交差
誰にでも秘密はある。
言えなかったこと。
隠していたこと。
話せば壊れてしまうかもしれないこと。
けれどーー
時々、それを伝えなければ前へ進めない日もある。
今回は、ようやく二つの秘密が交わるお話です。
みんなで笑って、片づけをして。
「じゃあ、また学校で!」
「なおき、今日はありがとな!」
「次は神谷んちねー!」
「え、マジで来る流れ?」
そんなことを言いながら、私たちはなおき君の家を出た。
駅までの道。
いつも通り、ワイワイ凪ちゃんと神谷が前で話をしている
私は、ポケットの中にあるスマホを指で確かめた。
「あ、ごめん! 私、なおき君のちにスマホ忘れたかも!」
凪ちゃんが振り返る。
「スマホ?!」
「じゃ、私もついて行くよ!」
「大丈夫!走ってすぐだから!先に帰ってて?!」
私はそう言って、来た道を走り出した。
本当は、忘れ物なんてしていない。
でも…
確かめたいことがあった。
胸の奥で、さっきから、いや、前からずっと引っかかっていた。
たこ焼きが、浮いたこともだけど、足を怪我した時の優しい風とか、いろいろ…
クリスマスツリーの写真を見た時の、なおき君の優しい目…
そして、あの家に流れていた、普通じゃないのに、どこか懐かしい優しい空気も…
息を切らして、なおき君の家の前まで戻る。
ピンポン、とチャイムを鳴らす。
少しして、扉が開いた。
「あれ? あめちゃん。忘れ物?」
なおき君が、いつも通りの顔で言う。
でも私は、いつも通りには笑えなかった。
「……なおき君」
「うん?」
「なおき君ってさ…」
言ってしまえば、もう戻れない気がした。
それでも。
私は、聞いた。
「天使なの? それとも、堕天使?」
なおき君の表情が、固まった。
ほんの一瞬。
「……え?」
「ごめん。変なこと聞いてるのは分かってる」
私は続けた。
「でも、今日ずっと変だった。たこ焼き、少し浮いたよね?」
「……」
「クリスマスツリーの写真を見た時も、顔色変わった」
なおき君は黙ったまま、視線をそらした。
その反応だけで、私は少しだけ確信してしまう。
「あと……この家、誰かいるよね?」
「っ」
なおき君の肩が、わずかに揺れた。
「見えないけど、いる気がする」
「……あめちゃん」
「驚かないで聞いて?」私は、小さく息を吸った。
「私の家にもいるの」
なおき君が目を見開く。
「……え?」
「サンタさん」
「サンタさん?」
「うん。本物のサンタさん。私の家にいるの!」
言葉にすると、なんだか変だった。
でも、嘘じゃない。
「ずっと一緒にいるの。私と、ママと」
なおき君は、何も言えないみたいだった。
だけどしっかりふざけたりせず聞いてくれている。
私はそのまま続ける。
「普通の人じゃないの」
「……」
「でも、すごく優しくて、すごく不器用で、たまに寂しそうで」
そこまで言った時。
部屋の奥で、空気が揺れた気がした。
そしてなおき君が、はっと振り返る。
見えない。
私には、何も見えない。
けれど。
そこに誰かがいる。
そんな気配だけが、確かにあった。
「……今、何かいた?」
私が聞くと、なおき君は困ったように笑った。
「えっと……」
その時。
なおき君の隣の空間が、きらりと淡く光った。
何も見えないはずなのに。
光だけが、少しだけ見えた。
そして、なおき君が小さく呟く。
「…ミニエル?」
その名前を聞いた瞬間。
私の胸が、なぜかざわついた。
ミニエル。
知らない名前なのに。
なおき君は、ゆっくり私を見た。
「僕も、ちゃんと話そうか…」
「うん」
「でもその前に、一つ聞いていい?」
「なに?」
なおき君の声が、少し震えていた。
「そのサンタさんって……本当に、サンタって名前?」
私は首を横に振った。
「違う…」
「え?」
「昔、誰かがそう呼び間違えたんだって」
なおき君の顔が、さらに変わる。
そして、なおきの両腕に何か重りがずっしり乗ったように見えた…
そして。
部屋の空気が、さっきよりも明らかに重くなった。
その瞬間。
私は初めて気づいた。
見えない誰かが、息を呑んだような気がした。
「サンタさんの名前、サタンっていうの」
私は、そう言った。
「堕天使なんだって」
一瞬、世界が止まった…
(ドサッ!!)
すごい音がした
「ミニエル?!」
「エル!!」
「しっかりして!!」
何かが崩れたような音と共になおきくんの叫ぶ声が玄関に響いた!!
ここまで読んでくださってありがとうございます!
第三章をここまで読んでくださった方なら分かると思いますが、今回は作者的にもかなり、いや1番大事な回です。
なおきの物語。
あめの物語。
これまで別々に進んでいた二つの世界が、ようやく繋がりました。
実はかなり前から張っていた伏線でもあります。
「いつ気づくんだろう」
「いつ出会うんだろう」
そんなことを考えながら書いていました。
そして、やっと辿り着いたのが今回です。
……ただし。
繋がったからといって、平和になるわけではありません。
むしろここからです。
サタンという名前。
天界で起きた出来事。
それぞれが抱えていた秘密。
物語はここから一気に動き始めます。
第三章も終盤。
次回からは、天界レベルで日常が揺らいでいきます天界
ぜひ最後まで見届けていただけたら嬉しいです!
気に入っていただけたら、ブックマーク、評価もお願いいたします!!




