、今日は少しだけ外に出ていてください」
「え?」
「一時間後に、帰ってきてください」
妙に真剣なエルの表情に、なおきは苦笑する。
「……了解」
一時間後。
玄関のドアを開けた瞬間。
「「メリークリスマス!!」」
ぱぁん!と音が弾けた。
紙吹雪。
手作りの飾り。
少し歪だけど、精一杯作られたリース。
そして――
部屋の真ん中に、小さなツリー。
電飾が、きらきらと優しく光っていた。
「……え」
言葉が出ない。
テーブルの上には、少し不格好なケーキ。
クリームがちょっとだけ傾いている。
「これ、ミニエルが塗ったんだよ!」
「七回落としましたが、三回は回収しました」
「回収したの?!」
「四回は……諦めました」
「それは正しい判断だね」なおきが思わず笑う。
その瞬間。
エルが、少しだけ緊張した様子で前に出た。
「なおき」
小さな箱を差し出す。
「クリスマスプレゼント」
「……僕に?」
「うん!」
手作りのしおりだった。
浅葱色の糸で、一目一目、丁寧に編まれている。
「なおきは本をよく読むから」
次に、ミニエルが飛び出す。
「こっちは私!」
差し出されたのは、折り紙で作られた星の束。
「願いが叶う星!!」
「設定が強いな」
「でも本当に願ったから!!」
その言葉に、なおきの手が止まる。
「願った?」
「うん」
「なおきがね、毎日、笑えますようにって」
ミニエルは、にこっと笑う。
ツリーの光だけが、やさしく揺れていた。
「また…」
なおきが、小さく呟く。
「またーー」
「特別な日が増えちゃったな」
「嫌だった?」
とエルが悪い顔で覗き込む!
なおきは首を横に振る。
そして、二人を見て笑った。
「嬉しいに決まってるじゃん」
窓の外では、雪が静かに降り始めていた。
人生で初めての、家族と過ごすクリスマス。
窓の外では、雪が静かに降り始めていた。
部屋の中では、
少し歪なリースが揺れ、手作りのケーキが並び、ツリーの灯りが三人を照らしている。
そしてその夜はーー
なおきにとって、
ただの一日ではなくなった。
今日から3日間、クリスマス回になります!!
3話目に凄いことが起こるので今回も見逃せませんよ!!
なおきの「はじめてのクリスマス」
ミニエルの全力と、エルの静かな優しさ。そしてそれを受け取るなおき。
この三人の日常は、派手な事件は少ないですが、こういう小さな幸せを少しずつ重ねていく物語…
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