うちに来る?
いつも読んでくださってありがとうございます!
今回は、エルの「はじめて」がたくさん詰まった回です。
人間とちゃんと話すのも、家に誘われるのも、カフェに行こうと悩むのも、全部はじめて。
天使……ではなく「堕天使」の彼女が、少しずつ人間らしい感情を見せていきます。
なおきの何気ない優しさが、エルにとってどれだけ大きなものなのか。
そんな距離が一歩近づく瞬間を、楽しんでいただけたら嬉しいです。
ちょい待って!
振り返ると、エルは少し困ったような、寂しそうな顔で立っていた。スカートの裾をもぞもぞと握っている。
「それだけ? 私が見えるんだよ? もっと……怖かったりしないの? 呪いだって言ったのに」
声が、わずかに震えている。
初めて人間とまともに話せたのだ。
せっかく見つけた“会話できる相手”を、あっさり失うのが怖いらしい。
「んー、そういうことか」
少し考えて、口が勝手に動いた。
「じゃあ、行くところなかったらうち来る? 一人暮らしで広くはないけど」
……何を言ってるんだ、僕は。
でも、なぜかそうしなきゃいけない気がした。
エルの目が大きく見開かれる。
「……へ? 家に……来る?」
信じられない、という顔だ。
「い、いいの……? 人間の家なんて……入ったことないし……」
戸惑いと期待が入り混じった声。
頭の輪が、かすかにきらりと光る。
「……行く。行きたい!」
思わず笑ってしまう。
「うん、じゃおいで。……ってか、僕これからカフェ行くところだったんだけど。カフェ行くか、うち帰るか、どっちがいい?」
「カフェ」にぴくりと反応する。
一瞬で目が輝いた。
けれど、ぶんぶんと首を振る。
「ううん、おうちがいい! カフェってお店なんでしょ? 私が入っても、誰にも見えないし……」
少しだけ、しょんぼり。
「それに……なおきの家、見てみたい。どんなところか、知りたい」
その言い方が、妙に胸に残った。
「食べたくても食べられなかったってことか」
なんとなく、放っておけない。
「僕が注文すればいいじゃん。一緒に食べられるよ?」
もう一度、提案してみる。
エルの視線がショーウィンドウに吸い寄せられる。
色とりどりのケーキやパフェを前に、指先がそわそわと揺れる。
「た、食べたい……けど……」
ちら、とこちらを見る。
「いいの?」
その目は、期待を隠せていない。
「……本当に、いいの? 一緒に食べてくれるの?」
「天使様のお願いならね。もちろん大歓迎ですよ。好きなの言って」
一瞬むっとした顔。
そして、すぐにふっと笑う。
天使じゃなくて、堕天使ね
読んでいただきありがとうございました!
「天使じゃなくて、堕天使ね」
ここ、個人的にとても好きなセリフです。
エルのプライドと、少し拗ねた可愛さが出せたかなと思っています。
そして次回はいよいよ——
エル、初めてのカフェ体験(?)
なおきは本当に一緒に食べられるのか。
堕天使はパフェを味わえるのか。
少し甘くて、少し不思議な日常はまだまだ続きます。
よろしければぜひ応援よろしくお願いします。
それではまた次話で!




