ちょい待てい!!
見えるはずのないものが見えたら、あなたはどうしますか?」
ある日突然、頭の上に輪っかを浮かべた女の子が見えるようになったら…
それが《堕天使》を名乗る、ちょっと素直じゃない美少女だったら。
これは、どこにでもいる(たぶん)普通の高校生・なおきと、
自称・堕天使エルの、少し不思議で、少しだけ特別な出会いの物語です。
ゆるく、時々真面目に。
二人の会話を楽しんでいただけたら嬉しいです。
《可愛い》という言葉に、女の子の白い頬がほんのりと赤く染まる。
しかし、すぐにぷいっとそっぽを向いて、腕を組んだ。
照れているのを隠そうとしているのが見て取れる
「…べ、別に、私は天使じゃないし‥ついこの間堕天使になったので…」
ぶっきらぼうにそう言い放つが、耳まで赤いのは隠せていない。
ちらりと上目遣いで男子の様子を見ている。
どう言う反応をするのか…
その瞳の奥が揺れていた。
「それより、本当にあなた、変だよ。」
「どうして私が見えるの? 誰かに何かされたとか、そういうのじゃないの?」
「それ言うならキミも変だよ…だって頭の上に輪っかあるし…」
となおきは言った」
なおきに指摘され、ハッとしたように自分の頭のてっぺんに手をやる。
そこには、当たり前のように浮かぶ輪がある。
それを確認して、ようやく納得したように、でもどこかバツが悪そうに息を吐いた。
「あ……。そっか。うん、まあ、それはそう」
そっけない返事だが、先ほどまでの警戒心は少し和らいだように見える。
再びなおきに向き直ると、今度は真剣な眼差しで問いかけた。
「でも、だからって普通は見えないのよ!」
「私が特別なのか、それともあなたが特別なのか…。」
「ねえ、何か心当たりないの? 」
「誰かに呪いとかかけられたりとか」
「なに呪いって?!僕呪いかけられたの?!まあ、みえないはずのキミが見えるならすごいね」
なおきのあっけらかんとした反応に、少女は目をぱちくりとさせる。
心底驚いているようだ。
「え、いいの…? 呪いかもしれないんだよ? 見えちゃいけないものが見えるようになったのかもしれないし…。」
彼女は眉をひそめ、真面目な顔で考え込んでいる。
なおきが全く動じていないことに、むしろ混乱しているようだった。
彼女にとって、それはありえないことなのだ。
「…変なの!普通はもっと怖がったり、驚いたりすると思うよ!だって頭に輪っかついてるんだよ!」
「あなたって、本当に何なの?」
「まあ、今んとこ人だね僕は多分」
きょとんとした顔で、まばたきを数回繰り返す。
なおきの言葉の意味を懸命に理解しようとしているようだが、うまくいかないらしい。
やがて、小さなため息をついた。
「人、なんだ…」
「うん、まあ……見ればわかるけど。」
女の子は一歩、なおきに近づく。
警戒心というよりは、単に興味が勝っているようだ。
じろじろと、まるで珍しい生き物でも観察するようになおきを見上げる。
「それで? 人間のなおきは、堕天使の私と出会ってどうする?!」
「なんで僕がなおきって知ってるの?」
「キミの名前は?!」
《なんで》と問われ、女の子は当然のように答える。
「さっき、あなたの頭の中、ちょっとだけ見ちゃったから」
悪びれる様子もなく言いのけると、そういえばという顔で自分のことを指さした。
「私はエル。レミエル!みんなエルって呼ぶ。」
そう言うと、エルは少しだけ誇らしげに胸を張った。
その姿は、いかにも自分の名前が気に入っているといった風情だ。
「そっかエル、まあ、堕天使を見たの初めてだったから嬉しかったよ」
「またね!」
「帰ります」
帰ろうとするなおきの背中に、慌てたような声がかかる
さっき弾けた光が、まだ消えずに、胸の奥でかすかに瞬いていた。
「ちょい待って!」
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
エルは堕天使を名乗っていますが、たぶん誰よりも天使らしい子かもしれません。
照れたり、強がったり、でもちょっと寂しそうだったり。
そして、動じないなおき。
彼が「普通」なのか、それとも一番変なのか——
それはこれから少しずつ明らかになっていくかもしれません。
二人の距離がどう変わっていくのか、
見守っていただけたら嬉しいです。




